※寝ると記憶がなくなってしまうきりやんの話
「んん…」
窓から差し込む光に顔を顰める。
くるりと寝返りを打つと、植物で綺麗に彩られた窓際が見えた。
なんだ、ここは…
起き上がって周りを見渡す。
木で出来た床と壁に、火のついていない暖炉。
ベッド以外何も無い綺麗に整頓された部屋。
どれも見覚えがなかった。
困惑しながら部屋をキョロキョロと見ていると、部屋の外から足音が聞こえた。
ガチャ
「!」
部屋のドアがゆっくりと開く。
ドアから顔を覗かせた人物をみて息を呑んだ。
「なんだ、もう起きてんのか。」
当たり前のように部屋に入ってきたのは若い男だった。
同い年ぐらいの、黒髪の男。
目を見開いて驚く俺を無視して、男はベッドに腰掛ける。
「昨日はよく眠れたか?」
「えっ…?」
あ、れ…?
ここはどこなのか、
お前は誰なのか、
なんで俺はここにいるのか。
聞きたいことは山ほどあった。
でもあるひとつの疑問が俺の頭を掠める。
「お、れは、だれなんだ…?」
俺の言葉に、目の前の男は目を細めた。
「…俺の名前はシャークん。お前の名前はきりやん。…ここは、俺たちが暮らすコテージだ。」
部屋を出て、廊下を歩く男の後をついていく。
そして、淡々と耳を疑うような言葉をこぼしていった。
「よく聞け、きりやん。お前は毎晩寝るたびに記憶がリセットされる。お前の記憶が更新されることはない。寝たらその日起きたことを全て忘れる。」
「え…?」
寝たら記憶がなくなる…?
目の前の男…シャークんはこちらを振り返ることなく淡々と言葉を続けた。
「今日もちゃんと忘れちまってるみたいだな。」
廊下を歩いていると、開けたリビングに出た。
整頓された、ほこり1つ落ちてない綺麗なリビング。
部屋の中央に置かれたソファに座るように促され、大人しく腰をかける。
「朝飯食う?」
「あ、うん…」
カチャカチャと、キッチンから食器同士が当たる音がする。
その音を聞きながら部屋の中を見ていると、ふと、窓の外に見えるアネモネが目に止まった。
花壇に咲いている、色とりどりの綺麗なアネモネ。
「気になんの?」
「!」
ボーッとそれを見ていると、シャークんに声をかけられた。
黙って頷くと、シャークんが言葉を続ける。
「たしか、2ヶ月前のお前と埋めたやつだ。」
「2ヶ月前の俺…?」
俺の言葉にシャークんが頷いた。
「お前が植木鉢をひっくり返して割ったから、花壇に埋めなおした。」
「へぇ…」
肉を焼くような音が聞こえる。
美味しそうな匂いがリビングまで届いた。
「ねぇ…」
「なに。」
「俺って、ほんとに記憶なくなんの?」
「あぁ。だって、昨日のこととか覚えてないだろ。」
「…」
シャークんに言われ思い返すが、今日の朝から前の記憶がひとつもない。
断片的な記憶すら何も無い。
まるで、そこだけすっぽり抜け落ちてしまったみたいに。
「俺が記憶無くす前はなにしてたの?」
「…消防士。」
「え?」
「俺もお前も、消防士だった。」
消防士…
シャークんの言葉を頭の中で反復するが、しっくりこない。
「信じられないか?認定証あるぞ。」
シャークんが棚の引き出しから取り出したのは1枚の紙。
テーブルに置かれた名前を覗き込めば、ヅラっと並んだ文字の中にたしかに俺の名前があった。
ほんとに、消防士だったんだ…
俺が信じられない目で見ていると、シャークんが俺の隣に腰掛けた。
「…去年の秋くらい。消火活動にお前が事故に巻き込まれた。」
「え…?」
「奇跡的に五体満足で救出されたけど…」
代わりに、脳に障害を負ってしまった。
それが、この記憶障害。
そう説明してくれたシャークんの目は冷たかった。
感情が抜け落ちてしまった人形みたいな無表情で、俺の方を見る。
「他に聞きたいことあるか?」
「いや…なにも。」
「分かった。」
