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悠香 @ギザ歯教
MIRAN@また新作だすかも?
──────メテヲさん視点──────
その日、お父様に勝った日。メテヲはいつも通り自室に…という訳ではなく、今は総司令室にいる。総司令室、それは天使と悪魔がお互いに唯一立ち入っていい神聖な場所。そこだけは悪魔は天界に来ていいのだ。けれど、主を失ったこの部屋はどこか寂しそうだった。その主はイヴィジェル家の当主であり、メテヲのお父様であり、これからはメテヲとなる。けれど、この部屋は新たなる主を歓迎していないように見えた。───少しだけ開いた窓から冷たい空気が差し込む。夜は、メテヲと部屋を暗闇に落としてくるが、月は、それらを優しく包み込む。同情されたのを感じた。
この部屋での記憶が呼び起こされる。別に、いい思い出なんかじゃない。お父様に叱責された経験の方が多い。メテヲの頭の不出来さを嘆き、落胆していた、と噂で何回も聞いた。けど、戦いのセンスだけはあったから、認めない、という訳にもいかなかった、なんて話も聞いたことがある。お母様は、常にお父様の味方で、メテヲの言葉が、望みが届くことはなかった。けれど、20歳の時、みんなに祝われた記憶は確かにある。いつからか、お父様とお母様はメテヲに強く当たり始めるようになった。きっかけ、なんて覚えていないし、理由も知らない。けれど、その事実はメテヲを蝕み続けた。
メテヲは今、親殺しという最低な行いをした。と、言うのに誰もそれが悪い事だとは思わないし、批判もされない。ただ、熱狂的なやつらが笑って賞賛し、既にお父様とメテヲを批評する準備をしている。怖かった。けれど、この足を止める理由にはならない。メテヲは、なんのために当主を目指して、そして、お父様を殺すほどの覚悟をしたんだ。それは…。そこで、息が詰まる。…どうして、メテヲはそこまでして当主の座に固執しているのだろうか?当主になって、神に近づいて文句を言うため、だった気がする。けど、神に文句を言うほどなにかされたことも、したこともない。
そんな疑問を見出したとき、突如、コンコン、とノックの音が部屋に響く。突然の音に驚きつつも、メテヲが何かを言う前にその人物は部屋へと立ち入ってくる。
ドアを開け、入ってきたのはメテヲのよく知る人物、ぐさおであった。驚きはしたが、見知った人物なのでぐさおに快く声をかける。
「あぁ、ぐさおか。どうしたの?何かあった?」
メテヲがそう尋ねても、ぐさおは何も言わず、ただ顔を下げて、メテヲを見ようとしなかった。本当にどうしたのだろうか?そう思い、顔を覗き込もうとした時───ぐさおは面をあげる。その表情は今まで見たことがない、歪んだ笑みであった。
「ッ!?」
メテヲは反射的に距離を取る。歪な笑み、と現したが、それは厳密には違う。ぐさおのその顔は口が裂けており、目も、口の中も真っ黒で、およそ、天使の羽を持つぐさおの微笑みとは程遠かった。そして、察する。そいつはぐさおに似た”なにか”である、と。メテヲは槍を作り出し、臨戦態勢を整えるが、相手側に敵意はないらしい。すぐさま両手を上げ、降参の意を示す。メテヲは建前上は槍を手放すが、白衣の下には短剣を忍ばせておく。
そして、ぐさおに似た何かはメテヲの慌てる様子を見てそれを冷笑するかのように嘲笑う。
「君はやっぱりぐさおに弱いんだね。」
「…知ったような口を利いてるね。あなたのその情報はどこから?」
「おや、見た目で分からないのかい?どうやら次期当主様は目が悪いらしい。」
「はは、このメガネで察して欲しかったな〜。あなたは観察能力が欠けているみたいだね。」
そんな会話を繰り返していては、本題に辿り着かない。やがてそいつはニヤニヤとあくどい笑みを浮かべながら話し始める。
「さて、君の気になる答えを言おう。まず、私の正体についてだが、私はぐさおだが、ぐさおは私ではない。」
「あなたがぐさおであるなら知ってるよね?メテヲ、そういう回りくどいの嫌いだって。さっさと真実全部語ってよ。」
