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「おはよ!大輝」
「おは〜」
「なんか最近の大輝普通に戻ったっていうか普通よりなんか気分いいよな。」
「そう?」
「なんか、幸せそうで。」
「そう見えるか〜」
「それでウザイ。」
「えへへへー」
「そいえば最近瑞葉来てないけど風邪か?大輝なんか知ってるか?」
「いや何も?」
瑞葉殺害、証拠隠滅後からはや2週間が経っていた。流石のクラスメイトも心配をしてくる頃だった。そこで綾香は何か裏でコソコソやっている。
その行動の後日、クラスの先生から大事なお話があると言われ、学年で集会をすることに。
「みなさんは知っていると思いますが、瑞葉さんがここ最近学校に来ていません。その理由を今から瑞葉さんのお母さんお話します。どうぞお入りください。」
暗い顔で入ってきたのは瑞葉の母だった。
服はシワだらけで髪はボサボサ。目は閉じているのかと思う程に細くなっていた。
「瑞葉の母です。突然として言いますが…瑞葉は…瑞葉は..亡くなりました。」
この言葉に、あんなにガヤガヤしていた雰囲気が一気に静まった。
「死因は、事故死だそうで…警察からは、バイクに跳ねられ、運悪く頭に直撃…、そのまま息を絶えたそうです…うっぅ…」
瑞葉の母親はその場で泣き崩れた。
さぞ辛かったろう。
こんなに外見が変わり果てて、無理もない、自分の子が死んだのだから。
だが、俺は別になんとも思わなかった。正義を貫いただけ。
俺は間違っていた?そんな訳が無い。俺は正しい。綾香も正しい。そうでしょ?
そう思い、綾香の方をチラリと目だけを向けた。
彼女が「うん」と頷いたように見えた。
こんな時間が過ぎ去り、気がつけば放課後。
俺の友達、來(らい)が屋上へ来るようにと呼んできた。
「まさか、瑞葉がもう死んでたとはな。」
「俺も思わなかった。俺と一緒に帰った後に死んだんだな。瑞葉は。」
「呼んだのはその事で話があるんだ。大輝、お前ってさ。」
「?」
「瑞 葉 、 殺 し た だ ろ ?」
バレていた?いつ?どこで見てた?なんで?わからない。どうして?なぜ?綾香のことも?
焦りで脳内が白紙のように真っさらになった。
「もしかして…本当に..?」
「2人で何してるの。」
綾香がこの事を予測していたのだろうか、屋上へとやって来た。
「びっくりした…綾香か…」
この様子から見て綾香も殺したとは思っていないようで、俺が瑞葉を殺した。ということだけしか知らなさそうだ。
「お前には話せない事なんだ、俺たちだけの問題だから。」
「そう。邪魔してごめん。」
ん?綾香は一体何をしに来たんだろうか?
綾香の行動はいつも無駄なんてない。これにも何か理由があるはず…
「そうそう、私。」
「なんだ?」
來が綾香の方へと振り向いた時、ポケットからキラリと光る何かがあった。
それは尖っていて危ないナイフ。
「瑞葉を殺したの、私だから。」
「…え?」
俺は迷いもなく來の頭をそこにあった小さくて、尖っている石で振りかざした。
「死んではないね。バレないように私の家まで運ぼう。」
彼女のバッグから黒いゴミ袋のようなものが出てきた。大人1人包み込めるような大きさだった。
「來の行方不明はどうするんだ?」
「そこも私が何とかする。」
來を袋の中に包み込んでそのまま学校を出ようとした。
綾香とは別々で行動することになり、俺は袋を持つ事になった。
「ん?大輝。なんだその袋?やけにデカイな。」
学校を出る途中に、理科の先生と鉢合わせしてしまった。
「あー、俺のクラスのゴミを捨ててきてって先生に言われたんで、」
「ふーん。もしかして人が入ってたり?」
今日はとても運が悪い。なぜバレているんだろうか。先生もこの場で殺すか..?
