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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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「碁会所にはよくいらっしゃるんですか?」
私の祖父とは以前にも会ったことがあるようだったので率直に尋ねてみた。すると社長は抹茶あんみつを口に運びながら首を横に振った。
「今日で三度目。車で迎えに来いって連絡が来ても都合が悪かったら行けないから。一緒に住んでない分、努力しないと疎遠になるってわかってるんだけど」
「仲がいいんですね」
「うちはじいさんの言うことが絶対なんだ。あの人おっかないだろ?」
社長の表情を見る限り、今の発言が冗談ではないとわかる。
だけど私の中では辰巳さんに対してその印象は一切ないので首をかしげた。
「まったく怖くはないです。いつもにこにこしていてすごく温厚な方ですよ? うちの祖父のほうがよほど不愛想です」
「本当に? 俺には厳しいのに君にはやさしいんだな」
社長は盛大にあきれた顔をしているが、私には厳しい辰巳さんの姿は想像できなくて、どう反応していいかわからなかった。
「今日はじいさんと渓流釣りに行くはずだったんだけど、雨が降る予報を聞いて中止にしたんだ。そしたら碁を打ちに行くって言って……あっ」
「なんでしょう?」
「もしかして君もあそこに急に呼び出された?」
ピンと来たとばかりに社長は腕組みをしながら私に尋ねた。なにか点と点が線で結ばれたのかもしれない。
「私に傘を持ってくるように電話がありました」
「じいさんたちが企んだな。俺たちは自然に出会うように仕組まれた」
社長はその事実に今気が付いたようだ。
だけど私はその可能性が高いのではないかと、少し前に彼と同じ考えに至っていた。
辰巳さんが『冴実ちゃんがうちの孫と結婚してくれたらいいのになぁ』とお孫さんのことをアピールしてきたあとに『一度、実物を見てみてくれないか?』という発言があったからだ。
「じいさんは雨が降ることを知っていたのに、傘を忘れるなんて今思うと不自然だ」
「碁を打ちながら、私たちの話をしていたんでしょうね」
祖父は碁を打ち終わったら帰ると口にしていたが、腕組みをしたまま悠長に構えていて、次の一手をなかなか差さなかった。
今になって考えてみると、社長が来るまでわざとゆっくりと勝負を引き延ばしていたとしか思えない。時間稼ぎだったのだ。
「ここにも、祖父は最初から私たちふたりだけで来させようとしていたんだと思います。ご迷惑でしたよね。すみません」
「迷惑なのはうちのじいさんのほうだろう。俺とのことを押し付けるように君に頼んでたのが聞こえてた。本当にすまない」
「謝らないでください。社長はなにも悪くないです」
社長から謝罪を受けるなんて想定外で、私はおろおろと恐縮するばかりだ。
だけど、緊張はするものの辰巳さんのお孫さんが神谷社長でよかったと思う。まったくの初対面の男性だったなら、こんなふうに話せなかっただろう。
それに、私にとっては社長と一緒に甘味処を訪れたという幸せな思い出ができた。
「うちは父が早くに他界しているので、祖父が父親代わりなんですけど、私には結婚して欲しそうだったから……」
「俺のじいさんもそうだ。頼んでいないのに俺の結婚相手を捜してる。参るよ」
辰巳さんは先ほど『見合いを勧めても嫌がる』と話していたので、きっと社長はいろいろと理由を付けて断っているのだと容易に想像できた。
社長ほどの人ならば、その気になれば女性から引く手あまたなのは間違いない。
今は結婚する気がないだけなのだから、辰巳さんがそこまで心配しなくても大丈夫なのに。
「あのさ、呼び方についてなんだけど……じいさんたちの前では“社長”は禁止で」
「……え」
尊敬している社長の言いつけとあらば、なんでも承諾したいところだが……。
これについてはどうしたものかと首をひねった。
「絶対にじいさんから指摘が入るよ」
「では、なんとお呼びすればいいですか?」
「お互いに下の名前で、さん付けにしようか」
今後こうして碁会所でバッタリと会うことは早々ないと思うけれど、いくらプライベートだとはいえ器用に頭を切り替えられない。
社長の提案を聞いた途端、私は目を丸くして顔の前で手を横にブンブンと振った。
「む、無理です無理です!」
「むずかしくないって。“朝陽さん”って、たった五文字じゃないか」
気が付いたときには社長がテーブルに肘をついた状態で身を乗り出していて、パーフェクトに整ったその顔を間近で目にしてしまった。
ドキンドキンと大きく心臓が鼓動する。直視できなくなって、思わず視線をテーブルへと下げた。
なんという破壊力なのだろう。あのまま見続けていたら、私の心臓はどうなっていたかわからない。
「じいさんたちの前では、くれぐれもそれでよろしく」
黙り込んでいたら、私が渋々承知したと思われたようだ。
どうしよう。祖父たちの前でうまく呼べる自信がないのだけれど……。
コメント
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読了〜!祖父たちの策略で自然に出会うように仕組まれたとはいえ、お互いに緊張しつつも名前呼びの提案とか、社長が身を乗り出して「朝陽さん」って言ったシーンの破壊力やばかったわ…。ヒロインの心臓のドキドキがこっちまで伝わってきた。じいちゃんたちの思惑に気づいてからの2人の反応も自然で、ほっこりする展開だった!次が気になる🔥