徹也が意を決してパパに尋ねた。 「お父さん、失礼ですけど刑務所に行かれたことは?」
「な、ないよ」
「前科くらいありますよね」
「いや、一つも……」
虫も殺さないパパらしい回答だと思うけど、なぜか四天王の残りの三人は震え上がった。
「やっぱり殺したいだけ殺して罪は全部手下に?」
「いや、死体を見つからないように隠して、警察が殺人事件だと気づいてない可能性もある。何人殺したって死体がなければただの行方不明事件だ」
「総長を怒らせたら、そんなふうにおれたちも行方不明にされるわけだな……」
その日からパパは悪魔である余よりも極悪非道な存在だと見なされ、横浜デビルのメンバーから魔王と呼ばれるようになった。余が魔王なのに……
まあ、勝手にパパを恐れてくれるなら、それならそれでいいかと放置することにした。
結局、首都圏連合も横浜デビルに吸収された。元首都圏連合のメンバーは次の北関東遠征に活用するという話だった。
四天王はすぐに北関東を攻めようと主張したが、東京遠征と並行して進められていた湘南エリア攻略に苦戦中ということで主力をそちらに投入することになった。
湘南遠征のリーダーは空野真琴。事務能力は高いが、どうやら指揮官としての適性はあまり高くなかったようだ。
と思ったが、主力が投入されたあとも戦況は好転しなかった。味方がだらしないというより、敵が強力なだけだった。
ということで、ついに余に出動要請が来た。
「くれぐれもやりすぎないでくださいね」
「任せておけ。殺さなければいいんだろ」
なぜか徹也の顔から不安の色が消えることはなかった。