色んな意味でパラオがつおいだけの話
このお話では国として独立=成人という設定になっております。
パラオくんがショタっぽいけどショタじゃないし純粋じゃないので綺麗で可愛いパラオが好きな方は閲覧注意です、別に悪いことしでかしてるとかじゃないですけどね。
麗らかな小鳥の声が聞こえる晴天の日
早めのお昼ご飯を済ませ、大して散らかってもいない部屋を片付ける
こうでもしていないと、ソワソワして落ち着かないのだ
何もやることが無くなった時、玄関チャイムが鳴る
なんて丁度いいタイミング
はーいと返事をして出迎えに向かう
この時間にやってくるのは、例外を除いてただ一人だ
「日本ー!来たよー!」
よかった。今回は例外じゃなかった
扉を開けると、元気な声が僕の名を呼ぶ
彼を印象づける海と月の瞳が爛々とこちらを見上げていた
「いらっしゃい、パラオ」
彼は父の弟子で、僕の親友だ。もっとも、父は彼のことを息子同然だと言っていたし、僕も弟のようなものだと思っているのだが
そんな彼との交流は深く、こうして週末に遊びに来てくれるのだ。僕にとってはそれが唯一の癒しになっている
「はいこれ、お土産」
恭しく手渡されたのは、透明な箱に収められた色とりどりのクッキー
「いつもありがとうございます」
「僕があげたくて持ってきてるだけだから」
日本の幸せそうな顔が見れるなら幾らでも持ってくるよ!と青い天使がはにかむ
くっ、なんていい子なんだ…父の教育の賜物なのだろう。あの人に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい
外にずっと居させる訳にはいかないので、溢れる感情を抑えて居間へと連れていった
「お茶でよかった?」
「うん、ありがとう」
パラオが持ってきてくれたクッキーを皿に移してテーブルに置き、淹れておいた玉露茶を湯呑みに注ぐ
向かい合わせに座り、2人で手を合わせて「いただきます」と一礼した
色んな種類の香りがするカラフルなクッキーはそれぞれ味が違うらしい
どれにしようか迷ったが、まずはプレーンからだろうと小麦色のものを一口含んだ
「ん、美味しいですねこれ!」
クッキーの塩味が玉露の甘みとよく合う。甘すぎず軽やかな食感なためいくらでも食べられそうだ
「よかった、実はこれ僕が作ったんだ!」
「そうなんですか!お菓子作りもできるなんて凄いなあ」
「へへっ、日本に喜んでもらえたから頑張った甲斐があるよ」
褒められたことを心底喜ぶ得意げな表情
僕のために頑張ってくれたとか嬉しすぎるな…僕はなんて幸せ者なんだろう
その姿を想像して心が浄化されるのを感じる
残業続きで疲労漬けの体も、一瞬で回復するんだからすごいよなぁ
ジーンと打たれていると、ふと今朝の出来事を思い出した
「そういえば、今日父さんは用事があって夜まで帰ってこれないって」
「そっか…僕夕方には帰らなきゃだから会えないなぁ」
残念、としょげた顔をする
後で父さんに早めに帰ってくるよう連絡しておこう
「ふふ、パラオは父さんのこと大好きだね」
「うん!僕はナイチも日本も大好きだよ!!」
ナイチと日本だと好きの種類が違うけどねと付け足すパラオ
憧れと親友だったらそりゃ違うよな
「ありがとう。僕も父さんもパラオのこと大好きだよ」
「そっか〜えへへ」
ポワポワした空気に包まれる室内
日々の嫌なことを全て忘れ、ただ幸せなティータイムを楽しんだ
「ご馳走様でした」
すっかり空になったお皿
適度に満たされたお腹は幸福の信号を送っている
夕方までは、あと3、4時間と言ったところ
皿を片付けるついでに茶葉とお湯を変えながら、パラオに尋ねた
「今日は何をしますか?」
「うーん……そうだ、これ観ようよ!」
バッグから取り出されたのは、映画のブルーレイディスク
パッケージを見たところ、恋愛映画のようだ
パラオが恋愛だなんて、失礼だけど新鮮な組み合わせだな
「台湾がお勧めしてくれたのを借りたんだ」
「台湾さんがですか、それは期待しちゃいますね」
たしか、台湾さんはこういうのに詳しかったはず
そんな人のお勧めならハズレということは無いだろう
淹れなおしたお茶を2人分サイドテーブルに置く
ディスクをセットし、ソファに隣合わせで座った
数時間後、主題歌が流れ話は本当のラストへと向かう
長めの映画にも関わらず、あっという間に最後まで来てしまった
さすがは台湾さんだなセンスがいい
内容としては所謂ラブコメディ系で、笑える所が多いながらも時々訪れるシリアスなシーンが作品の深みを出している
ただの友達同士だった2人が愛し合うようになるまでの心情描写がかなり細かくて自然に受け入れられた点も良かった
これは推したくなるのも分かるな
エンドロールが終わる頃、右腕に重量がかかるのを感じる
長い映画だったし、眠たくなっちゃったのかな?
