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このお話は、クリスマスの少し前のこと。
「クリスマスプレゼント?そうだなーやっぱりアクセサリーとかコスメが無難じゃない?」
「ピンキリだろうけどなんかリップとかさ、ハンドクリームとかさ。ありきたりかぁ」
「時期的にクリスマスコフレでまとめてもいいかもね。あ、香水もいーよねぇ。ミスディオールとか僕好き」
「ディオールはのあさんとゆあんくんが昔一緒に買ってたなー…」
「あとはルームウェアまわりとか?」
「たしかにな、ブランケットとかもいーかもよ」
「電子機器周りもアリかもね、イヤフォンとかさ。ヘッドフォンとか」
イケメン二人を前にして心は正座で話を聞いてる。と、いうか、なんでこんなぽんぽん出てくるの??
いっている意味がまったくわかんない。
アクセサリーとコスメだけはなんとか聞き取れた。
「ちなみにうりは、えとさんに何あげんの?」
「指輪」
「「指輪!?」」
まさかそんな答えが出てくると思わず、なおきりさんと一緒に叫んでしまった。
「フッ軽な誰かさんがな、酔っ払って帰ってくる度に一蹴してこなきゃならんの!!」
「牽制かぁ…」
珍しく拳を握り声をあげるうりに、わぁ、大変だね、なんてなおきりさんが半笑いしてる。
えとさんなぁ…俺が見てても心配になる。男女ともに友達が多いから呼ばれれば駆けつけてしまう。
酔うと結構アレなんだよね、お迎えコールをうりの隣で何度か聞いたことがあった。
「指輪なんて無理だわ」
「シヴァさんとるなさん、贈る側ともらう側二人に合うものを選べばいいんだよ」
「うーん…」
そうだなぁ、指輪は敷居が高すぎる。
コスメは何が好きかわからんし、ヘッドフォン…だめだなおきりさんのアーカイブ聴いちゃう。俺に電話こなくなる。候補から外す。
ピアスはあけてないし、ブレスレットは手首が細いからするって外れちゃいそうだなー。
熟考。
るなさんが失くさなくて、肌身は出さずもてる。
だとすると消去法で
「ネックレス?しかねぇな」
「「いんじゃね?」」
「あっさりだな!そんな簡単に決めていーの?」
正味五分も考えてねぇぞ?
一応るなさんの性格をみた上で論理的に考えた結果だけれども。
「だってシヴァさんそーゆーのテキトーに考えないでしょ?」
「るなの性格を考慮してネックレスに至ったわけだろ?」
「うん、まぁ、うん」
イケメンからずい、とアップで話されたじろぐ。俺のことをよくお分かりで。
「はい決まり、いくよー」
「ちょ、店は!?」
「ネックレスと付き合って初めてのクリスマス。妥当な相場があるってもんよ」
「マジかよすげえな」
決断力が男ななおきりさんと、候補の引き出しが多すぎるうりに腕を掴まれ、ルミネを突っ切った。
「さてどこにすっかな」
「僕なんとなーくうりさんが行こうとする店わかっちゃった」
「おーあててみ?」
「〇〇か△△?」
「そうだな、るなは⬜︎⬜︎はちょっと違うかな」
「××は二人には似合わないなぁ」
「同意」
「〇△⬜︎は?」
「チラ見だ」
俺は全くわかりません。
この知識量おかしすぎるだろ。
「値段はどんくらいなの」
「vaxeeのマウスくらいを予想しろ」
アクセサリーをバクシーのマウスで換算するやつは日本中探してもここにしかいない。
と、いうかアクセサリーと同等でゲーミングマウスを語るやつなんざいないっつの。なんなのかなこの二人。
引きづられ入った一店舗目。
俺らと同じように彼女にプレゼントを選びに来た男子諸君を目撃する。
おお同志たちよ、と心の中で勝手に祈った。
ケースの中を覗き込む。うわぁ、キラキラしてて目がやられそう。
女の子が好きな世界が目の前に広がっていた。
ネックレスといってもいろいろある。
真ん中のやつがおっきかったり、ちっちゃかったり。ハートとか丸とか、なんの形なんこれってのもある。
るなさんなら、何がいいのか。
何つけてもとてつもなくかわいらしいが、一番マッチするものはなんだろうと想像した。
しばらく没頭していると、頭上から何か見てみますか?とお店の方から声をかけられる。
「ええと、どれと言われましても」
「彼女さんへのプレゼントですか?」
「はい、まあ」
いつのまにか傍にいたはずのイケメン二人が消えている。どこいったのかとあたりを見回せば後方でニヤニヤとにこにこしていた。
「な、一緒に考えてくんないの!?」
「僕たちはここまでー」
「そっから先はシヴァさん頑張れよ」
まぁ、そうか。お店だけ絞ってもらってもありがたい。俺一人ルミネなんてきたら迷子で終わる。
ショーケースに視線を戻したら、ふと、ひとつのネックレスに目がとまった。
なんか色が違う。なんだろう、これ。
店員さんが俺の視線に気づいた。
「こちら見てみます?」
「あのーこれ、何が違うんですか?」
