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こんにちはまつりです
前書き残せとのことなので、今まで通り書きます!
タヨキミも、残り、これ入れて5話くらいで終わります
準備がなかば間に合ってないのとタヨキミの完結イラストも描けてないので、新作は結構先になります。ごめんね、夏休み明けの期末が終わったくらいから始めようかな
新作の題名「はい、どうぞ、召しやがれ!」なんですけど、カギカッコまで題名でめっちゃ長くて、、変わる可能性もあるけど、略名募集してます(今のままだと「はどめ」とか「どめし」とかになりますダサい)
タヨキミ追ってくれてる方は、新作も追ってくれるのかな?
ストーリーはなんか細かくは決まってないんですが、うちが影響を受けやすいというのもあり、いろいろな既存作品にちょっとずつ似るかもです。似てるとか関係なく自分の好きな話を書くので、気にしちゃう人は読まないでね
戦い×学園を目指したつもりではあったのだが、どうも戦闘が全面に出すぎて。学園もの向いてないみたい。。もっと青春いれます
結構エグくて下品な話になりそうです、タヨキミを超えるのは無理かな。ありがたいことに、きみいすとさんいっぱいいるので。
タヨキミ、絶対に走りきります。新作もどうぞご贔屓に。
話題それた。
今回の話、滅茶苦茶に長いんですが、個人的に好きです。
行ってらっしゃい!!
「隣の家に越してきた、宮内です」
ミーンミーンって、セミのこえがきこえた。
あつくてそとにでたくなかったけど、おかあさんがでろっていったから、でる。
そしたらおかあさんがしらないひとと話しだしたから、オレはおかあさんのせなかにかくれた。
かしこそうなおばさんがこちらをふりむいて、おじぎをする。
「初めまして、佐藤です。ほら、ソーユも挨拶しなさい」
おくからでてきたのは、みずいろのかみのけのおとこのこ。
「……ソーユくんっていうんだね。よろしく、オレはツキミ」
「……よろしくお願いします、ツキミさん」
いいこそう。なかよくできそう。
これが、オレとソーユのであいだった。
「今日から新しいお友達になる、宮内ツキミくんです!」
かわいいほいくえんのせんせいが、オレをみんなにしょうかいした。
「ツキミくん、よろしくね」
「いっしょにあそぼうよ」
みんなはオレによってきて、オレにはなしかけた。うれしかった。
でも、ソーユだけは、オレにはなしかけなかった。
オレがソーユにはなしかけると、ソーユはいつもはやくちでいう。
「ぼくに近寄るな、馬鹿野郎」って。
「ひとのこと、ばかっていっちゃ、だめやで。ばかって言ったら、かばと結婚するんやで」
みんながそうだそうだっていうと、ソーユはちょっとわるいかおでわらう。
「人間は動物と結婚できないよ。あ、ツキミさんは馬鹿だから、馬か鹿とだったら結婚できるかもね~」
このときはいやなやつだとしかおもわなかったけど、すうねんごにかんじをならって、ばかをうまとしかってかくってしったときは、すごくびっくりした。ソーユはようちえんじなのに、かんじをしってた。
それからソーユはどんどんいやなやつにそだっていって、オレはだんだんとソーユがきらいになった。
オレの親は、オレを愛してくれない。
オレが五年生に上がるとき。両親は、オレに向かって言った。
「ツキミ。俺たちは、常にお前の考えを優先したい。だからすべて、お前の好きにすればいい。勉強も、進学先も、俺たちからはなにも言わん。遊びたいときに遊び、学びたいときに学べ」
この頃、友達はみんな受験勉強をとっくに始めていて、オレは元々受験する気はなかった。
勉強も嫌だったので、強制されないというのは、かなり良い。嫌いなうえに苦手なんだ、誰がやるのか。
オレは遊んだ、とことん遊んだ。内容は理解できず、テストも絶望的で、宿題も提出しなかった。可愛い子をひたすら家に連れ込んで、中学生の不良と喧嘩をして。