完全に眠ってしまう前に喉を潤そうと湯呑みを手に取った時、やけに静かなパラオが沈黙を破った
「ねえ日本」
「んーなんですか?」
「日本って恋人いるの?」
あまりに唐突な質問に気が動転する
お茶を飲む前でよかった。危うく醜態を晒すところだった
冷静を装って苦笑いで答える
「はは、いるわけないじゃないですか〜こんなのを好きになる人なんて…」
平凡受けなんて所詮フィクションだしな
なんて思っていると、元気なく顔が俯けられる
何か気に食わないことでも言ったか?
「いい加減、分かってよ」
哀しみと怒りに震えた、小さな声
すぐに消えてしまったそれに、僕は気づくことが出来なかった
刹那、パラオの纏うオーラが変わる
真正面から、細い腕が僕を縛り付けるように腕ごとぎゅっと抱きしめた
「そっか…日本は僕にどう思われてるか、知らないんだね」
目の座ったパラオの言葉に得体の知れない恐怖を感じる
「僕、心配なんだよ?日本ってばこんなに可愛いのに無防備なんだから」
音もなくするりと入り込んだ手がゆっくりとシャツ越しの背を這う
「ぱ、パラオ?なにして…んっ!」
焦らすように布をすべる細い指
触り方があまりにも艶めかしくて思わず声が漏れてしまった
「ねえ日本、僕が”大人”だってこと、わかってる?」
すっと細められた大きな目が真っ直ぐ僕を捉える
まさに、蛇に睨まれた蛙の気分だ
幼さが消えた彼が、知らない青年に見えた
「日本は僕のこと”弟みたいな可愛い子供”としてしか見てないだろうね。いくら言い寄られても、なんとも思ってないんだから」
身じろごうとしても全く動かない体。あの視線に神経麻痺したとでもいうのか
この小さな体のどこに強い力を隠し持っていたのだろう
脳内で燻る羞恥が感覚をおかしくさせる
「僕が子供じゃないってことも、自分の置かれてる立場も、僕の気持ちも…嘘だと思っていたいのならそれでもいい。けど…」
グッと抱き寄せられ、炎を宿した金と青の瞳が視界を占領する
真っ赤な舌が獲物を前にした獣のように唇をなぞった
「いつまでも逃げるつもりなら…無理矢理ペロっと食べちゃうからね♡」
覚悟しておいて、と色気を孕む低音が鼓膜を震わす
聞いたこともないパラオの声に背筋がゾクゾクするのを感じた
熱いのか寒いのか分からない僕の体は彼に壊されてしまったのだろうか
首元で鳴ったリップ音が僕の頭に強く存在を打ち込んだ
少し後から、窓越しに聞こえた控えめな夕方のチャイム
「あ、もうこんな時間」
魔法が解けたかのように、彼を包むオーラが変化し、”いつものパラオ”に戻る
すっと腕の力が抜け僕を離すと、荷物をまとめて大きく手を振った
「じゃあね日本!また明日!」
元気な足取りでパタパタと帰っていくパラオ
空想の宇宙に取り残されている僕は立ち上がることも忘れ「また明日…」と力無く手を振った
遠くでパタンと閉じる扉
その音で急激に醒める頭
首筋に残る感覚が、先程の情景を思い出させた
「あああああっ!!!なにあれなにあれ!!!」
僕のパラオがあんなにもかっこよかったなんて!!!
獣とも思える獰猛な雄み、あれは本当にパラオなのか?
処理落ちした脳でとめどなく流れ込む思考が渦を巻く
「あんなの同人誌でしか見たことないよ…」
今の僕は、いつか見た二次元の人間のようになっているのだろう
「ってか明日って言った!?どんな顔して会えばいいんだ…」
もう何も考えられないや
せめてもの抵抗で現実から距離をとるため、隠しきれない茹だった顔を覆った
その後、帰ってきた日帝に「どうした、顔が赤いぞ」と指摘され、「なんでもありません!!」と脱兎のごとく自分の部屋へ走り去る日本
甘い香りと熱気のこもる居間にはただ、何も知らない日帝だけが残された
コメント
5件
にってーさん…熱気のこもった部屋でキズカナイカナ…
うわーん 😭😭😭 🇵🇼 × 🇯🇵 だ ~ !!!🥹🫶🏻️💓 まじで すっっくねー カプ 作品の中で いっっちばん すきだわ !!! 💗💕💖💞💝💘💓💞❤️ 心臓何個あっても 足りない .. 😭✨ しんどいって ~ 😭😭😭