シャークんはそう言って、再びキッチンに戻る。
シャークんが朝食を準備してくれる音を聞きながら、認定証を手にとる。
きりやん…消防士…
名前も、職業も、自分のもののはずなのに何故かしっくりこなかった。
「シャークん、」
「なに。」
「シャークんは、消防士の仕事は大丈夫なの?」
「…あぁ。」
コトッ、とテーブルの上に何か置かれた。
見ると、美味しそうなスクランブルエッグとトースト、ヨーグルトが2人分あった。
作ってくれただろうシャークんがソファに座る。
「…医者に、お前の世話を頼まれた。お前のその記憶障害も一時的なものらしいから、回復するまで俺が介護しろって。」
「…そうなんだ。ごめん、俺のために…」
「…別にいい。働くより、ここでのんびり暮らしてた方が楽だし。」
シャークんはそういうとトーストを齧る。
「きりやんも食べて。」
促され、スクランブルエッグをフォークで掬って口に入れる。
出来たてのそれは温かくて美味しかった。
「これ食べたら部屋戻っていいぞ。」
「あ、うん…」
静かで、鳥の声以外何も聞こえない森の中。
互いに無言だったけど、それが苦じゃなくて、逆に居心地良かった。
あっという間にご飯を平らげ、シャークんに言われた通りにさっきまで寝ていた部屋に戻る。
部屋の中は何も無い。
ほこり1つ落ちてない、まるで新居のような部屋。
ベッドに腰掛け、壁を見つめる。
自分は消防士で、事故に巻き込まれて記憶障害になった。
頭の中で文字に起こしてみるが、やはりしっくりこない。
シャークんの説明を聞いている時も、自分じゃない誰かの物語を聞いているようだった。
「…?」
ボーッと壁を見ていると、窓の外から音がするのに気づいた。
気になって、窓際に足を運ぶ。
レースカーテンを開けて見れば、シャークんが大きなカゴを抱えて運んでいるのが見えた。
カゴに入っているのは…洗濯物か。
そうか、このコテージには俺とシャークん以外居ないのだから、家事は全部シャークんがやっているのだ。
カゴに山盛りになった2人分の洗濯物。
これをひとりで干すのは酷だろう。
手伝いに行こう。
そう決めて、部屋の外へ出た。
「シャークん!」
外へ出て、洗濯物を干しているシャークんに声をかける。
「なに、なんか思い出した?」
「いやべつに思い出してはないけど…」
シャークんの言葉に苦笑いを浮かべながら、カゴに入っているタオルを手に取る。
「俺も手伝うよ。」
「!」
俺の言葉にシャークんは目を見開いて驚いた。
固まって俺の方をずっと見ている。
「な、なに…?」
不思議に思って首を傾げると、シャークんはハッとしたように再び動き出した。
「いや…前も、きりやんに同じこと言われたから。」
「え、そうなの?」
「あぁ。たしか、1ヶ月前くらいのお前。」
「へぇ…」
シャークんの言葉を聞きながら、タオルを物干し竿にかける。
「俺っていつも違う行動するの?」
「日によって変わるが…基本的にはいつも家事を手伝ってくれる。昨日のお前は洗い物してた。」
「ふーん…」
「…でも、洗濯物は久しぶりだな。午前は大体引きこもってるから。」
タオルを竿に広げていると、湿った風が頬を撫でた。
「……なんか、変な感じする。」
ぽつりと呟くと、隣で洗濯バサミを握っていたシャークんが一瞬だけ動きを止めた。
「どこが。」
「うまく言えないんだけど…ここでこうやって洗濯物干してるの、初めてな気もするし…でもなんとなく、懐かしい気もする。」
言葉にするとますます分からなくなって、眉を寄せる。
そんな俺を見て、シャークんは小さく息を吐いた。
「……そういう日もある。」
それだけ言うと、そっけなく背中を向ける。
けれど、洗濯物を手に取るその指先だけが、ほんの少し震えていた。
気づけば、日は沈んでいた。
1日というものはこんなに短かったのだと実感する。