そして何をしても、当然、両親はなにも言わなかった。親ガチャ大当たりだ、そう思った。
ソーユが大嫌いだ。
頭が良くて、顔がかっこよくて。
何でも完璧にこなすし、何をやってもさまになる。
自信家でいつでも注目の的、グループの中心。女の子にもモテる。
そのうえ真面目で、家が近いはずなのに、ソーユが放課後、外に出ているのを見たことがない。きっと、ずっと机に向かって勉強してるんだ。
気に食わなかった。
ソーユが努力しているというのは、痛いほどわかる。それでもアイツの、簡単に努力できるという才能が、どうしても羨ましかった。
完全なる嫉妬だ。こんなことを気にして嫌ってしまう、自分が情けない。
それでも、認めてしまったら──ソーユはすごいと言ったら、オレという存在が、どこかへ消えて無くなりそうで。
オレには、オレを褒めてくれる人がいない。
オレだってすごいんだ。三股バレても、モテてるし。
ソーユなんて、死ねばいいのに。ソーユが活躍する度、悪いと自覚しながらも、何回もそう思った。
愛がほしいだけだったんだ。
だって、お袋も親父も、オレのことずっと放置してさ。
人生で一回だけ、百点をとったテストを見せても、なにも言ってくれない。
自由に、オレの勝手に?冗談じゃない。
構わないことが教育か。面倒くさいだけだ、どうせ。
そうだ。だから、ソーユが嫌いなんだ。
ソーユが活躍してること自体はどうでもいい。
でもアイツは、両親にも、友達にも、みんなから愛されてる。あんなにウザいのに、あんなにぶりっ子なのに。
女を取っ替え引っ替えしてたのも、寂しかったからなんだろうな。一人からの愛じゃ物足りなくて、ソーユみたいに、たくさんの人から愛されてみたかったんだろうな。
オレたちはそのまま、六年生になった。
ソーユとは、クラスが別だった。
嬉しい。でも同時に、自分が知らないところでソーユが活躍することが、なんか怖かった。
クラスが別れてから、オレはソーユと、完全に話さなくなった。元々、全シカトされてたけど。
小学校生活最後の一年はあっという間で、冬にもなると、みんな受験勉強で忙しくて、遊ぶ相手がいなくなった。
学校に行っても、ソーユはいない。妙な不安感がある。
ただ、アイツは今も、あの小さな窓がついたいつもの部屋で、机に向かって。
家には、自分のために出費して、全力で支えてくれる、家族がいて。
それのなにが悲しくて、なにが悔しくて、なにが寂しいのか、オレにはよくわからなかった。
けど、なんか悲しくて、悔しくて、寂しい。
オレは、ソーユに会いたいの?ソーユが眼中にいなきゃ、悲しくて悔しくて寂しいの?
オレはソーユが嫌い。これは小さいときからずっとだし、絶対だ。
なにもわからなくなった。なにも、考えたくなかった。
その日の夜。ふと窓の外を見たオレに、衝撃がはしった。
ソーユだ。そこに、ソーユがいる。
こんな時刻に、あいつが?あり得ない、特に今なんて、受験勉強で忙しいはずなのに。
動かずには、いられなかった。
「ソーユ。何、やってんの?」
「ツキミさん…………?」
久しぶりに見たソーユの顔は、ひどくやつれていた。
その顔に、嫌悪感がした。ソーユが普段みんなに見せてない表情を、オレだけが見てしまったような気がして、口から血が出そうだった。
ソーユはその顔を変えないまま、あっさりと言う。
「家出。両親がウザくて」
それを聞いたら、喉から、自然に声が出た。
「なんで?」
ソーユは何か言おうとしたが、オレは構わず続ける。
「両親、愛してくれてるんやろ?勉強も運動も努力もできるんやろ?そんな人間が、どうして家出なんか…………ッ」
本人に言うつもりはなかった。それでもどうしてもムカついてしまって、言ってしまった。
案の定、ソーユは今にも泣きそうな顔で、不機嫌そうに叫んだ。
「…………ツキミさんに、なにがわかるんだよ……!」
わからないよ、お前の気持ちなんて、わかりたくもないよ。
なにが悲しいの、なにが苦しいの?
