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#タヨキミ

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#タヨキミ

28 - 第28話 何のために

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2024年09月22日

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久しぶりすぎる更新です。ごめんなさい。

期末だ課題だで忙しくて、、、計画的に課題を進めるとか、私には不可能すぎる。

こんなことしてる間に8月も終わりにかかって、もうすぐ9月。タヨキミの1周年はたしか1016なので、それまでに何か用意しなくては、、!!!どうしよっかな。。。企画、イラスト、番外編やスピンオフなど、希望があればアトストのほうでコメントに書いてってください。


とか言ってる間に9月も始まってしまいました!!

やっと期末が終わった。ほんと更新遅くてすみません。


行ってらっしゃい!








キビアイアジト、三階。

風を切る音が聞こえたかと思うと、右肩に、弾けるような痛みが走る。

「いっ…………」

「ソラ!」

体勢を崩すソラに、見かねたセイサが鎖を飛ばした。

「チッ」

カエデは鎖をよけ、ユズキのところまで下がる。

「おい、ユズキ。お前も加勢しろよ、さすがの私も、2対1だと分がわりぃ」

「加勢するためには、わたしが、お二人のどちらかに触れる必要があります。ソラが能力を出すまで待っていてください…………いえ、ソラの能力を引き出せるように、あなたが努力してください」

「そりゃあひどい」

ユズキって変わらねえな、昔っから──そう思いながら、カエデは二人の方に向かった。


ソラとセイサ。キビアイの年長組と呼ばれており、上層部ほどの力はないものの、かなり手強い相手だ。

セイサの能力は、『操鎖』。その字の通り、鎖を自由自在に操れる。操水ほど汎用性はなく、操剣ほどの殺傷力もないが、曲がる上に質量もある鎖を自在に操られては、手も出しづらい。


(ソラの能力を引き出せ、か…………一回、煽っとこうかな)

カエデは一歩前に出ると、ソラに向かって指をさす。

「おいこらジジイ、そこのロン毛!」

「面倒くさいのが居なくなったと思ったら、また爺よわばりか………なんだよクソガキ」

「面倒くさいの…………?そりゃあ一体、誰のことだ」

「……ヒトネ。伏見ヒトネだ」

その名前を聞いたカエデは、だははっと笑った。

「ジジイお前、あのヒトネにもジジイ呼ばれてたんか。温厚で泣き虫なあいつに!」

「カエデ、真面目にやってください」

ユズキから叱責されるカエデを見て、ソラは顔をしかめる。


(ヒトネの奴。また、猫でも被って──)


いや……温厚で泣き虫なヒトネこそ、彼の本来の姿なのかもしれない。

思い出したくもない。口角を無理に上げた気味の悪い作り笑顔と違って、ソラを馬鹿にしているときの顔は、随分と不快そうだったが、大層楽しそうだった。

そもそも本来とか、本来じゃないとか…………泣き虫なのも、性悪なのも、ひっくるめてヒトネなんじゃないか?

(…………馬鹿らしい。あいつのために、オレが考え事を?)

