中也愛され
中也女体化
転生
太中/ 敦中/ 芥中
※今回要素無
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病室の窓から柔らかな光が差し込み、中也の鮮やかな色の髪を、きらきらと照らしている。
その傍らで、美しい赤髪の看護師、尾崎紅葉が涙ぐみながら、中也の柔らかな髪に、優しく触れている。
「本当に…本当に心配したのじゃぞ……」
何時も凛と力強い声は、ほんの少しだけ震えている。
「私も驚いたよ。……あァ、そうだ、傷跡は残らないようにしたから、安心してくれたまえ。折角綺麗な肌なんだ。もう少し大切にするべきだと、私は思うがね。」
白衣を纏った医師、森鴎外が優しい声音でそう言う。
目線こそ中也の方に向いているが、彼の右手は金髪の少女、エリスの頭を撫でている。
「そうよ!!折角可愛いんだから!!顔も傷だらけにしちゃ駄目よ!!リンタロウが居なければ傷が残ってたのかもしれないのよ!!」
エリスは森の手を軽く叩きながら中也の元に寄る。
そして
「中也は可愛いんだから!!もっと自分を大切に!!」
と言いながら頬を膨らませて、如何にも「怒っている」という表情をしてみせる。
そんなエリスの様子に 中也は困ったように眉尻を下げ、
「いえ、俺なんかよりもエリス嬢の方が可愛らしいですよ」
と笑った。
そこに間髪入れずに
「聞き捨てならぬ台詞を言うでない!!お主は愛いのじゃ!!」
と紅葉が言う。
その語気は何時もより強い。先程の震えた声は何処へ行ったのやら。
「はは…ありがとうございます」
中也は紅葉の気迫に押され、目線を逸らしながら礼を言った。
まァ、本人は「自分が可愛い」だなんて自覚は全くないのだが。
そこで、紅葉は何を思ったのか、森とエリスに向かって「……少し席を外して貰えぬか」と、言った。
森は一瞬驚いたものの、紅葉の意図を直ぐに理解したようで、何やら楽しそうな顔をしながら、エリスの小さな手を引き、
「異常はなさそうだし、良しとしようか。さ、エリスちゃん、少し外に行こう」と病室を後にした。
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2人が去り、病室には紅葉と中也の2人だけとなった。
紅葉は、中也の寝台の横に置いてある、少し小さな椅子にゆっくりと腰掛けた。
そして、中也の白く細い手を両手で優しく包み込み、
「中也や、お主は何故、以前と同じように力が使えぬか、分かるかえ?」
と問うた。
中也は目を見開き、
「何故知っているんですか。
俺が上手く力を制御できていないことを。」
と言った。
その声は、普段の彼女からは想像できないほど震えていて、小さく、弱々しいものだった。
紅葉は
「……知っているに決まっておるだろう。前の世から、お主の近くに居たのだからのう。」
と、言い、中也を見つめる目を少し細め、こう続ける。
「お主の体は前の世とは随分と変わった。性が変わるだけでも、かなりの差があるじゃろう。」
中也は口元をきゅっと結び、複雑な気持ちで頷いた。
実際、紅葉の言った言葉は合っている。
中也は前世の時ほど、己の異能を制御しきれていない。
そして、其の原因は身体の変化であった。
筋肉の付き方、手足の長さ、力の入り方。
男として22年間生きてきた中也にとって、この変化は大きなものだった。
前世の時も、高身長と呼べるような身長ではなかったが、やっぱり、今よりかは幾分か背丈があり、その分力も強かった。
そしてその変化は、異能にも及んだ。
弱い器は、大きな力に耐えきれなかった。
上手く制御しきれず、無意識の内に己の体にも異能が使用されてしまっていた。
無意識の内に内臓を傷付け、己を傷付けている。
短時間の使用でも体力が削られる。
本人は「厳しい鍛錬で鍛え上げたから、屹度力も回復したはずだ」と言っていたが、そうではなかった。
寧ろ、前世とは比べ物にならない程弱くなっていると言っても過言ではない。
紅葉は黙りこくってしまった中也を見ながら、
「鴎外殿曰く、お主の性が変化したのは『前世で魂ごと傷付き、使い物にならなくなってしまったからだろう』と。
『傷付いた魂と器は、転生時に上手く再生されず、弱体化したまま世に落とされたのかもしれない』とも言っておった。
お主は、昔から己を顧みずに力を使う癖があった。…… 汚濁もそうじゃな 。
あれは身体に負担がかかり過ぎる。
それを何度もするとなれば、そうなって当然じゃ。 」
と更に続けた。
中也はまたもや返す言葉もなかった。
汚濁が身体に及ぼす悪影響は酷いものだったし、無理をしていたことも本当であった。
自業自得と言えばそうかもしれない。
が、当時の中也は、そうするしかなかったのだ。
「…………俺は、ずっと女のままなんでしょうか。これから先、戻れることはないんでしょうか」
中也がぽつりと言う。ずっと思っていたことだった。
少しの間があいて、紅葉は一言、「戻らぬ」と言った。
中也は形の整った下唇を噛み、紅葉から目を逸らして俯いた。
瞳には涙が滲んでいる。
目元は中也の柔らかな髪に隠れて、紅葉からは見えなかった。
それでも、感の鋭い紅葉に分かっていた。
だから、こう続けた。
「だが、強くはなれる」
と。
紅葉の力強く、それでいて優しい声が響いた。
中也が反射的に顔を上げ、紅葉を見る。
紅葉は紅を塗った唇の端をあげ、
「勿論、前と全く同じとはいかぬ。だが、強くなれる方法は星ほどもある。
時に“女”は武器にもなるのじゃぞ。」
と笑った。
その笑顔はとても美しかった。
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1度終了です!!
2,300字越えです。ここまでお疲れ様でした。
前回からかなり間が空いてしまい、申し訳ないです😞ྀི
丁度受験期でして……。
ちまちまと書いていたのですが、やっぱり時間が足りないですね。
文章の書き方も変えてしまったので、前回との繋ぎ目や、文章がおかしな点がいくつもあるかもしれません。
ご容赦ください。
間が空いても待っていてくださった皆様、そして今回の話をきっかけに見つけてくださった皆様、ありがとうございます。
次回も遅くなるかもしれませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。
では、今回はここまで。
次のお話でお会いしましょう🕊 ͗ ͗〰︎︎
コメント
2件
受験お疲れ様です! ありちゃんの作品がとても勉強する糧になります!いつもありがとう(*´ `*)