テラーノベル
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「遠方からマザーシップ!」
誰かが叫んだ。
霧の向こう。 地平線そのものが動いたように見えた。
最初は山だと思った。 だが違う。
ゆっくりと、それは歩いていた。
城壁より高く、研究所の建物を積み重ねても届かないほど巨大な影。
それが動くたびに地響きがした。
先程まで慌ただしかった城壁の上がパタリと静かになっている。
「ハッシュ……なんなんだ……アレ」
アウリスの声は震えていた。
「わからねぇよ……」
シュバルツァーは照準器から目を離せなかった。
「あれに20ミリ榴弾が効くと思うか?」
「……無理だ。」
シュバルツァーは笑うことすらできない。
「ビルくらいデカいんだ、あれは戦車砲でも止まる気がしねぇ。」
ズン…
ズン…
マザーシップと言われたそれがこちらに向かってくる。
「終わった…」
誰かが震える声で呟く
途端に恐怖が伝染していく…
しかし…パタリと動かなくなっていた兵士達は、まるで決められた手順を思い出したように、一斉に持ち場へ散っていった
「急げ!レールガンを起動しろ!!」
「了解!1、2番砲塔!射撃準備!!」
『こちら1番砲塔、給弾機構トラブル!』
『2番砲塔問題なし!いつでも撃てます!』
基地全域に設置されたスピーカーからだろうか。指揮官の声が城壁中に響いた
「2番砲塔のみで迎撃する!」
『目標、マザーシップ!』
『コンデンサ充電率80%!』
『オールグリーン!』
『155ミリ、砲撃はじめ!』
「レールガン? ハッシュ……あいつら、今レールガンって言ったよな?」
アウリスがシュバルツァーに尋ねる
「あぁ……確かにそう聞こえた。」
シュバルツァーはいまだマザーシップを見つめている
「でも、レールガンなんてまだ試験運用段階じゃなかったか?」
「少なくとも、実戦配備なんて聞いたことはないね。」
シュバルツァーは苦笑しながら返す
二人が言葉を交わす間にもレールガンは号令を待っていた
『撃てぇ!!』
ドガァァァァン
雷鳴のような爆音に空気が震える。
刹那、マザーシップの右第一、第二歩行脚の付け根が撃ち抜かれる
マザーシップの肉片と赤黒い体液が飛び散る
「当たった。」
誰かが息を呑んだ
だが8本もある足の内2本失ってもなお、その巨体は前進を続けようとする。
ズン…
1歩
ズン…
2歩
しかし3歩目は訪れなかった
失われた脚側に巨体が大きく傾く
山が崩れるように、
要塞が崩れるように
ズゴォォォォォォン
大地を揺るがす轟音と共にマザーシップは倒れ込む
衝撃波が壁まで届く。
土煙が高く舞い上がる
誰も声を上げられない
静寂が訪れた。
その静寂を破ったのは一人の兵士だった
「……倒したのか?」
その震える一言をきっかけに城壁のあちこちから歓声が轟く
しかし…
それも長くは続かなかった
ブチッ
ブチッ
マザーシップの背面を破るようになにかが飛び出してきた
「ハッシュ…ありゃ、鳥か?」
アウリスが呟く
「鳥にしちゃぁでかくないか?」
「お前ら!早く門の中へ!マザーシップが死んだんだ!」
壁の上から誰かが叫んでいる
「なんだ?とりあえず門の中に行かないとヤバそうだな、アウリス」
シュバルツァーが言う
「そうだな」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……
後ろを見ると壁が迫り上がってきていた。
「材質まではわからないがかなり分厚い壁だ…きっとどんな物でも耐えるのだろうな」
アウリスが呟くが
「アウリス!20ミリはあとどれだけある!」
シュバルツァーが叫ぶ
「んっ、あぁ…20ミリ残弾200発!さっきので100発使ってる!」
『各員持ち場につけ!対空戦闘用意!』
壁の上のスピーカーから司令官の声が響いた
「なんだ?対空戦闘?」
壁を見上げてみるが、とてもじゃないが壁上を見ることができない
「高いな…これ」
アウリスは感嘆するように呟く
壁を見上げていた最中
バババババババババババ
壁の上の対空砲が火を噴いた
「耳が痛くなるな」
シュバルツァーは呟く
キィィィィィィッ
空に甲高い鳴き声が降ってきた
二人は反射的に空を見上げる
さっきは鳥に見えた
だが、よく見ると、それは鳥ではなかった。 羽毛は一切なく、骨格の一部は外へ露出している。 赤黒い肉が全身を覆い、薄い翼膜を広げながら夕暮れに染まる大空を滑空していた
どこかエイを思わせる輪郭をしていた。
しかし、その身体は赤黒い肉と露出した骨だけで形作られた、空を飛ぶ肉塊としか言いようのない存在であった
「なぁハッシュ、アレに熱源追尾ミサイルが通用すると思うか?」
アウリスが問いかけてきた
「弾が消えるだけだな、肉塊に戦闘機みたいな熱源があると思うか?」
シュバルツァーは少し茶化しながら言葉を返す
その間も対空砲は火を噴いていた
空を埋め尽くすほどのエイの群れは、さながらKAMIKAZEドローンのように対空砲めがけて突撃している。
爆発のような音が響いた
1基、また1基と対空砲の轟音が途絶えていく。
その代償と言わんばかりにエイの群れは着実に数を減らしていった。
「落とした奴には触れるなよ!溶かされるぞ!」
誰かが叫んでいる
新兵に向けてだろうか…
対空砲はまだ鳴り止まないが、空を埋め尽くしていたモノは徐々に数を減らしてゆき、そのほとんどが、もういなくなっていた。
「溶かされるとか言ってたな…」
シュバルツァーは呟く
「まぁ…俺達はとりあえず戻ることを考えればいいさ、ひとまず危機は去っただろうし」
アウリスは諭すように言ってくる
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コメント
1件
うわ、めっちゃ重厚な世界観……! マザーシップの倒れ方が「山が崩れるよう」って表現、本当に脳裏に映像が浮かんだよ。レールガンで足を撃ち抜くシーンは鳥肌立ったけど、倒した後のエイみたいな肉塊の群れがまた不気味で…「溶かされるぞ」って警告も含めて、この絶望感と希望の狭間の空気感がたまらない。ウーパールーパーさんの描く“闇”の表現、すごく丁寧で好きです。続き、静かに待ってるね🌙