さっき火責めした吉川緑の姿を探すと、横浜デビルのメンバーたちによってすでに消火されていた。すでに炭になりかけの虫の息の状態だったが。 横たわる緑を見下ろして、内藤慎司が語りかける。
「だから言っただろう? おまえらのケンカの相手がおれたちだったのはラッキーだって。相手がうちの総長だったら全員炭にされてるところだって。人の忠告は素直に聞くもんだ。せっかくおまえらのために忠告してやったのに……」
緑はひたすら涙を流すだけで、何も答えなかった。
「徹也、おまえすげえよ。総長を言い聞かせるなんて」
やはり四天王の一人の尾藤玲におだてられても、徹也は厳しい顔を崩さない。
「総長は血も涙もない悪魔だけど話の分かる悪魔だからな」
褒められているのだろうか? まあ、褒められているとしておこう。
「それにしても、どういう子育てをしたらこんな恐ろしい悪魔に育つんだ? 親の顔を見てみたいもんだ」
四天王の残り一人の安藤重彦がしみじみとそんなことを言い出した。
「親の顔が見たい? 余のパパならそこにいるぞ」
「えっ」
四天王の顔に緊張が走ったが、そこにいたのはいかにも人のよさそうな中年男。
「音露の父親です。音露を助けに駆けつけてきてくれたんですか。友達がいないと思っていた音露にあなたたちのような信頼できる友達がいると分かってうれしいです」
「友達? おれたちもかつて総長に半殺しにされて、火責めされた身ですけど。友達というより奴隷という方が近いかも……」
四天王は戸惑いの表情を浮かべたままひそひそ話を始めた。
「全然強そうに見えない」
「馬鹿。そう思って総長に挑んだやつはみんな地獄に落ちたぜ」
「悪魔の親だ。悪魔に決まってる。聞いてみろ。百人は殺してるはずだ」
「おれもそう思う。間違いなく総長以上の極悪人だろうよ。総長だってこれだけ暴れ回って一度も警察に捕まったことないが、父親も罪を全部手下に押しつけてきっと一つの前科もついてないんじゃないか」
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