泣きたいのはこっちだよ、叫びたいのはこっちだよ。
その時、オレの中のなにかが、かきたてられた。
深夜二時。アキトがきてその場がおさまるまで、オレは、ソーユを殴り続けた。
ツキミさん、痛いよ、やめてよ…………そう泣き叫んでるのも聞こえないかのように、ずっと、ずっと。
ただ、いつもすましているソーユの、弱い顔が見えたような気がして。
そんなソーユが可哀想で可哀想で、思わず笑ってしまった。オレは変態なのかもしれない。
死ね、死ね、死ね…………
オレの視界の中で、何もできず、誰からも愛されず、無様に死ね。
隣の家に、同い年の少年が越してきた。
母親の後ろに隠れて、優しそうなアホ面をして、じーっとこちらを見ている。
母親はというと、息子に似ている。優しそうで、何も考えていなさそう。
もっとも、母が息子に似ているのではなく、息子が母に似ているのだろう。
この親子とぼくの親子の間には恐らく、鳩と烏ほどの知能の差がある。齢五にして三桁×三桁の暗算ができるのは、きっとぼくだけだ。
そう思っていると、その少年が、ぼくに近づいてきた。
「……ソーユくんっていうんだね。よろしく、オレはツキミ」
にっこり笑う彼に、ぼくは顔をしかめた。すると母さんが睨んできたので、仕方がなく笑い返す。
「……よろしくお願いします、ツキミさん」
初対面の人は、さん付けで呼びなさい……父の教えだ。
くん付けだなんて、子供だな…………ぼくはまた、心の中で見下した。
ツキミさんは幼稚園で、ちやほやされていた。
ぼくは集団行動が得意じゃない。こんな馬鹿どもと一緒にいると、こっちまで馬鹿になりそうで、意図的に避けている。
といっても、これからの未来を生きていくうえで、団結力やコミュニケーション能力はどうしても必要だ。
今は無理だとしても、小学校にあがれば、多少は賢い奴がいるに違いない。せめて連立方程式や一次関数…………このレベルは簡単なのだから、五人はいてほしい。
これを両親に話すと、きっぱり「無理だ」と言われた。
「お前は、賢すぎる…………さすがの父さんも、連立方程式を解けるようになったのは小6だ」
「なんで?父さんは、日本一の大学を卒業してるじゃない」
「母さんも、な…………父さんと母さんは、頭の良い子供をつくりたかったんだ。ソーユを賢く教育して、日本一にしてやりたい。けれどこの調子じゃあ、世界一までいってしまうかもな」
へぇ。そんなこと言うけど、どうせセックスしたかっただけでしょう。
「今のぼくの頭脳じゃ、日本一になんてなれやしないよ。本当にそう思ってるなら、ぼくを塾に通わせて。悪いけどぼくは、父さんの理想のために産まれてきた訳じゃないんだ」
幼少期、あそこまで尖っていたことを、今では後悔している。
期待したぼくが馬鹿だった。周りは字も書けないような奴ばっかりで、数学というものさえ理解していない。繰り上がりだ繰り下がりだ、わざわざ筆算におこす意味がわからない。紙の無駄だ。
前までのぼくなら、先生の言うことになんて耳も貸さず、もっとためになる事ついて考えていただろう。だが、今のぼくは違う。
小学校では、学期ごとに、成績なるものがつく。先生のような人間に評価されるだなんて不服だけど、仕方がない。これが小学生になるということなんだ。
最高評価をとっておけば、この先の人生が少し良くなるかも知れない。悪くなることはないだろう。
学業面……テストの点数は申し分ない。けれど授業態度や積極性、友人関係、健康にも気を付けなければ、最高評価を得ることはできない。
未来のぼくのためだ。頑張ろう。
ツキミさんが嫌いだ。
なんで嫌いかはわからない。学力、体力、人間関係、出席日数、授業態度、顔面、身長、性格……どこを取っても、ぼくのほうが上だ。
いや、性格……性格なのかもしれない。
ツキミさんは能天気だ。太陽のように明るくて、みんなを照らせる。
それが、羨ましいのかな。
小学生になって、ちょっと愛想よくしてみたら、友達はみるみる増えた。
でもその友達は、ぼくのどこが好きなんだろうか。勉強を教えてあげられるところ?家が金持ちだから、奢ってあげられるところ?
