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青年は光る石を海峡に放り投げ、コーヒーの最後の一口を飲み干し、紙コップを近くのゴミ箱に捨てた。
「今朝の俺は、どちらかというと不幸者の部類に入ると思ってた」と青年は言った「今は、かえってそれでよかったと思う」
「どうして?」と旅人は言った。
「偶然君と会えたからさ」と青年は言った。
「本当に偶然だと思うかい」と旅人は言った。
「まさか、意図的に俺の前に現れたっていうのか?」と青年は言った。
「もちろん、偶然君と会った、」と旅人は言った「と僕は思っている。でもそれは、あくまで僕にとっての話で、君にとっての話だ」
「なら、誰にとっては偶然じゃないんだ?」と青年は言った。
旅人は、夕陽に染まるマルマラ海を眺めている。
「それを見つけるために、水平線の向こうに向かって歩いてる」
かもめの鳴き声が、遠くから風に乗って流れてくる。
「詩人だね」と青年が言った。
「目指してる」と旅人は答えた。