テラーノベル
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車に乗り込んですぐ、私は運転席の修太郎さんに恐る恐る尋ねました。
「あ、あの……修太郎さん……。私たち、その……入籍したってこと……ですよね?」
つい今し方、市役所の守衛室で婚姻届の時間外受付をしていただきました。
受け付けてくださった守衛さんのお話によると、正式な確認は週明けになるものの、書類に不備がなければ今日が婚姻日になるらしいのです。
ということは……私と修太郎さんは、今日から夫婦になったということなんですよね?
でも……例えば戸籍謄本を取って確認したわけでも何でもないので、今一実感がわかなくて。
「はい。晴れて夫婦です」
なのに修太郎さんは始終にこやかで……運転席側にある私の右手に、指を絡めてギュッと握っていらしてルンルンのご様子です。
実は婚姻届には、結婚後、夫と妻どちらの姓を名乗るのかチェックを入れる欄がありました。
私は嫁ぐ身ですので、当然そこは「夫の姓」にチェックを付けさせて頂いたわけで。
「私、……その……、つ……、つ……」
塚田日織になったのですか?とおうかがいしたいのに、何だか照れてしまってその一言が言い出せません――。
もじもじしながら修太郎さんのお顔を見上げたら、「貴女は今日から塚田日織です」とにっこりされました。
ひゃーっ。つ……塚田日織っ。何だか照れてしまいますっ。
私は一人真っ赤になって、新しい名前を噛み締めました。
「――それでね、日織さん。実は結婚を機にひとつご提案なんですが……」
照れながら、片頬に自由な方の手――左手――を当ててひゃーひゃー言っていた私のほうへ、修太郎さんが右手を絡めたままグイッと身を乗り出していらっしゃいました。
「提案……?」
急に距離を削られてびっくりした私は、思わず声が裏返ってしまいました。
恥ずかしさに慌てて口を押さえると、すぐ目の前に迫る修太郎さんのお顔をドキドキしながら見つめました。
「はい。……これからはなるべく、お互いを呼び捨てで呼び合うようにしてみませんか? その方が、貴女との距離がグッと近くなる気がするんです。――如何でしょう? えっと……その、ひ、日織……?」
修太郎さんからの、多分に照れを含まれた突然のさん抜きに、私の心臓は今にも爆発してしまいそうですっ。
そういえば、前に一度だけ……気持ちの昂ぶられた彼から「日織っ」と切なく呼ばれて、ひどくときめいたのを覚えています。
なので、呼び捨てにされるのは全然構わないのです。
いえ、寧ろ大歓迎なくらいで。
でも、でも……。
お互いに、というと……私も、その……修太郎さんを……ゴニョゴニョ……。
そっ、それは……余りにもハードルが高すぎるのです……!
「あ、……あの、えっと……。……ぜ、善処……します……」
私は真っ赤になりながらも、何とかそうお答えしました。
「はい。無理をさせるつもりはありませんので……。でも……僕もやはり貴女から呼び捨てにされてみたいので……なるべく頑張っていただけると嬉しいです」
修太郎さんの、どこか意地悪な笑顔に、いつもとは違う意味でドキドキしてしまいました……。
コメント
2件
ぜひ呼んであげてー!
うわああああ入籍からの呼び捨て提案!!!😭💕💕 「日織…?」って照れながら言う修太郎さんの声聞こえた気がした…! 日織ちゃんが「塚田日織」って呼ばれて赤くなってるのも可愛すぎて悶えた〜〜〜🌸 お互い呼び捨てにするっていう距離感の縮め方、エモすぎて何度も反芻しちゃうよ…✨
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