ぼくの賢さは、一体、誰のためなんだろう。
将来のぼくのため?賢い中、高、大を出て、賢い社会人になって。一体、何になる?
幸せになるためには、どうすればいい。家庭を築く?お金を稼ぐ?趣味に没頭する?
わからない。けれど誰にも相談したくない、自分で見つけたい。
ツキミさんは、今も幸せそうだ。いいな、いいな。
五年生になった。ぼくたちの太陽が、沈んだ。
明るくて純粋だったツキミさんが、グレた。女の子を取っ替え引っ替えして、夜な夜な遊びに行って、勉強することをやめた。
ぼくはずっと勉強していた。受験は楽勝だろうけど、両親からの期待が辛くて、勉強することで、自分を安心させようとした。
恋する暇もない。ぼくの頭脳は絶対だけど……落ちたらどうしよう、どうしようって。
羨ましかった。期待されず、縛られず、自由なツキミさんが。
いいな、いいな。ぼくも遊びたい、恋したい。
なんでぼくはこんなに悩んでるのに、あいつは幸せなの?
そこまで考えて、気がついた。
ぼくが不幸で、ツキミさんが幸せなんじゃない。
ツキミさんが幸せだから、ぼくは不幸なんだ。
そうだ、そうに違いない。
つまり、ツキミさんを不幸にすれば、ぼくは幸せに…………
ツキミさんを不幸にするために、努力した。
こんな子供に育てた、父さんと母さんが悪いんだ。無理に期待してくる、父さんと母さんのせいなんだ。
ツキミさんは、何でも食べれる。食べ物に毒でも混ぜれば、嘔吐でも失神でも、死亡でもしてくれるかもしれない。
殺してやる。ぼくは幸せになりたい。
社会的地位だったら、ぼくのほうが上なんだ。あんな不良品が死んで、誰が悲しむ。
でも……その必要は、なかった。
理科の授業で、ツキミさんは、塩酸を飲み込んだ。
突然、試験管を喉にひっくり返して。
「…………、ごぶっ」
みんなが状況を飲み込めないまま、彼の口からは赤い血が吹き出した。
「きゃあああああああ!!」
「みなさん、宮内さんから離れなさい!」
女子が叫んで、先生が怒鳴って。ぼくは先生に駆け寄って、先生のポケットからスマホを出す。
「ちょ……ソーユ!」
友達の声が聞こえる。それでもぼくはお構いなしに、緊急連絡の画面を開いた。
119。ツキミさんは能力もあるので、押しさえすればきっと、無事で助かる。
ぼく、なんてこと、考えて…………
殺そうだなんて。大馬鹿だ。
今ここでぼくがツキミさんを救えば、ツキミさんは、ぼくに………
純粋に人助けもできない自分に、ものすごい嫌気が差した。
「救急です。佐藤ソーユ、──小学校です。090の………………はい。生徒が塩酸を飲み込みました」
電話を切って、ツキミさんのほうを見る。
ツキミさんは辛そうな顔で、こちらを見た。
いかにも、不幸そうだ。この不幸を、ぼくの電話で、救った…………
後悔はないけど、特別な優越感もなかった。スッキリしないけど、スッキリした。
六年生になった。塩酸の事件は以外とみんなすぐに忘れて、ぼくは受験のために学校を休んだ。
ツキミさんは学校で、何をしているんだろう。クラスが離れたので、わからない。
ただ学校を休んでしまったら、ツキミさんのことなんて考える暇もなく、両親がウザくなった。
毎日毎日、日本一だ。お前らのような頭の良いだけの落ちこぼれ人間の子供が、日本一になんてなってたまるか。
うるさい、死ね。ぼくはお前たちの駒じゃない。
深夜、ぼくは家を出た。勉強がいやになったとかじゃなくて、両親がとことんウザくて。反抗してやろうとか、思った。