一緒に晩御飯つくって、食べて、洗い物して…
後は寝るだけとなった23時。
寝室のドアの前で、シャークんと向き合う。
「おやすみ。」
シャークんは静かに声を出す。
「…ねぇ。」
リビングへ帰ろうとするシャークんの手を掴むと、不機嫌な顔をしたシャークんがこちらを見た。
「……なに。」
「…ほんとに、寝たら忘れちまうの?」
「あぁ。」
「こんなに楽しかったのに…?」
俺の言葉に、シャークんは黙って頷く。
実感が湧かない。
今日つくった思い出は、全部記憶にあるのに。
シャークんのことも、自分のことも、明日になったら忘れてしまうだなんて。
「…最初は、みんなそう言う。」
シャークんはそれだけ言うと、寝室のドアを開けた。
そして、俺の体を寝室へ押し込む。
「おやすみ、きりやん。」
「……おやすみ。」
部屋の電気が消された。
「ねぇ、シャークん。」
シャークんは振り返らず、足だけ止める。
「俺、たぶん忘れないよ。明日は絶対、俺からおはようっていうから。」
「…」
シャークんは何も言わない。
代わりに、ドアをゆっくりと閉めた。
真っ暗になった部屋の中。
手探りでベッドに向かう。
瞼を閉じれば、今日の思い出が蘇った。
大丈夫、今はまだ記憶が残ってる。
明日は先に起きて、朝ごはんをつくってあげよう。
そう決めて、意識を手放した。
shk視点
いつもと同じ快晴。
いつもと同じ部屋。
「昨日はよく眠れたか?」
ベッドに腰掛けて、寝ている男に問う。
「ここは、どこなんだ…」
「お前はだれだ…」
「おれは、だれなんだ…?」
…いつもと同じセリフ。
毎日毎日、同じことの繰り返し。
「……俺の名前はシャークん。お前の名前はきりやん。…ここは、俺たちが暮らすコテージだ。」
きりやんを起こして、説明して、飯をつくって…
まるで、役割を与えられた機械みたいだ。
終わりが見えない作業、代わり映えしない日常。
何か起こっても、明日にはゼロになってしまう虚しさ。
頭はとっくにおかしくなっていた。
記憶がリセットされた回数は300回を優に超えている。
コイツを殺して、俺も死ねば、楽になれるのだろうか。
そんなことを、何度も考えた。
でも、そんなの誰も望んでいない。
俺は、自分の役割を果たすことしか許されない。
…きりやんは、記憶をなくしてもきりやんだった。
馬鹿みたいにお人好し。
今の状況に絶望して、部屋に引きこもっていればいいものを、毎度の如く、部屋を出て俺の家事を手伝いにくる。
俺と話して、楽しそうに笑って。
いつも、「次は忘れない」といって眠りにつく。
そのせいで、思い出はどんどん増えてしまう。
明日になれば、ぜんぶ忘れられてしまうのに。
今日も、きりやんを寝室に押し込んで電気を消した。
ドアを背に、ズルズルと床に座り込む。
繰り返される毎日、何も変わらない日々。
本当にこれが、あいつが望んだ日々なのだろうか。
そんなこと、今となっては分からない。
なぁ、きりやん。
いつになったら俺を許してくれるかな。
kr視点
毎晩、不思議な夢を見る。
黒髪の男と、飯を食いに行く夢。
俺は自分の意思では動けなくて、目の前に映し出される映像を、まるで映画のようにボーッと見るだけ。
黒髪の男が俺の前の席に座って、喋りながら頼むものを決める。
俺が頼んだ料理の量を見て、信じられないと言いたげな目で俺を見る黒髪。
酒が入っているせいか、頬が赤く染まっている黒髪。
会話は聞こえないが、面白そうな話をしているのは伝わった。
俺は、こいつのことを大事に思ってるんだろう。
この男を見ていると、心が安らぐ。
目の前に映る黒髪の男。
見たことがない男だった。
知らない男。
しばらくボーッとその映像を見ていると、ようやく、見たことがある男が出てきた。
「遅れてごめん、」と謝りながら、俺と黒髪のいる席へ向かってくる男。
