テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
目が覚めた時。
たくとは見慣れない天井を見ていた。
いや。
正確には見慣れている。
昨夜泊まったホテルの部屋だ。
そして隣には。
りゅうき。
静かな寝息を立てている。
たくとは目を閉じた。
「終わった……」
思わず呟く。
昨夜。
酒を飲みすぎた。
昔の話になった。
高校時代の話。
初恋の話。
後悔の話。
そして。
言ってしまった。
「俺、今でも好きだよ。」
十年間隠していた言葉を。
りゅうきは驚いた顔をしていた。
それから何を話したのか。
断片的にしか覚えていない。
ただ。
りゅうきが泣きそうな顔で、
「なんで今言うんですか」
と言ったことだけは覚えていた。
たくとは頭を抱えた。
終わった。
友達としての関係も。
全部。
すると。
「ん……」
隣が動く。
りゅうきが目を開けた。
数秒。
沈黙。
そして。
「おはようございます。」
普通だった。
あまりにも。
普通だった。
「……おはよう。」
「頭痛い。」
「だろうな。」
「飲みすぎましたね。」
「そうだな。」
りゅうきは首を傾げた。
「昨日何話しましたっけ?」
たくとの心臓が止まりかけた。
「……覚えてないのか?」
「全然。」
嘘だろ。
嘘だと言ってくれ。
「先輩覚えてます?」
「まぁ。」
「何か変なこと言ってませんでした?」
変なことどころではない。
人生最大級の告白をした。
だが。
りゅうきは本当に覚えていないように見える。
その日から。
たくとは地獄だった。
会うたびに思い出す。
昨夜のことを。
自分だけが。
りゅうきは今まで通り。
「先輩、ご飯行きましょう!!」
「先輩、映画観ます?」
「先輩、それ似合いますね✨️」
何も知らない顔をする。
だから。
たくとも何も言えなかった。
全部。
酒のせいにした。
そうして数週間。
ある夜。
二人で食事をしていた時。
りゅうきが突然言った。
「先輩。」
「ん?」
「もしですよ。」
「うん。」
「もし昔好きだった人が今さら好きだって言ってきたらどうします?」
たくとは固まる。
「……なんだその質問。」
「気になっただけ。」
「ケースによる。」
「じゃあ。」
りゅうきは笑った。
「十年以上好きだったって言われたら?」
心臓が嫌な音を立てる。
それ。
この前自分が言った言葉とほとんど同じだった。
「りゅうき。」
「はい。」
「本当に覚えてないのか?」
りゅうきは数秒黙った。
そして。
少しだけ笑う。
高校生の頃と同じ。
いたずらが成功した時の顔。
「覚えてたらどうします?」
たくとの呼吸が止まる。
「……お前。」
「かまかけてました。」
「最っ低。」
「ごめんなさい、」
全然反省していない顔だった。
そして。
りゅうきは少しだけ真面目な顔になる。
「でも。」
「……。」
「確認したかったんです。」
「何を。」
「酒の勢いじゃなくて。」
静かな声。
「今も本当に好きなのか。」
たくとは答えられなかった。
十年。
十年以上。
好きだった。
そして今も。
変わらず。
目の前の人が好きだった。
その事実だけは。
もう隠しようがなかった。
りゅうきはそんなたくとを見て、
少し困ったように笑った。
「先輩。」
「ん?」
「俺、まだ返事してないですよね。」
その言葉に。
たくとの心臓がまた大きく鳴った。
まるで。
十年前の恋が、ようやく続きを始めようとしてるみたいに。
55
コメント
1件
第4話読みました! 酒の勢いで告白したら、相手は酔って覚えてないふりしてたってオチ、ずるすぎて最高でした(笑)「確認したかったんです」「今も本当に好きなのか」——そこでじらすりゅうき、したたかでいい。ラストの「まだ返事してない」も続きが気になりすぎる…! 恋愛ものあんまり読まないんだけど、これは素直に刺さりました。続き楽しみにしてます🔥