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検査入院だよね?菊ちゃん倦怠感もあって、背中も痛いのに大丈夫なの? でも早く動かないと、アレらが早朝からまた来ちゃうだろうし…😖 ここからの脱出、上手くいきますように🙏
この病室の主は彼女たちの姪、いとこである私。
その私の健康や命の話をせずに、お金と遺言状の話をすることがどれだけ非常識なことかくらい、まだ学生の私にだってわかる。
そして、彼女たちの強欲さも…
――ここの空気が悪くなる気がするわ
コツッ……
小さな靴音と空気の揺れる気配がして
「菊、寝ている……わね」
確めるような叔母の声が足元から向けられた。
「さっき点滴を抜かれた時に起きたと思ったんだけどな」
「そうよね、敬。私もそう思ったけど。また来るわ」
どうやら点滴が終わって、その処置をしてもらったタイミングで、私の意識は徐々に浮上したようだった。
誰もいなくなったことを静かに確認してから、点滴の針のあとに貼られたテープに触れる。
「……よいしょっ、と」
余命、悲しみ、怒り、嫌悪……たくさんの感情が同時に押し寄せてくるのを振り払うように起き上がった私には
――絶対に1円も渡さないんだから
という使命感があった。
「お父さんだって、嫌でしょ……?お父さんと私の人生の結果だけを簡単に渡すのは嫌」
そう言いながら、時間を確認すると19時過ぎ。
私は迷わず着替えながら、ここからの脱出を考える。