俺が何度もみた男だった。
目の前の黒髪が、男の名前を呼ぶ。
いつもは会話の内容は聞こえないのに。
今回は、なぜかはっきりと聞こえた。
あぁ、そうか。
こいつはそういう名前なんだ。
そう理解したと共に、真っ白になる画面。
記憶がリセットされる合図。
せめて、名前だけ、名前だけは覚えておきたい。
耳に入った名前を何度も心の中で呼ぶ。
その瞬間。
意識が現実に引き戻される音がした。
shk視点
今日は、珍しく豪雨だった。
天気予報によれば、春には珍しい激しい嵐らしい。
部屋へ向かう足取りは重い。
いつもは快晴なのに、今日目覚めてしまったきりやんは運がないな、と心の中で同情しながら寝室のドアを開けた。
「昨日はよく眠れたか?」
いつもと同じセリフで、中に入る。
ベッドで寝ている男を横目に、ベッドへ腰掛けた。
「俺の名前はシャークん。お前の名前はきりやん。…ここは、俺たちが暮らすコテージだ。」
いつも通り、きりやんは俺を見て目を見開いている。
いつも通り説明して、飯をつくって、家事をして…
そんないつも通りの朝がはじまる…はずだった。
「シャークん…?何言ってんの。」
「お前、きんときでしょ。」
俺の中の何かが、音を立てて弾けた。
kn視点
「は…?」
口から出る声が震える。
「な、なにいってんの…」
今、なんて…?
「お、俺はシャークんだよ…?」
俺の言葉をきりやんは静かに否定する。
「きんときでしょ、お前の名前。忘れちまった?」
息が止まった。
体が固まる。
きりやんがゆっくりとベッドから起き上がった。
笑顔のきりやんが、俺には凄く不気味に思えた。
「ねぇきんとき、そういえばシャークんはどこにいんの?」
そこで初めて気づいた。
今日、きりやんは一度も、いつも通りのセリフを言わなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、」
雷が雲を走る豪雨の中、
行くあてもないのに森の中を彷徨う。
シャークんはどこだ、と俺に問うきりやんを突き飛ばして、コテージから逃げてきた。
息を切らしながら、泥だらけの盛りの中を走る。
振り返ったが、アイツは追ってきていない。
突き飛ばした拍子に失神したのだろうか。
どっちにしろ好都合だった。
「うわっ…!」
泥に足をとられ、そのまま地面に倒れ込む。
泥が顔や髪についてしまったが、起き上がる気力もなく、そのまま仰向けになった。
冷たい雨が体を突き刺す。
冷たい雨粒が、混乱した脳を冷静にしていった。
きりやんに本当の名前を呼ばれたのは、この生活が始まってからはじめてだった。
…でもあれはきっと、よくある脳のバグだろう。
混乱して出てきてしまったが、明日にはまたいつもの通りの日々がはじまる。
…少し、疲れたな。
瞼を閉じると、悪夢のようなあの日の映像が、脳内に流れた。
今から1年半ほど前。
きりやんとシャークん、そしてその友人の俺は消防士だった。
同じ事務所に配属されたのをきっかけに、よく一緒に飲みに行くほど仲良くなった。
でも、幸せな日々こそ長くは続かない。
ある日、都心の郊外で大規模火災が起こった。
もちろん、俺らも出動して消火活動に移った。
きりやんとシャークんは、とあるマンションの消火活動を行っていたらしい。
2人がマンション内に取り残された人の救助を行っているとき、シャークんが建物の崩壊に巻き込まれた。
炎がすぐそこまで迫っている。
熱で体が悲鳴をあげる中。
きりやんはシャークんを助けようと足掻いたが、シャークんの下半身は瓦礫の下敷きになってしまっていた。
そうしている間にも火災は広がっていて、助けられる人数も限られている。
要救助者の救助か、シャークんの救助か…
きりやんは、考えうる中で最悪な選択を天秤にかけることになってしまった。
結果、きりやんは要救助者を選んだ。