メテヲがそうトゲのある言い方をしても、そのぐさおもどきは気味の悪い笑みを浮かべるだけだった。そして、そいつはどうやら説明の仕方を変えたらしい。話は突如、過去の出来事についてへと変わる。
「ふむ、ではまず私が生まれた経緯について話そうか。まず、私は神器の中のひとつから、ぐさおのミラーとして生まれたわけ。君、ミラーっていう種族知ってる?」
「…知っている。神界にある神殿に飾られている鏡で、真逆の性質のものを生み出す、っていう神器でしょ?で、そこから生まれたものをミラーって呼ぶはず。」
「君は私の想像よりも賢いようだ。非常に助かるよ。その通り。で、私がぐさおのミラーって訳だ。そして、君がその先を知っているならば、事態は君にとって些か悪い方に進んでいるんじゃないか?」
「…最悪だね。でも、こうやって相談してくるってことは、君は賢いミラーのようだ。」
そう、メテヲはこの先の落とし穴を知っている。ミラーというものは、鏡に写ったものの真反対のものを作り出す。しかし、初代の神々がいなくなってから、その鏡を点検するものはおらず、そのせいで鏡は最悪の進化を遂げていた。…そう、それはコピー元と入れ替わる、というもの。当然、入れ替わるならコピー元が邪魔なわけで、本体を殺す、という事案が過去にあったことを知っている。けれど、賢いミラーはそれをすると殺されることを知っているため、このように交渉しに来るわけだ。コピー元が聡明なぐさおだから、当然このコピーは賢いわけで。納得の選択だな、と思いつつ、その交渉内容を尋ねる。
「んで、あなたは何を望んでいるの?」
「…別に私は本体を殺したいわけではない。そもそも、生きたい、という欲求に従って行動しているに過ぎない。だが、私が生きている限り、ぐさおはどんどん体が弱り、感情が死に、そして早死するだろう。それでも別に構わなかったが、そうすると確実に君に殺される。だから、条件は私を生かすこと。…その代わりに私がぐさおのお世話をしよう。」
「…もう少しメリットのあることを言えないか?話を聞く限り、あなたが生きている限りぐさおの寿命は短くなっていくように感じる。」
「その通り。けど、それはそろそろなくなる。何故ならば、私の体がそろそろ形成され、この中にいる必要がなくなる。つまり、栄養源である寿命や感情を吸い取る必要が無くなるんだ。…けど、残念なことに、私以外がぐさおを殺した場合、私も死ぬらしい。」
「最後は別にメテヲにとって残念ではないね。でも、多分。もし交渉に応じなかったらぐさおを殺すってことでしょ?」
「ああ、無論そうだ。じゃないと本体を生かす意味はないからな。」
「…その交渉、応じよう。代わりに、あなたはメテヲが死ぬまでぐさおを守り続けて。そして、ぐさおに忠誠を誓って。」
「…君ではなく、ぐさおに?」
「うん、そう。いい?さもないと今殺すよ。」
「…応じよう。君は、本当に私を殺しそうだからね。」
「その判断は正しいよ。…それで、あなたのことはなんて呼べばいい?」
メテヲが、そう問う。そうすれば、そいつはニヤリと笑い、ばさりと翼を広げる。ぐさおとは対照的な、漆黒の、翼。黒い羽根が当たりを舞い踊り、そして、その存在を畏怖するかのように離れていく。
「私の名前は《ダークぐさりん》。…《ダーク》って呼べ」
「…ぐさりん?」
「やめろ、そこを繰り返すな。そこはぐさおがつけた名前なんだよ…。」
「あぁ、なるほど…。てか、流れで誤魔化そうとしたよね?その名前」
「そこをわざわざ取り上げてくると思わなかったよ。このクソ野郎。」
「まて、ぐさおのミラーなら、あなたもメテヲの妹みたいなものだよ?メテ兄って呼べ!」
「そんなガキみたいな名前で呼ばねーよ。だいたいなんだよ、それ。その呼び方が許されるのはガキまでだろうが。」
「ぐさおはまだ子供だよ?」
「…まじかよ。」
そんなこんなで、メテヲは新しい妹(?)と契約を交わした。
その契約を後悔する羽目になるとは夢にも思わなかったが。
ここで切ります!今回はダークの導入ですね〜。そしてメテヲさんの記憶の混濁の影響で立ち止まるって描写も書けてよかったです!それとそろそろ入学式なんで!今週は投稿できる日が少ないかもしれません…よろしくお願いします!
それでは!おつはる〜!
コメント
2件
なんか雰囲気友達なんだけど最後