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『星を拾う日』
海辺の町の午後、空は銀色の雲に覆われていた。
波の音は穏やかで、まるで世界が呼吸を整えているようだった。
凪は浜辺を歩いていた。手の中には、古びたガラス瓶。
その中には、色あせた手紙が1枚入っていた。差出人の名前は「未来のあなたへ」。
――未来?
半信半疑で手紙を広げると、震える文字でこう書かれていた。
「君はきっと、星を拾いに行くでしょう。」
意味はわからなかった。ただ、なぜか胸の奥が熱くなる。
凪は瓶をポケットにしまい、ふと海面を見つめた。
その瞬間、光が揺らめいた。
まるで夜空の星が一粒、海の底に落ちているみたいだった。
気づけば、靴を脱ぎ、波打ち際を走っていた。
冷たい海水が膝を濡らす。
そして――手のひらに光る何かが触れた
それは確かに「星」だった。
透明で、温かくて、心臓の鼓動ように脈打っていた。
星を胸に抱くと、頭の中で声が響いた
「ありがとう。もう一度、光を見つけてくれて。」
涙がこぼれた理由はわからない。
でも、その夜、凪は空を見上げた。
曇り空の向こうで、確かにひとつの星が輝いていた。
それは、自分が広い上げた星だった。
未来からの手紙のかわりに。
おしまい🌙