テラーノベル
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【半年から一年】
と聞いて、音をたてられず身動きできない全身の血の気が引いた。
でも
【好都合じゃない】
と続けて聞こえると、煮えたぎるような血がからだ中を駆け巡る。
そして、頭がスーッと冷えて、とても冷静になれたと思う。
――他の二人もすぐには返事をしないのは、さすがに言い過ぎだと感じたのだろうか
そう一瞬でも思った私は甘かったようだ。
「まあ、余命宣告されたらショックだろうね」
面白がるような声の敬。
――敬の字がもったいないわ
絶対に敬えない男の母もまた、正しい子とは皮肉だと思うような言葉を吐く。
「ショックで判断力が鈍ったところで、私たちに有利な遺言書を書かせるわ」
「有利どころか、きちんと全額いただこうぜ」
――どうしてアンタが?
私は布団の中でギュッと手を握りしめた。
――父が死んで、私の人生が重くなったのは事実
父は自分の残り時間を悟り、不動産を含む投資財産を現金化した。
自宅だけを残して。
残されたのは、使い道に困るほどの巨億だったけれど、父は私に言った。
“菊が両手で抱えるわけじゃない、預金の数字が大きいだけだ。放っておいてもいい。邪魔にはならないよ”
――でもね、お父さん。お父さんが一生懸命働いて貯めたお金が狙われているよ
「まあ、菊ちゃんも困っているだろうから。相談に乗るっていう方向で…」
「遺言書を書かせる」
叔父の言葉は、叔母によって回収されるのだ。
――困らないわよ。お父さんの言った通り、邪魔にはなってない
ただ、使うつもりもなかった…まったく。
「判断力のあるうちに書かなきゃ、遺言の効力がなくね?」
敬がスマホでAIからもらった答えに、あぁ…という納得の空気を作る叔父と叔母が滑稽に思えた。
――絶対に1円も渡さないんだから
コメント
6件
なんて強欲な奴ら💢1円たりとも渡しちゃダメ!!

正子に敬…笑っちゃう名前だね😤 そんなヤツ等にはビタ一文やらねぇ〜よ😡

こんな時に菊ちゃんの心配じゃなくお金の心配って、ほんとに品がない‼️こんな人たちに1円だって渡したらダメだよ。