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過去ストーリー再掲


ブラック体調不良

嘔吐表現アリ


start

















ふわふわと浮いているような感覚になってから、もうどのくらい時間が経っただろう。


ベッドに横になっているのにグラグラと揺れる視界が煩わしくて、ぼんやりと霧がかった思考ではもう何も考える事なんて出来なかった。


「ん”~…」


不調を感じたのは朝からだ。


やたらと手足が冷え、少し怠いと思っていた。


それだけだったのにいつの間にか階段を転げ落ちるような早さで体調が悪化していき、授業中だったというのに熱と吐き気で集中出来ず、それに気がついたすまない先生に強制的に早退させられてしまった。


正直言うと、具合が悪くて授業どころではなかったのでありがたいが。


自宅に帰ってきてからというものの、熱が高くて寝付けないし、何よりずっと付き纏わっている吐き気が煩わしかった。


いっそのこと吐いたほうが楽だとは思うが、身体が思うように動かず、こうして部屋でくたばってる訳だが。


(気持ち悪い…)


このままではベッドが大惨事になるのも時間の問題だった。


重い身体に鞭打って何とかベッドから抜け出し、仮面を取り、立ち上がったもののすぐに血の気が引いていく感覚がして、足の力が抜けてしまった。


へたりと床に座り込んだが最後、ついに立ち上がる力も奪われてしまった。


治まる気配のない寒気が、これからまだ熱が上がる事を意味しているのを理解してしまった途端に「勘弁してほしいですね」と泣き言を言ってしまいそうだった。


今でも辛いのにもっと辛くなるのか。


気持ちだけでも辛くて、耐えられず床にずるずると吸い込まれた。


(床、冷たい…目が回る…)