…シャークんは、助からなかった。
消防士としては賢明な選択だ。きりやんの選択が最善だったと思う。
きりやんは決して間違えなかった。
間違えなかったのだ。
なのに…
友人の命と、消防士としての使命を天秤にかけたきりやんは、壊れてしまった。
飯も食わなくなり、笑顔を見せることもなくなった。
寝れなくなって、夜中に何度も起きては、シャークんのことを思い出して泣いていた。
そして、いつも通りきりやんのお見舞いに行ったとき。
「お前はだれだ…?」
きりやんは、俺を見てそう言った。
彼の様子を見た医師に、記憶障害を診断された。
俺のせいだと思った。
俺が、2人を救えなかった。
俺が、2人と救助活動に行っていたら、
俺が、きりやんをもっと支えてやれば、
俺が、、おれが、、
俺がもっといい行動をしていれば、きりやんは壊れなかったのかもしれない。
そんな後悔が頭の中をうずめいた。
きりやんは毎日記憶をなくす。
その日あったことを全て。
俺が支えなきゃと思った。
残酷な選択を与えられたきりやんに、夢を見せなきゃと思った。
だから、シャークんを演じた。
きりやんが特に仲が良かった、親友のシャークんのことを。
きりやんがレンズ越しに見てきた『シャークん』は偽物だ。
でもそうすれば、きりやんは幸せになると思った。
きりやんが、シャークんと送るはずだった日々。
それを与えてやることが、俺が唯一きりやんにできる償いだった。
きりやんが全てを思い出す日まで。
何も救えなかった俺を許してくれる日まで。
シャークんを演じるのが、俺の使命だった。
瞼を開ければ、眩しい光が目に入った。
…朝だ。朝がきた。
戻らなくては。
きっと、記憶を無くしたきりやんが待っている。
きりやんに、俺のことを思い出させてはダメだ。
俺はシャークんだ。
何度も心の中で言い聞かせる。
立ち上がると、泥だらけの髪が頬に張り付いた。
はやく、風呂に入らないと…
どんなに辛くても、
壊れてしまっても、
俺は、きりやんと暮らす。
重い足を引きずってコテージに向かう。
きっと、シャークんもこれを望んでいる。
そう信じて、足を動かす。
もう、3人で飲みに行くことはできないけど…
いつか、きりやんが話すシャークんの話が聞きたいな。
kr視点
「んん…」
窓から差し込む光に顔を顰める。
くるりと寝返りを打つと、植物で綺麗に彩られた窓際が見えた。
なんだ、ここは…
起き上がって周りを見渡す。
木で出来た床と壁に、火のついていない暖炉。
ベッド以外何も無い綺麗に整頓された部屋。
どれも見覚えがなかった。
困惑しながら部屋をキョロキョロと見ていると、部屋の外から足音が聞こえた。
ガチャ
「!」
部屋のドアがゆっくりと開く。
ドアから顔を覗かせた人物をみて息を呑んだ。
「なんだ、もう起きてんのか。」
当たり前のように部屋に入ってきたのは若い男だった。
同い年ぐらいの、黒髪の男。
目を見開いて驚く俺を無視して、男はベッドに腰掛ける。
「昨日はよく眠れたか?」
「えっ…?」
あ、れ…?
ここはどこなのか、
お前は誰なのか、
なんで俺はここにいるのか。
聞きたいことは山ほどあった。
でもあるひとつの疑問が俺の頭を掠める。
「お、れは、だれなんだ…?」
俺の言葉に、目の前の男は目を細めた。
「…俺の名前はシャークん。お前の名前はきりやん。…ここは、俺たちが暮らすコテージだ。」
(あとがき)
没になったのでここで供養させていただきます。
コメント
4件
何度も驚愕させられました……凄い……😧😧😧オチまで綺麗で最後まで見入ってしまいました😭
記憶障害系大好きです…😭 大好きなんですが、やっぱり見てて悲しいですね…、、 サポートする側も、明日は忘れないという言葉に少し期待してしまっても結局忘れてるというのがずっとなんですよね…辛すぎる、、