目の前の敵に、集中しろよ。


そう思って顔を上げた瞬間、頭上に、大きな影がかかった。

「………!」

「余所見厳禁だぜ、ロン毛ジジイ…………!」

「ソラ……!」

セイサがフォローに入ろうとするが、もう遅い。

パチィン…………大きな音をたてて、ソラの服が破れる。

「チッ…………クソ、お前の鞭は何回当たってもいってえな」

「たりめぇだろ!てか、ジジイもいい加減、能力使えよ」

「…………はっ」

ソラは笑って、カエデはまたソラから距離を取る。

「てか、なんで能力使わねえんだ?もしかして能力者じゃないんか?いやそんなことあるかよ、キビアイは能力者の集まりだろ」

カエデが訊く。ソラは間を置いてから、ポケットからナイフを出した。


「…………お察しの通り、オレは能力を持ってねえよ。期待はずれか?悪かったな」


「は?」


え、マジなの?…………カエデもユズキも、まさかの展開に唖然とする。

すると突然、ソラは笑いだした。そしてナイフを使って、自分の二の腕を切る。


「嘘だよクソガキ……!」


その瞬間。ヒュンと音をたてて、「何か」がカエデの頬をかすった。

とっさの瞬発力で右によけると、またヒュン、ヒュンとカエデを追って、続けて飛んでくる。


「なんだ…………?おいクソジジイ、なに飛ばしてやがる!」


楽しそうに笑うカエデに、ユズキが声を張った。

「カエデ、頬に傷が…………」

「あ?痛くねえよ」

そもそも、傷なんてついたか?…………そう思いながら左頬を拭うと、液体が伸びたような感覚がした。

「え………」

カエデが自分の手の甲を見ると、赤い血が、かなりの量付着していた。

「あれ、カエデ。傷がなくなってます」

「いやいや、おかしいだろ。たしかにクソジジイの攻撃は頬に当たったが、別に痛くなかったし…………消える傷もねえよ」

それでも手の甲には、しっかりと血がついている。

困惑する二人を見たソラは、面白そうに笑った。


「おいクソガキ、そりゃあオレの血だ。お前の傷じゃないよ」


ソラの言葉に、ユズキが納得する。

「あぁ、なるほど……そういうことですか」

「どういうことだよ」

カエデを無視して、ユズキは、先程から黙っているセイサのほうを向いた。

丸眼鏡の奥から鈍く光る眼に、セイサは思わず一歩下がる。

「カエデはそのまま、ソラの相手をしていてください…………わたしがセイサを片付けましょう。ソラは恐らく、自身の血を操れる能力を持っています」

「え…………あぁ、そう。わかったよ」

カエデは「よくわかんねえけど」とぼやきながら、ソラのほうに向き直る。

「あとあなた、タヨキミではカナタ、アキト、そしてわたしに続いて強いんですから…………間違っても、勢い余って殺さないでくださいね」

「おい、それは煽りか?それともブーメランか」

カエデの言葉に少し笑うと、ユズキはゆっくり、セイサに近づいていく。

「こんにちは、セイサさん。わたしはタヨキミを創設したメンバーの一人である、江國ユズキという者です。今宵はぜひともセイサさんにタヨキミへ加入してもらいたく、この場を訪れました」

「アンタ…………あの緑より強いって、本当かい?」

「データはありませんが、恐らく。あと彼女は緑ではなくカエデ、野々カエデといいます。セイサさんたちの苗字は、なんというのですか」

「…………もう、ここまで来れば隠す必要もないわよね。保月セイサと、成瀬ソラよ」

話しながらも、ユズキはコツコツと進んでいく。

「そうですか、素敵なお名前ですね。保月さん、わたしたちは決して、貴方たちに危害を加えたい訳ではありません。ただ、どうしてもお訊きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「……どうぞ?」


「では……貴女たちがやっているこの犯罪行為の数々には、一体、どのような意味があるのですか?」


心の奥を突き刺すような声と表情に、セイサは思わず息をのんだ。

「それは………………なんで、でしょうね。わからないわ」

「そうですか。では、この宗教じみた組織には、どのような価値があるのでしょうか?」

「それも………………わたしには、わからない」

「そうですか。では、組織のボスであるユヅルを信仰するという行為に対して、貴方はどのような感想を持っているのですか?」

「それも、わからな…………いえ、とても…………くだらないと、思うわ」

やりにくそうに答えるセイサに、ユズキは目をきょとんとさせて、さらに訊く。

「そうなのですね。それでは、なぜ保月さんはキビアイにいるのですか?」

頭を、大きな石で殴られたような感覚がした。

「犯罪行為も意味も、組織の価値もわからない。くだらないことをしているという自覚はある。わたしも同意見です。このキビアイという犯罪組織に価値などなく、その組織のための犯罪なども意味がない。そしてとてもくだらない。それなのにどうして、セイサさんはキビアイに残り続け、ユヅルを信仰するのですか?」

怒りは起きなかった。この子が言ってることこそ正しくて、世界の常識なのだろう。

くだらないとわかっていながらも、ユヅルを信仰し続ける理由…………


「…………ごめんなさい、わからないわ」


きゅっと、喉が乾くような感覚。


そんなセイサを見ても、ユズキは止まらない。

(これも、ユヅルの洗脳なんですかね…………ユヅルには興味のない保月さんを無理やり洗脳したのか、はたまた救うような形でキビアイに加入させ、徐々に自分の世界へ入れ込んだのか)

ユヅルは人を洗脳するとき、まずその人の弱みに漬け込む。ずっと昔から、それは変わらない。

「わからないのならば、良いです。質問攻めにしてごめんなさい」


目の前の娘は、怖い。どこかハルカを彷彿とさせるような不気味さを感じるけど、あの子ほどの不安定さはなくて、むしろ安定という面で言えば真反対だけれど…………圧迫面接を受けているような気分。

ハルカのような、有無を言わせない感じではない…………相手の答えがわかっていてなおも訊くような。これを意識しているのか、恐らく意識していないのだろうから、余計に怖い。