こんなとこで見ていては悪化する一方だ。


そう分かっているのに身体が動かない。


早退して来てからずっと寝れず、吐き気も続いて体力も限界に近い。


もうどうしようも無く、どうにでもなれと、どこか他人事ように思いながら落ちてきた瞼を素直に受け入れた。










「ブラック~、入るよ~?」


授業中はただの寝不足か、はたまた機嫌が悪いのかと思っていたが、覗いた顔色があまりにも悪く、ギョッとして強制的に家に帰らせた。


放課後になったから様子を見に、ブラックの家まで来て声を掛けたのだが返事がない。


寝てるんだろうか。


昔から風邪や食欲がないところなど見たことがなく、こんなことは何かと初めてで様子が気になる。


寝れてるのならそれで安心だし、様子だけでも見ていこうと遠慮なくドアノブを回した。


「ブラ~ック、寝てるの…って、ちょ、ブラック?!」


部屋に入るなり目に入っきたのは生徒がぐったりと倒れている光景。


流石の僕でもこれは心臓に悪い。


慌てて駆け寄って抱き起こすと、触れた身体は燃えるように熱かった。


額や首筋に手を当てて熱を測ると、分かってはいたが帰らせた時よりも遥かに熱が上がっており、思わず顔を顰める。


抱き起こした揺れを感じてか、ゆっくりだが長い睫毛が上下した。


「ブラック!」


「…?…すまない、…せんせ、」


「すまない、遅くなって、どこ辛い?」


「…っ、きもち、わるくて」


「トイレ行く?抱っこするよ」


「んぅ”…」




大方気分が悪くてトイレまで行こうとしたが、立ち上がって力尽きたという所だろう。


これは歩くのは無理そうだと判断し、素早く首にブラックの腕を回して抱き上げた。


持って来ていたペットボトルの水とタオルを拝借する。


浮遊感が余計に吐き気を促すのか、小さく唸り声をあげているのが辛そうで心配が募る。


「ブラック、ほら、もう出していいよ」


「はぁ…は…っ、」


「ぅ”~ッ…」


便座の前に下ろして背中をさするが、余りの高熱で身体に力が入らないのか、便座にもたれかかってぐったりしている。


顔色は真っ青だし、きっと気分は悪いはずなのに吐けなくてもどかしいのだろう。


涙がブラックの頬を伝ってぽたぽたの便器の中に落ちる。


「はぁッ、吐きたい……気持ち悪い…」


「辛いね…」


昔からクールで、自分の事よりも新しい武器の開発や研究の方が優先だった。


いつでも熱が出てもどうにかなるだろう、泣いていてもバレないだろうという思考で稽古で痛い思いをしても泣かなかったブラックが涙を流すほど苦しんでいるいるなんて。


僕はこの事実に少なからず動揺していた。


「指入れる?」


「っ、ん、」


苦しんでいる姿が余りにも可哀想で見ていられなくなって、指を入れて吐くのを手伝おうと提案した。


すぐにコクコクと頷いたので余程切羽詰まっているのだろう。


「噛んでもいいからね。…せーの」


「~ぉぇ”ッ…!」


喉奥を押すと反射で嘔吐くが、肝心の胃の中身が上がって来ない。


もう少し力が入れば勢いで出てくるかもしれないが。


「お”、げ”ッぇ”ッッ…」


「よ~しよし、しんどいね…」


見ていられられないぐらいぐったりしているブラックに心配が募る。


出ないのにこれ以上吐かせようと指を突っ込むのは余計に苦しめるだけだと判断して、大きく背中と胃の辺りをさすってやる。


「ね、ブラック、ベッド戻ろ?身体冷えちゃうよ。気分悪いの治るまで背中さすっててあげるから。」


「…は、はぁ、んぅ……」


息切れの合間にかろうじで返事したのを聞き逃さず、すぐに抱き上げて来た道を戻った。


あっという間に寝室について、丁寧にベッドの上に寝かしてやる。


「すまないせんッ…」


「ん?どうしたの?」


「気持ち悪くて…寝れな…っ」


「よしよし、大丈夫だよ、身体起こす?支えたげる。」


ふーふーと忙しない呼吸に合わせてブラックの肩が上下する。


座位を保つ程の体力も残っていないのに、吐き気は依然として残っているようだ。


「ふ、ぅ、はぁ、はー…っ」


「辛いねぇ…」


これはスクールの保健室に行って、点滴で吐き気止めを入れた方が少しはマシになるだろう。


そう思い、ブラックに話しかけようとした瞬間、ごぽっと排水溝が詰まるような音が響く。


パッと目を向けると手を口元に当てて今にも戻しそうなブラックの姿。


一際大きく背中を波打たせた瞬間、口元を覆った指の隙間から吐瀉物が溢れ出す。


それが落ちて布団汚す直前、間一髪でゴミ爆わ抱え込ませた。


「…う”ぇッ…お”ッぇ..」


「お~、出たじゃん良かったね。スッキリするまで吐きな。」


「ぉ”、っえ”ッッ…はっ、ふッ…」


さっきまでのは何だったんだと思う程、ブラックは息付く間もなく第二波、第三波と嘔気の波が押し寄せ、胃の中身をあげている。


「はぁっ、ぅ”、ぇ”ッッ…」


「しんどいね…」


部屋にはブラックの苦しそうな嘔吐き声と、吐瀉物がゴミ箱に叩きつけられる音が響く。


顔が涙でべしょべしょになりながら止めどなく胃の中身を戻すブラックが可哀想で見てられない。


無意識に背中をさする手に力が籠る。


一番辛いのはブラックのはずなのに、変わってやれたらいいのにと心配が募る一方だ。


「はっ…ふッ、はぁっ」


「よしよし、ちょっと落ち着いてきた?ゆ~っくり息整えよ。はい、深呼吸~」


「すぅ、はー、はぁっ、はーっ…」


「ん、上手上手」


時間的には、5分程度しか経っていなかったが体感ではもっと長く感じた。


心配で気が狂ってしまうかと思ったが、何とか吐き気が落ち着いてきたようで、こちらに合わせて深呼吸が出来るようになってきたので一安心だ。


「は、…はぁ…、はっ…」


「良かった、落ち着いたね。すぐすまないスクールに運ぶからね。」


「病院よりすまないスクールの方が設備は整ってるの思うし」


もう返事をする気力もないのかもしれない。


こんなに高熱で、嘔吐までして。


早く楽にしてやらないとと、すぐにブラックを抱き上げ、すまないスクールへと向かった。










「うわ、39度8分だってブラック。」


「一々言わないでもらえます……?」


保健室に飛び込むと幸い誰もいなかったので安心した。


すぐに点滴をし、余りにも身体が熱いため体温計を差し込み、熱を測ると40度手前まで熱が上がっていて流石の僕も驚いた。


「点滴でだいぶ落ち着いてくると思うけど、無理は禁物だよ。」


「最低でも3日は休むように!」


「はい…」


まだ子供だというのに、自分の体調は気にせず研究やら依頼やら。


ここ最近は特に忙しかったため、まともな休みが取れていなかった。


ま、それは僕も例外ではないんだけどね。


今回は溜め込みすぎた疲れが一気に爆発したんだろう。


頑張り屋なのはいい事なんだけどね。


「あ~、僕もブラックと一緒に3日間休めないかな~…」


「他の生徒に迷惑がかかるのでやめてください…」


そう言ったブラックは呆れていたようだが、ちょっぴり嬉しそうだった。












end

この作品はいかがでしたか?

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コメント

3

ユーザー

うわー!!!!!めちゃくちゃ良い、、、! 珍しく体調崩してるブラック良き良き良き!!! 先生も献身的に介護してていいな、、、!! 先生とブラックの絡みめちゃくちゃ好きだわ、、、最高でした! ブラックは先生のこと惚れちゃうわこんなん、、、

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