「こちらはこのチェーンの部分がピンクゴールドでして…」
何が違うのかと思えばチェーンの種類なのか。ピンクゴールドだって、名前からしてかわいらしい。るなさん似合うだろうな。
「ちなみにパールがついてるものもありますし、粒の大きさがもう少し大きいタイプもありますよ?」
さささー、と似たデザインが俺の前に並べられる。すげえ、俺何も言ってないのに。流石はプロ。
どれがいいかなぁ、どれもよく似合うよな。
るなさん華奢だから、パールがついてなくて大きさも小さい方が身体に馴染みそう…。
決めるの早いか?でも、これみたら他を考えられなくなる。
どうしようかと考えあぐねていると、サイドからにゅっとイケメンの頭が二つ出てきた。
「シンプルでかわいいね」
「シヴァさんこれにするの?」
「うーん、これが一番るなさんがつけてるとこ想像できた」
こんな決め方でいいんかなぁ、るなさんの好みに合わなかったらどうしよう。
「るなのつけてる姿が想像できるってことは、それが似合うってことなんだろ」
「シヴァさん穴が開くほどるなさんみてきたでしょ?」
「言い方ぁ」
そりゃあさ、好きな子は目で追っちゃうじゃん。彼氏彼女になる前は盗み見てそのかわいらしい笑顔に癒されてた。
るなさんが元気だと勝手に嬉しくなった。
それが今は彼氏としてるなさんを見ることができている。俺しか知らないるなさんの顔を少なからず見たのだ。
かわいいだけじゃない、甘い空気の中で強く引き込まれそうになる別のるなさんがいるのを、つい先日目の当たりにした。
…いかん、余計なことまで思い出す。
ふぅ、と一息吐いて決意する。
俺はもうこの小さな光の粒がついたモノ以外考えられなくなった。
「これにします」
店員さんに笑顔でお礼を言われた。
(問題はいつ渡すか、だな)
リュックから小箱を取り出しポケットに忍ばせた。
そう、問題は渡すタイミングだ。
二人っきりになるタイミング、できればちょっと時間が欲しい。
(コンビニ行くって抜け出そうかな、でも)
さっき触れた時を思い出す。るなさん何だか熱かった。
熱があるんじゃないかな。
「困ったな」
多分本人も体調が悪いのわかってる。
無理に元気そうな声を出してるのもわかった。
ゆっくり寝かせてあげたいけれど
「大丈夫ですから、しか言わないよなぁ…るなさんのことだから」
「るながどうしたって?」
「うわぁ!!もふくん…さんっ!!」
「一緒に活動してて初めて敬称つけて呼ばれたんだけど?」
出会い頭のもふくんに、何故かさん付けで呼んでしまった。
理由はわかる、じゃぱぱさんと同じくらいるなさんを妹のように可愛がっていたからだ。
もふくんに対して
付き合ったとカミングアウトした時詰められた。自分なりに誠意を込めて答えたけれど…後ろめたさは、完全に消え去っていない。
「るなとはどうなの」
(いきなりかよ…!)
目の奥が光ってるんだが。
眼鏡の向こう側と目を合わせたくない気持ちになった。
「清く正しいお付き合いしてます…」
「なるほど?」
今んとこ清く正しい(はず)彼女を大事に想っているのは確か。
うろたえてる俺に、ふ、ともふくんは小さく笑う。
「嘘、ごめん意地悪した」
「空気変わったからビビったよ」
「るなを見てればわかるよ。幸せそうだからさ」
さっきキッチンでさぁ、頑張って誰かさんのためのご飯作ってたからね。
ニヒルに口角を上げ、もふくんは続ける。
「嬉しそうにしてた」
「たかが俺の誕生日なのに」
「だからだろ」
その卑屈な考え方やめなよ、とこんどはむっとした表情を俺に向ける。
「そっと覗いてみてごらん。頑張ってるから」
すれ違いざま、俺の肩を叩き去って行った。
そこまで言われたら覗かねばならない。
そっとリビングの隙間から、キッチンを覗いた。
「…」
一生懸命にスマホを見て、なにやら調味料を計ってる。こんどはまな板の材料をタッパにのせて次の材料をまな板の上なのせた。
「ん、んー?…あ!」
何かを考え、わかったのか嬉しいさが顔いっぱいに広がってる。
遠目からだが、豆腐と…赤いチューブや鶏がらスープのもと?それに…片栗粉。なるほど。
俺の好きなやつだ。
かわいいなんてもんじゃない。
愛おしいってこういうことか。
大好きな人が自分のために何かをしてくれてる。
「っはー…」
目線を外し廊下の壁にもたれかかった。
しんどい。
かわいくて、大事にしたくて
そんなことに一生懸命で
でも反対にーーー
雪崩れそうな気持ちを止めるのに、毎回しんどくなる。
好きすぎるから、たぶん求められたら止まる自信なんかない。
前回はよく止めることができたと思う。
でも次はわからない。
暴走しそうな自分が嫌だ。
絶対離れたくない
絶対離したくない
るなさんが離れたいと言っても首を縦に振れない。
わかっていたけど、見て見ぬふりをしてた。
もう完全に沼っている自分に。