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#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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「どうする? 轢いちゃう?」
「一慶さんが言うと冗談にしか聞こえないけど、駄目だからね」
怒ってるんだろうなってオーラはちょっと怖かったけど、ハムスター姿の一慶さんが先に車を降りて、仲人さんのもとへ行った。
「ハニーが驚いてるから、そこを退いてくれるか」
「……ブレスレットは貴方たちの心を守るための装置。逃げるために外したのなら、いますぐつけていただきます」
真っ赤な唇が、太陽の下、つやつやと輝いている。笑いもせず無表情で、それが逆に迫力がある。
「ブレスレットは、今の俺と流伽はしたら、ずっとブザーが鳴ると思うけどした方がいいの?」
けれどひるむことなく、ハムスター姿で仲人さんに意見を言う一慶さんが、今日は一段と格好良く感じた。
「俺たち、お見合いは辞めます。お見合い抜きで友達からスタートするから。その手続きに今度、伺います。それまで俺たちのこと、放っておいてください」
ハムスター姿でも、一慶さんの言葉はまっすぐで格好良くて、それだけで私は信じられた。
深く溜息を吐く仲人さんは、首を振りながら露骨に嫌そうな顔をして一慶さんを睨んでいる。
「流伽さんには貴方がハムスターに見えている以上、中途半端な形でお見合いを放棄することは法律上できません」
法律。法律。法律。
「法律って言うか、実験体みたい。沢山お金をかけて、お見合いセンターで子どもを作って増やしていけるように、箱の中に男女を入れてシェイクして、中身を開けると増えていますって」
「それ、なんか歌であったよね。ポケットにクッキーいれて、叩いて増やすってやつ」
あれは増えてるんじゃなくて、クッキーが割れてるだけじゃないのかな。
一慶さんと仲人さんが一触即発な瞬間に、水咲と一河が間に入ってくれた。
一慶さんは校長先生たちが、仲人さんは保健室の先生たちと消えていき、私は二人の間に挟まれる形で教室へ向かった。
一つだけ、水咲が教えてくれたんだけど、孔一くんは、……校則違反のために三日間の停学になったらしい。
彼ほどの人気者が停学。
しかも突き飛ばしたのは私なのに、私には何もお咎めがない。
水咲が、校則や罰則についてなにも言わないのは、変。いつもならここはもっとこうするべきとか、ここはおかしいとか、自分の気持ちを吐露してくれていた。
なのできっと孔一くんの結果は、……水咲側からの圧力なんじゃないかなって思った。
「三日後に登校してきたら、何もなかったように接してくれたらいいよ」
「……ごめんね、水咲」
「流伽の何が悪いの? 貴方が何か悪いことした?」
「話し合いではなく突き飛ばしました」
「それぐらい何? 私は一度もブレスレットのブザーが鳴ってないの。鳴りやまなかった流伽の心の辛さを分かってあげられない。ありがとう。お互い、それでいいの」
孔一くんはかわいそうだったが、私の本心も確かにそれだ。
突き飛ばしたことだけは謝りたいけど、彼の言った言葉だけは全部許せない。謝られても許せるか分からなかった。
「それで、流伽ちゃんはこれからどうするの」
心配している一河にまずは昨日のことをお礼を言うが、顔色は晴れない。
「そのあとのことを俺は心配してるんだよ」
「うん。お見合いをやめようかなって思ってる」
その言葉に、教室の他の生徒が聞いていないか二人はあたりを見渡した。
こちらを見ているクラスメイトはいなかったので、ホッとしつつ二人の顔は苦い。心から喜んでくれてはいないのが伺える。
「私ね、子どもっぽいことを言うかもしれないけどやっぱ恋愛がしたいんだ」
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