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月曜日の朝
オフィスの空気は、いつもと変わらない喧騒に包まれていた。
けれど、私と瞬くんが並んでフロアに足を踏み入れた瞬間、その場にいた全員の動きが止まった。
「……おはようございます、皆さん」
私の左手薬指には、シンプルながらも重厚な輝きを放つプラチナの指輪。
そして、私の隣に立つ彼の指にも、全く同じ意匠のリングが光っていた。
「さ、佐藤課長!?その指輪……まさか……」
「…ええ。私、先週末に籍を入れました。……高瀬凛になりましたので、以後、公的な書類の訂正をお願いしますね」
静まり返るフロア。
数秒の沈黙の後、割れんばかりのどよめきが起きた。
「ええーっ!?」
「高瀬くんと!?」
「あの鉄の女が……」
驚愕と祝福が入り混じる中
瞬さんは私の肩を抱き寄せ、これ以上ないほどの「ドヤ顔」で周囲を見渡した。
「……というわけですので。皆さん、これからは俺の妻にあまり変なこと吹き込まないでくださいね。前の噂みたいに」
「ちょっと、瞬くん…公私混同がすぎるわよ」
私が赤くなって嗜めると、彼は耳元で、周りに聞こえないほどの低い声で囁いた。
「いいじゃないですか。……やっと、会社でも『俺のもの』だって見せつけられるようになったんだから」
退社後
二人で歩くいつもの帰り道。
かつては他人の目を気にし、影に隠れるように歩いていたこの道も、今は堂々と手を繋いで歩ける。
「……凛さん。幸せですか?」
「…え?ええ…怖いくらいに」
「……でも、もう逃げないわ。あなたが隣にいてくれる限り、私はずっと、私でいられる気がするから」
「……当たり前ですよ。……これから先、何十年、かかっても、凛さんを世界で一番幸せな女にしてみせますから。……覚悟しておいてくださいね」
「全く…大袈裟なんだから」
過去の傷跡は、もう完全に見えなくなった。
そこにあるのは、新しく刻まれた愛の証と
二人で紡いでいく果てしない未来だけ。
私たちは、沈みゆく夕日に向かって
一歩ずつ、しっかりと明日へと踏み出した。
おまる
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