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⚠hbsrです
「ひば、…ん、」
ソファーに座って手を広げる。強請られた本人は突然の事にきょとんとした顔をした。
「え、ぎゅー…?」
「そう。……だからはやく、」
普段はほとんど雲雀の方から抱きついてくるから此方から求められるのに慣れていないのか、暫く固まったままだ。
焦れったくて急かしてみると、ぎこちない動きで雲雀の腕が俺を包んだ。
顔を見上げると、桔梗色の髪の下から見える頬がほんのり赤く染まっている。
「めずらしーね、せらおからぎゅー強請るとか」
「…そういう気分になって」
「俺の温もりが欲しくなっちゃったんだ?」
「語弊あるってその言い方」
「でも間違ってはないやろー?」
うるさいな、そっちだってさっきまで照れてた癖に、
なんて出かけた言葉はそっと飲み込んだ。
目を細めて俺を見る雲雀の顔が余りにも優しくて、髪を撫でる手つきがまるでふわふわした小動物を触る時のように丁寧で。
だから、何も言えなくなってしまった。
「…ん、」
前髪の上辺りに柔らかい感触。
俺を撫でていた雲雀がふいに顔を寄せて髪に口づけをした。
ほんの少しだけ頭に重みを感じる。
髪が漉かれているのを感じながらされるがままに目を閉じた。
唇が離れた後、頭に添えられていた手が輪郭をなぞるようにゆっくりと降りてきた。
頬の辺りを包み込むように触れられ、雲雀の顔が正面に来る。
「口、してもいい?」
眉を下げ、少し首を傾けてくるところなんてもう本当にお預けを喰らった犬みたいだ。
そんな顔されたら断る選択肢なんてなくなってしまう。
「…いいよ」
答えて、また目を閉じる。
数秒の間の後、そっと唇が触れられた。
ちゅ、ちゅと何度かのリップ音が耳を掠める。
そのうち、生暖かいものが唇に触れた。
それは閉じられた俺の唇を少しずつ抉じ開け、咥内に入ってくる。
そろそろ終わるかと思っていた俺は、まだ続くであろうその分の酸素なんて吸ってなどいない。
どうにか鼻から呼吸をしようと試みるも、雲雀の顔がすぐ近くにあるせいで思うようにできない。
内心焦っている間にも、舌はぬるぬると歯列をなぞり、俺の舌も絡めとっていく。
さらにまずいことに、頬に触れていたはずの雲雀の手がいつの間にか俺の耳を塞いでいた。
くちゅ、ぴちゃ、と口から鳴る水音がダイレクトに脳に伝わる。
俺は目を閉じていたことを後悔した。
「ん、ふぅ……っ、ぁ、♡」
まだ終わらない。とっくに酸欠になりかけている俺の脳は快感や水音で蕩けてしまいそうだ。
あれから目を開けようにも開けられず、抵抗しようとしても骨抜きにされてしまったかのように力は入らない。
口の隙間から入ってくる僅かな酸素だけを頼りになんとか此処まで耐えてきた。
けど、もう限界だ。
抵抗のために雲雀の胸に当てていた腕も、力が抜けてだらんと体の横に落ちる。
顔だけを上げた状態で、雲雀に体を委ねる。
「……っ、ふ、?♡ぅ…」
口の端からだらだらと顎を伝って涎が落ちていく。
舌をきゅ、と絡められる度にびく、♡と腰が跳ねるのが朧げな意識の中でも分かる。
雲雀の片手はその腰に逃がさないと言わんばかりに添えられている。
腰が跳ねるたびに添えている力が強くなっているような。
もう何もわからない。
「あぁーーーーー!!!待って、セラお大丈夫か!?」
殆ど飛びかけていた意識が聞き慣れた大声によって戻される。
気づけば唇は外れていて、俺はソファにへたり込むようにして座っていた。
「ぇ…?」
見上げると、焦った顔で俺の顔を覗き込んでいる雲雀が。
「ごめんなぁ…!!まじでやりすぎちゃった…!」
土下座せんばかりの勢いで両手を握ってくる。
段々と脳がはっきりしてきた。
「…深いのはいいって言ってない」
「うぅ、だってぇ…」
しゅん、と項垂れている後ろに、垂れ下がった尻尾が見えるような。
でも、悪いのは雲雀だし。
「…だって、甘えてきたのそっちだし、セラおの顔めっちゃ気持ちよさそうだっt…うわ痛い痛い痛い”!!!ほっぺつねらんで!?」
「ほんとに怒ってるんだけど」
「ですよね!?!?あ”~~、何でもするから許してぇ…」
その後、雲雀は少しお高めのケーキを買うことになったとか。
髪へのキス…心から愛おしいと思っている、相手への親愛