寒かったけど、明かりがあたたかい。夜が、ぼくの味方をしてくれてる……そんな気がした。
「ソーユ。何、やってんの?」
突然、ツキミさんがきた。ぼくが家出だと話すと、彼は、切羽詰まった顔で言った。
「両親、愛してくれてるんやろ?勉強も運動も努力もできるんやろ?」って。
久しぶりに、怒りが込み上げてきた。お腹がきゅっと痛くなって、頭に血がのぼって、つい叫んでしまう。
「…………ツキミさんに、なにがわかるんだよ……!」
叫んだら叫んだで、泣きたくなってしまう。
するとツキミさんは、ぼくを殴った。ずっと殴った。
痛かった。とても痛かった。
ちょっと前までひょろっひょろで、キラキラ輝いていたのに………いつのまに、人なんか殴るようになったんだ。
ぼくは泣き叫んだ。痛い、苦しい、やめてって、何回も大声で言った。
唇が切れて、脚を地面の石で怪我して、お腹はいたくて、さんざんだ。
でも……ちょっと、ちょっとだけ…………嬉しいような。
あぁ、お前、ここまで落ちぶれたんだな。もしぼくが死んだら殺人罪、死ななくても暴行罪で少年院行きなんだな。
ぼくに、お前の、人生がかかってるんだなぁ…………
でも、いなくなってもらっちゃ、困るよ。
ぼくの目の前で、もっと、底無しに堕落していけ。そしたらぼくは、幸せに…………。
「ふっ…………あ、」
ふいに、ソーユがフラついた。それを見たツキミが、叫ぶ。
「おいっ…………ソーユ……!!」
怒りとも、心配ともとれる。一見複雑そうで、ただ単純な叫びだった。
(ソーユ……オレは、お前に…………、)
あの日……ソーユが、オレを、救ってくれた日。塩酸を飲んだオレを見て、すぐに救急車を呼んでくれた、あの日。
いつもは全然話してくれないのに、ああいう時だけ、ソーユはいつもかっこいいんだ。
お前の最期を見て笑うためにタヨキミに入ったけど、お前が死んでしまうのは、どうも怖い。
まただ。また、何もわからない。
ただ…………ここで死なせちゃ、いけない気がする。
(ぼく、もう…………ツキミさん……、)
ダメだ。これ以上動けば、死んでしまう。
でも……ツキミさんに殴られたときのほうが、だいぶ痛かったような。
ツキミさんより先に死ぬだなんて、嫌だ。絶対に嫌だ。
「おい、ソーユ…………!お前、動けるか……?」
「う…………う、ん……」
「ソーユが死んでもうたら、きっと、オレも死ぬ」
ソーユは驚いて、ツキミのほうを向く。するとツキミはどや顔で、親指を立てた。
「そう、時間の問題や…………シノだけにな!あっはっは!!」
「えっ……………………は、はぁ!?」
たいして面白くもない、ましてやギャグとして成立していないギャグに、ソーユは呆れた。
「この期に及んで、そんなつまらないこと…………」
そんなソーユにお構い無く、ツキミは続ける。
「黙らっしゃい、続きがあるねん!でな…………実は、オレらが助かるのも、時間の問題や」
「え?」
どういう意味なのか。首をかしげていると、背後から、いきなり大きな音が鳴った。
ゴンっ、ゴンっ、ガンっ…………固いものと固いものがぶつかり合うような、どこかで聞き覚えがある音だ。
二人が振り返ると、ドアがへこんでいた。シノは何があったのかと、不思議そうな顔をする。
数秒後、ぎぃいいいいっと音をたてて、ドアは至って普通に空いた。
「…………みなさん、ご無事ですか?」
ひょこっと現れたヒトネの後ろから、拳を赤くしたトオンが顔を出す。
「…………しくじった。無駄に体力を消耗しちまった」