「……別に、いいのよ」

こうでも言っておかなければ、呑まれそう。いや、もうきっと呑まれている。


(わたしはこのユズキちゃんに怯えていて、しかも能力もバレている。わたしはこの子の能力がわからない…………相当頭が切れるようだし、そんな子がソラの能力を見てから「相手はわたし」と判断したのだから……)

恐らくセイサには、勝ち目がない。

さっきの質問も、セイサを混乱させるために行ったものだとしたら……余計に。

「…………どうします?戦いますか?」

この発言も、ここまで…………勝ち目がないというところまで、セイサが読んでいることを想定しているから言えたこと。

ならば………………

「……そうね。戦うわ」


───わたしが逃げないというのも、想定済みなんでしょう。



セイサの言葉を訊いても、ユズキは表情を変えない。

「そうですか。困りましたね…………」

そう、セイサは、ただユズキを殺すだけで良い。だがユズキは、セイサの洗脳を解いた後、無事に救わなければならない。

身内や知り合いならまだ楽だが、ユズキはセイサと出会ったばかり……過去もしらなければ、性格もよくわからないのだ。

そういう面において、タヨキミはキビアイより弱い。今までタヨキミメンバーが、赤の他人を正規の方法で救ったためしがあっただろうか…………ムニカは自殺してしまったし、サチには鉄球を当てて、記憶を蘇らせ脳に衝撃を与える形で救った。唯一を言えばユカリは初対面だったセツナを救っているが、二人にはなにか、通じあうものがあったのだろう。

当然、今のユズキとセイサに、そんなものはない。あるのは恐怖と不安だけだ。


「…………ユズキちゃんはまだ小さいけど、容赦はしないわ」


「わたしももう18なので、一応成人です。それでも、保月さんの二分の一ですね」


ふっ……セイサは笑って、鎖を浮かす。

ユズキは姿勢を低くして、セイサに向かって走った。


(…………一発で、取る……!)

ユズキの能力がセイサにバレないうちに、セイサに触れて操鎖を奪い、セイサを拘束する。

セイサのことをなにも知らないユズキには、これが最善手だ。動きを封じさえすれば、あとはどうにでもなる。ユヅルを救えれば、きっと、じきにセイサも救われる。

(唯一の危惧は、能力の強さ…………もし保月さんのほうが鎖を操ろうとする力が強かった場合、わたしの能力は効かない)

でも、これは……セイサに触れたあとに一回下がればセイサは能力を解くので、そこを狙えばなんとかなりそう。

(チャンスは一度きり。必ずやる…………わたしは、やれる!)

ユズキは構えるセイサに向かい、手を大きく伸ばした。





「なぁ、オッサン」

「……なんだ、クソガキ…………」

顔色を悪くしながらも、ソラは笑顔でカエデを向いた。


やっぱり、無理だ…………歳が歳なんだから。

「オッサンの能力、なんか効率悪ぃな…………自分を傷つけなきゃいけないし、その傷から出せる血も、せいぜい5発分。傷つけすぎると痛いし、血も足りなくなるよな。もうやめるか?」

