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好きな子がいた。ずっと前から

でもそれは、叶わなかった。


彼には、他に好きな子がいた。誰か聞いてみた。

彼が言ったその言葉に、私の名前はいなかった。


ああ、これが失恋なんだな、そう思った。

悲しくはなかった。ただ、孤独があった。


今では、彼の隣には、私ではない別の人がいる。

私は奥歯を噛み締めて、彼とすれ違う。


自然と、足が早くなる。早く立ち去りたい。

失恋は、こんなに辛いものだっただろうか。


大体のおとぎ話も、色んな人の夢物語も、お姫様は、絶対に恋が実っていた。

けど、本当は?結果としては、そんな夢のような話なんてあるわけなかった。


少しでも、ソレに憧れた私は大馬鹿者だ。

世界一の大馬鹿者。


涙は零れない、枯れたから。

息もあがらない、していないから。


体はない、透けているから。

彼には見えない、だって


私は死んでいるから。


「幽霊になってまでこんな事引きずってるなんて、私、馬鹿みたい。」


彼には私を見つけることはできない。

見つけれない。


好きな人を聞いたのは嘘

ホントは死んだあとに聞かされた。

足が早くなったのも嘘

彼が私に気づかずに通り過ぎただけ。

心が苦しくなっているのも嘘、なのかもしれない。それだけは、分からない。



電車が来た。

彼岸行きの列車が、私はそれに乗る。

彼とはここでお別れ。





おとぎ話も夢物語も、全部全部偽物。

だって、だって

私の恋は、死んでも尚、叶わないから。

ああ、私はなんて


大馬鹿者なんだ。

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