突然現れた伏見を見て、ツキミとソーユは、救われた気分になる。
それと反対に……シノの顔は、分かりやすく青ざめた。
「なんで、トオン先輩とヒトネ先輩が…………」
トオンが吐き捨てるように言う。
「よせ。俺たちはもう、お前の先輩じゃない」
「シノ、久しぶり。トオンったら、ここ抜けてからおしゃべりになったでしょ………ソーユさんとツキミさんは、進んでください。シノは僕らが片付けます」
心強すぎる応援に、二人は、しばらく動けなかった。腰の力が抜けて、立てなかったのだ。
「な、未来、読んだやろ…………?トオンだけに」
くどいツキミを無視して、ソーユは自分の手を見る。
「…………カエデ姐さん、ユズキ姐さん、チェリーちゃん…………!こらっ、ツキミさん!ぼーっとしてないで、助けにいくよ!!」
「おい、さっきまでぶっ潰れてたくせに…………」
そう言いながらも、ツキミは頑張って立ち上がった。
後ろでは、双子が、シノの相手をしていて…………ばきっぼきっと、痛々しい音が部屋中に響いている。
「ひえー。オレらじゃ歯も立たんかった相手を、あんな簡単に…………」
「ちょ、振り返っちゃダメだよ!はやく行こう、あれでもシノは底辺レベルだったみたいだし……姐さんたちが、心配だ」
ソーユに言われて、ツキミは前を向く。
「…………なあ、ソーユ」
「ん?」
「言いたいことがあってんけどさ…………えっとさ、その…………」
「なに。勿体振ってないで、さっさと言ってよ」
全く、人の気も知れないで。
そんなことを思いながら、ツキミは少し恥ずかしそうに、口を開く。
「あのとき…………ソーユが家出したとき。殴って、ごめんな」
ソーユは思わず、階段を上がる足を止めた。
「あのあと急にタヨキミに入ることになって、そういえば言ってなかったなって。ごめん」
ツキミは、笑っていない。とにかく、まっすぐな目だった。
(そういうところが、ズルいんだよなぁ…………)
ソーユも表情を引き締めて、ツキミのほうを向く。
「ぼくも、ごめんなさい。何に対してかは、わからないけど……」
「いや、正直すぎるやろ」
ツキミは笑った。ばかにしている訳でもなく、ただ純粋に笑った。
「…………まだまだ、終わってない。はやく行こう」
「ああ。オレたち揃えば、最強やもんな」
「馬鹿言え…………こっぴどくやられたくせに」
「あれはソーユが…………」
「はあ!?ツキミさんだって…………」
そこまで言って、二人は顔を見合わせて笑った。
歪んでしまった……いや、元々歪んでいた。
お互いの気持ちは、きっと、今も一切変わってない。はやく死ねだ、不幸になれだ。
それでも、今のままでも、良いかもしれない………………そんな気がした。
「シノ、洗脳はされてないんだね」
整備が届いていない山道を、三人の少年が歩く。
「シノは、なんでキビアイに入ろうと思ったの?」
ヒトネはシノに訊いた。
(こいつら、躊躇なく人の骨折ったり、躊躇なくセンシティブな話題に触れてきたり……目茶苦茶だな)
その目茶苦茶さこそが、こいつらがキビアイで上り詰めた理由だろうか。
「冗談じゃないよ……なんでこの俺がお前らに、過去を話さなければならないんだ」
「おい…………ヒトネに対する態度がそれか?その気になればお前一人、埋めて帰ることなど容易いが」
クソ……この兄貴、面倒くさいぞ。
俺のことおんぶしてるからって、調子に乗るんじゃない。
無口なのもウザかったが、無口が治った今は、ブラザーコンプレックスが前に出すぎている。