「バカ言え。オレは……まだ、戦え…………ッ」

咳き込むソラに、カエデは不思議そうに訊いた。

「…………なんで、そんなに頑張るんだよ。おめぇたちは一体、何を守ってるんだ…………てかオッサンはなんで、キビアイなんかに入ったんだよ」

その質問に、ソラは言う。

「…………守るもんなんか、ねえよ。なにも……守れない。子供も、法律も」

彼が笑顔を絶やすことはなかった。また笑いながら、ナイフを握り直す。

「負けらんねえんだわ…………まだ若かった過去のオレが、ここに居るって、決めちまったからよ……!」

ソラが自分の脚を切ろうとした、その瞬間。


「下がってください、カエデ…………!!」


横から、ユズキの声がした。


「!」


咄嗟に後ろに飛ぶと、太い鎖が、カエデの目の前を物凄いスピードで通った。

そのまま鎖は、ソラの胴体に巻き付く。

ソラの手から抜けたナイフが、真っ赤なカーペットにぽとっと落ちた。


「ふう…………これで二人、拘束ですね」

「おぉ……やるなあ、ユズキ」


向こうを見ると、同じく鎖で縛られているが、恐らく意識のないセイサがいた。


「さぁ、保月さんの意識が戻る前に、わたしたちもチェリーさんのもとへ急ぎましょう」

「ああ……!!そうだな」


足早にエレベーターに乗ったカエデと、目が合った。

「……じゃあな、オッサン!お前、なかなかおもろかったわ。女起こすんじゃねえぞ、ユヅルどうにかしてからまた来るから」

そのまま、扉は閉まる。


「…………最近の餓鬼は、こえぇなあ……」

ぼっていくエレベーターの音を聞きながら、気絶するセイサの顔を見て、ソラははぁ、とため息をついた。







時は遡り、数十分前。

相変わらず薄暗いキビアイアジトの最上階の会議室は、いつもは殺伐としているが、今はその影もないほどの静かな空気が流れていた。


「………………あのなァ、チェリー」


ルナはポケットから煙草を出しながら、そこに立つチェリーを見た。

「お前さ、ここがどこだか…………わかってんのか?」


チェリーは怖がる様子もなく、はっきりと答える。

「キビアイの、アジト」

「そりゃそうだ。わかって来てるっつーことは、なんだぁ、死にてぇってことか?」

「死にに来た訳じゃなくて、私は兄さんを救うために来たんだよ」

「そうかよ。救うって、何からだ?」

チェリーはまた、大きな声で答えた。


「兄さんが過去のしょうもない出来事にずっと囚われてどうしようもない奴に成り果てていたから、私がこの手で、兄さんを正す。過去とキビアイから、あの時の兄さんを救う」


「……へぇ。今ここで俺をキビアイから引きずりおろしたとて……あの時の、優しくてかっこいい兄ちゃんは、帰ってこねぇぞ」

「構わない。私はその瞬間のために、今まで生きてきたのだから」

言い切るチェリーの顔を見て、ルナはため息混じりに煙を吐く。

「………おめぇの顔見てっと、タバコが不味いわ。失せろ……そもそも、おめぇは俺を救えない。おめぇは能力も頭も弱い。俺も頭は弱ぇけど、能力は強い」

「そうだね。今の私ではきっと、兄さんを救えない………けど同じように、今の兄さんは、いや、あなたが私の兄さんである限り、兄さんは私を殺せない」

「そうかぁ。やってみっか?」

「やれるものなら。今の兄さんは、前の兄さんと同じように、とても優しくてかっこいい」


いつのまにか、震えはなくなった。

安心したんだ―――兄さんが、兄さんのままでいることに。

声、顔、話し方……メガネのレンズ越しに見る兄さんは、あの時の兄さんと同じだ。

救うのは難しい。

兄さんは強いし、後ろにはユヅルもいる。私一人では無理だ。

だから今はこうして、兄さんと話しているだけでいい。


「ねぇ、兄さん………少しだけ、思い出話をしようよ」



何も、特別なことなんてない。

私と兄さんは、きっと、すれ違ってしまっただけなんだ。






続く








お疲れ様でした〜!!!

更新おっそいってね、、、!!!すみません🙇‍♀️

次の話も遅くなると思う、、、、ごめんなさい。


最近、自分の作品やキャラに対する創作欲が目に見えて激減してるんですよね。

理由は明白で、単に私が、他の作品にハマりすぎているだけなんですけど。

そろそろ書かないと流石にやばいと思ってタヨキミ最初から読んだら、これが案外面白くて、、、、でももしこれが他人の作品だったら、私は途中で離脱してるかな。ここまで追ってくださっているきみいすとたちのタヨキミ愛には頭が下がります。

完結まであと3話!!!最後までよろしくお願いします!!!!


今回はソラ、セイサ、ユズキ、カエデのメイン回(多分)でした!!

この人たちの過去ですが、ちょっと本編に入りきらないので、シノくんと同じようにスピンオフで後日紹介させていただきます。

ソラとセイサがあまりにもあっけなくやられている!もっと活躍させて欲しい!!って思った方もいると思うんだけど、私は彼らに「年下たちを力で圧倒させるような強さ」ではなく「年下たちにあっけなく負けるカッコ悪さ」と、「それでも大人として対等に、自分のプライドを守るために立ち向かうかっこよさ」を感じてるんです。それがあってこそのソラの自虐だと思うし、そういう所が本当に彼らの魅力で、それをいかに簡潔に表現するかを追求した結果、あんなことになりました。

普通に実力不足過ぎてみんなには伝わらなかったかもだけど、こういう意図があったということだけ、、!!!


荒気なカエデと温厚なユズキ、実はユズキのほうが強くて、カエデのほうが優しかったりするんだよね、、この2人も大好きです、、、!!!


各キャラメイン回、残すは5人かな?

ユヅル、アキト、ルナ、チェリー、ぽんちゃん、、、、

ぽんちゃんに至ってはなんも情報が開示してないからね。。。

楽しみにしててください!!またね!!

この作品はいかがでしたか?

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