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放課後。
いつもの帰り道。
でも今日は、まるで違う道みたいに見える。
イヤホンから流れる音。
Mrs. GREEN APPLEの曲。
あの日から、何度も聴いているはずなのに今日は一番、しっくりくる。
(ここまで来たんだ)
公園。
ライブハウス。
面接。
そして今。
一つひとつは小さいけど、ちゃんと繋がっている。
そのとき。
ふと、あのライブハウスの前を思い出す。
(また会えるよ”って言ってたな)
周りを見渡す。
当然、誰もいない。
少しだけ寂しくて、でもーー
(まあ、いっか)
前とは違う感覚。
“いなくても進める”って思えた。
家に帰ると、すぐに机に向かう。
進路の紙のコピーを取り出す。
「音楽に関わる仕事」
その文字を、指でなぞる。
そして、その下に小さく書き足す。
「ライブハウススタッフ(アルバイト)」
少しだけ具体的になった未来。
完璧じゃない。
でも、確実に“自分の選択”。
その夜。
初出勤の日程を確認して、必要なことをメモする。
服装、時間、仕事内容。
知らないことばかり。
でも。
(楽しみ)
その気持ちが、ちゃんとある。
ベッドに入る前。
イヤホンを耳に入れる。
音が流れた、そのとき。
一瞬だけーー
聞いたことのないフレーズが混ざった気がした。
”‘ちゃんと進んでるよ”
美咲は、ふっと目を開ける。
静かな部屋。
スマホの画面には、普通の再生画面。
「…..気のせいか」
でも。
少しだけ笑った。
窓の外には、夜空。
あの日と同じようで、でも違う夜。
美咲は目を閉じる。
もう、“誰かに背中を押されるだけじゃない。
自分でも、少しずつ押せるようになってきた。
そして数日後。
ライブハウスでの、初めての仕事の日。
ドアの前に立つ。
あの日と同じ場所。
でもーー
「….行こう」
今度は、迷わなかった。
扉を開ける。
音のある世界へ。
自分で選んだ、“次の一歩”へ。
その先で待っているものを、まだ知らない。
でもきっと。
また迷って、また選んで、また進む。
その繰り返し。
そしていつか。
「ここまで来てよかった」
そう思える日が来る。
ーーそのとき、きっとまたどこかで。
音が、鳴る。
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