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ここ一ヶ月、ユーニが目を見てくれない。前まではそれだけだったものの、最近は話しかけようとしても、姿を見た途端逃げられるようになってしまった。機嫌を損ねるような事をした記憶はないし、何かあったという報告もない。前は彼女の方から目を見てくることが毎日のようにあったのに、突然これだ。何かあったのだろうか。
そんなことを考えながら廊下の角を曲がると、誰かと鉢合わせる。咄嗟に謝ろうと顔を上げると、先ほどまで考えていた彼女が驚いた顔をして立っている。
「ユーニか。すまな」
ハッとした顔をし、言い終わらない内に来た道を走り去っていく。まただ。
こんなにも避けられるなんて無意識のうちに何かしただろうか。もし何かしてしまっていたなら謝りたい。以前のように一緒に時間を潰す関係に戻りたいと思っている。会うたびに避けられる事がこれ以上続くと流石に傷つく。もう無理矢理でも捕まえて、何で避けるのかを聞いた方がいい。
よし、そうと決まれば早速捕まえに行く。多分彼女は自室に行こうとしていた。近道のここを通ろうをしたら、運悪く私に鉢合わせてしまったという訳だ。それで遠くはなるが別の道を通って戻ろうとしているのだろう。先回りして曲がり角のところで待ち伏せして捕まえる。この計画でいこう。完全に行先が私室であると思っているがそうじゃなかった場合は……まあその時はその時だ。
⋯⋯⋯⋯⋯
曲がり角から覗くと静かに歩いてくる彼女を見つける。やはり私の推理は正解だったみたいだ。小さくガッツポーズをすると、行き交うコンビクトや職員から怪訝な目を向けられる。推理が当たったときの喜びはあなた達には分からないと思う。
そう思っていると彼女が近くまで歩いて来ている。もう20m……10m…3m…今だっ!
「捕まえた!」
「っ?!」
驚き後ずさろうとする彼女の頬を手で包み強制的に視線を合わせる。
「なぜ逃げるんだ?」
顔を覗き込むようにして言うと固まってしまう。圧が強すぎただろうか。そう思い謝ろうとすると消え入りそうな声がぽつりと聞こえる。
「…やめて、くれ……」
顔を赤く染め、目を泳がせながら小さな声で言う。何でか頬に触れていてはダメな気がしてぱっと手を離す。
「えっ、あ、いや、私も悪かった。圧をかけすぎた。すまない」
彼女は俯き髪の間から見える耳が赤い。それにつられて何故か自分も赤面してしまう。
「引き留めてしまってすまない」
「……いや」
彼女は小さく呟き歩き出す。
彼女が去っていくのを見届け、先ほどから激しく鼓動を打つ心臓を落ち着かせようと大きく深呼吸をする。何故彼女があんな反応をしたのかよくわからないし、何故自分も彼女につられたのかもわからない。まあ……その内分かるだろう。今はあまり重要な事ではない。
……そういえば、避けられる理由を聞くのを忘れていたな。次に会ったときに聞くことにしよう。