殺すか殺さないか、どちらにせよ俺とって今は不都合。どうすれば…
「なーんてな。冗談だよ。ハハッ!まさか本当じゃないよな?じゃ、がんばれよー」
そのまま先生は去っていった。
街中では人目につかない通路を使って綾香の豪邸まで辿り着いた。
豪邸の入口扉を開けた瞬間、知らない誰かがいた。強盗か..?と思い、少し身構えた。
「綾香、あなたのお友達かしら?」
名前を知っている…?
「うん…私が連れてきたの、だから追い返さないで。 」
「そう。でも、私には連絡して欲しいんだけど?」
「ごめんなさい。」
「本当、あなたは出来損ないね。兄と比べてあなたは…」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいだけで許されるとでも?」
「ごめんなさい」
「はぁ…もういいわ。あなたも、好きにしてちょうだい。」
綾香はずっと下を向いたままだった。
「あの人、母親?」
「…うん。私の母。」
「そう…なんだ。元気があっていいね…」
「それ、処理しよう。」
「え?あぁ、そうだね。」
死体を処理しながら俺たちはあの母親について話を始めた。
「ちょっと怖かった。綾香のお母さん。」
「うん。」
「なんていうか、綾香みたいな目よりももっと冷たい。」
「ん?」
「あ!ごめん!綾香の悪口じゃないよ!?なんていうか…人を人で見ないような目…っていうか?なんというか…」
「私もそうだよ。認める。人だって認識してない。でもあなたは人だと思ってる。周りに合わせて、社会に合わせて、そのまま人形として生きていくなんて、それって本当に人間なのかしらって。」
「俺、何が良くて何が良くないのか、最近分からなくなってきたんだ。今してることも、前まではいけないことって思ってた。でも今は変わった。君のお陰で変わったんだ。世界そのものが変わったように思えた。」
「それはよかったね。」
思っていたことを少し彼女に言えてスッキリした。悩み事を誰かに相談するのはとてもいい事だ。
「じゃ…またね。」
「うん。」
そのまま來を処理して事なきを得た。と思っていた。
扉を閉めたあと、声が微か に聞こえた。
「綾香、これ何。」
「これは…」
「本当に何をしているの!?私が居ないだけでこんな事になるなんて!!どうして!!何故!!理由を答えなさい!!」
「…」
「黙るな!!どうしてあなたはそうなの!?」
綾香の母が猛烈に怒っている声がする。
綾香は何も言わず、ただ時が過ぎ去るのを待っているのだろうか。
「聞いてられない…」
俺は扉を力いっぱいでバッと開け、その勢いに乗って、
「ちょっとお母さん!そんなに怒らな…くて…も..?え…?」
「なんで、戻ってきたの?」
綾香が母親の腹部を刺していた。
綾香の母は声もあげることなく、ただ、天井を見ていた。
そして、静かに呟いた。
「私が間違っていたの..?私が何をしたって言うの..?なぜあの子は兄よりも、何もかもが下なの…?どうしてこんな運命にさせてくれたの..?答えて…」
「うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさい!!」
「もうこの家族と縁を切る!!お前なんて奴は知らない!ただの悪だ!!悪!悪!悪!悪!!
どうしてそれが分からない!?どうしてだ!!
お前は兄を完璧だと思っているのか!そうなのか!?それに比べて私はゴミ以下か!?」
「そんな私で何が悪い!!死ぬ前に応えろ…!!私に…何を望んだ…」
「…」
こんな気が狂っている彼女は初めて見た。
こんな一面もあるんだなと。
たまらないその感情。震えるその鼓動。
彼女の全てを知りたい…!
「あなたは…私の…理想の子…」
「そう…したかった…だけ…なのに…」
「自分の理想を他人に押し付ける親なんてゴミ同然だ。私以下だ!!」
「どこで…間違えちゃった…のか…なぁ..」
「最初からだ。私を、産んだこと。そして、お前が、存在していることだ。」
その日は夜も眠れなかった。
あんな彼女、俺は知らない。
だからこそ知りたい。全てを、
もしかしたら、恋…しちゃってるのかもしれないかな。