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お風呂、温かくて気持ちよかったなぁ。
お風呂から出たら、咲月さんが如月さんの部屋まで案内してくれた。内心逃げたかったけど、お風呂に入れてもらったんだし挨拶くらいはしなきゃだめだよね。
「お風呂、ありがとう……。でも、勘違いしないで。感謝なんかしないから。」
「お前は馬鹿だな。感謝しないくせに最初に礼を言っているじゃないか。」
「何よ!やっぱり言うんじゃなかった。」
「お前は感情に素直なやつだな。なんで人間オークションになんか参加した?」
「別に。ただ…1週間食事と寝床がもらえるならって思っただけ。」
簡単に誘いに乗って、自分でも馬鹿だと思ってる。でも……そのおかげで温かいお風呂に入れて、洋服だって与えてもらえた。
「食事と寝床って、お前玩具って言うより犬だな。親に売られたのか…?」
「親なんて…ずっといないよ。私が10歳のときに病気で死んじゃったもん。」
私の言葉に如月さんは言葉を詰まらせた。この人も、私のことを可哀そうだと思うのかな……
「お前、今14だろ。4年も1人で辛くなかったのか?」
「辛いって何が…?私にとっては当たり前のことで、普通のことだもん。家なんてない。お金もない。親もいない。それが普通。」
「……そうか…すまなかったな。」
「それって同情…?そんなのいらないよ。」
「食事の時間だ。ついてこい。」
「私に命令しないでよ!」
如月さんが謝ってくれた時、どんな顔をしていたのかはよく見えなかったけど、声に優しさと温かさを感じた。同情なんて要らないってずっと思ってたけど、なんだろう……この胸にある温もりは。