ただ困ったことに、トオンは決して、馬鹿げた冗談を言うような奴ではない。
埋める、なんてのは怖がらせるために言っているんじゃないだろう。ヒトネへの応答を拒否でもすれば、俺はたちまち土の中……死んでも御免だ。
「…………親に捨てられ、身寄りもなく盗んでたら警察に追われて、そこをルナに勧誘された。つまらないだろ、損したな」
そうだ、俺の人生はつまらない。この人の下で働くと決めたのに、最後まで何もできず、元上司に救われて…………馬鹿みたいだ。
思い出したくもない。とにかくひもじくて、惨めで…………母親に対する憎しみも、いつ捕まるのかという恐怖も、なにもかもがぐっちゃぐちゃになって、なにもかもが嫌になって…………
すると、ヒトネが笑った。
「へぇ、僕たちと似てるんだね」
トオンも言った。
「別に、つまらなくないぞ」
なんなんだよ、こいつら。
不思議だ。年下のクソ双子に嘲笑されているのに、気分が嫌じゃない。
「…………なんで、つまらなくないと思うんだ」
「お前がつまらなくないからだ」
トオンの顔は、シノからは見えない。あの頑固野郎が、どんな顔してこんなことを言ってるんだろう………心底気になる。
(俺は救われたってことで、いいのか…………)
実感がわかない。やり足りないけれど、もう何もしたくない。
ただ、まあ…………どうにでもなれ、って思った。
続く
いや雑なんだよ。ごめんなさい。
二時間じゃ限界があったかも、、、、()
どうふ組過去回でした!
てことでどうふ組の由来を公開しようと思ったんですけど、まだしません。自分で考えてください。
これに至っては、書いてるうちにツキミさんとソーユくんへの想いが爆発しちゃって、けっこうごちゃごちゃになってます。ごめんなさい。
ツキソウはきれいに対比してます。親が放任主義なツキミさんと、親から過剰に期待されるソーユくん。どっちも愛されてはいたんだよね。
そしてツキミさんはソーユに死んでほしくて、ソーユはツキミさんに生きてほしい(生きたまま苦しんでほしい)。結局互いがいないと幸せにはなれない、新手の相互依存です(は?)
ちゃんと謝れてえらいね!!ほめてあげよう(お前誰)
どうふ組、本当に好きでさあ…………ガチで死んでほしいしガチで苦しんでほしいけど、結局はどちらかが死んでしまうと悲しくなってしまうから何もできないんだよ。よし、結婚しろ(黙れ)
シノくんの過去がさすがに雑いんですが、この子、自分語りとかしないタイプだとおもうんだよね。てことでこれはうちとの約束、スピンオフでシノくんの過去出します。この先も過去が雑なキャラ出てくると思うから、そういう人たちもちゃんとスピンオフで書く。約束です。
キビアイのドアは簡単に開くのに、癖でドンドンしちゃうトオンの可愛さよ。
そして、年上であるシノくんに何気なく話しかけているヒトネちゃん、、、!オヂサンコウフンシチャウヨ!!!
トオンってネタキャラとして扱いやすくて、、、ほんと好き。
初期のほうはヒトネちゃんのトオンくんに対する気持ちが強い感じだったけど、ポーカーフェイスなだけで、トオンさんも中々にブラコンなんだよね。過去のこともあると思う(あれ、涙が)
本編だけで、一万字超えました。いつもの倍です。
遅くなっちゃってごめんね!!新作だけど、夏休み明けは無理かもしれない、、、、タヨキミ終わってない可能性すらあるからな、、、、
あと4話です!!最後まで、どうかよろしくね!!!!