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次第に空は暗くなった。天上は、手織り絨毯の濃紺の糸で編んだような色をしている。一見、黒と見間違うほどの色だ。
一番星を見つけた。欠けた月が光っている。
「僕らの地球だって、この大空から見たらちっぽけなものだよ」と旅人は言った。
「そのあたりは、俺の専門でもある」と青年は言った「物理学では、宇宙は小さな一つの質量から生まれて、それが爆発して複雑になってったっていう説がある。大体にして、科学者の言うことは五十年も経つとだいぶ変わるから、これが真実だって言い切るつもりはないけどね。宇宙はあまりに広くて唐突でかけ離れてみえるけど、あらゆること、すごいことも普通のことも、例えば財布を逆さまにしてやっと街角のドネルケバブ一個を買うような瞬間からも、宇宙が成り立っているのは事実だと思う」