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フェリックスはワトリーに向かって言った。

「ワトリー、ゲンさんの仕事の様子を見てきてくれないか?」

ワトリーは頷きながら答えた。「わかったのだ。」

その場にいたポテトが口を開く。「あー、先輩先に帰ってるし!ではボクも一回帰りますね。」

フェリックスは微笑んで返事をした。「はい、何かあれば知らせます。」

ポテトは元気よく「はい!」と答え、その場を後にした。


フェリックスはロイズの部屋に足を運び、慎重に質問を始めた。

「あなたがトイレに行った時に、何か変わった様子はありませんでしたか?」

ロイズは少し戸惑いながら答えた。「さぁ、トイレを使っただけだし。」

フェリックスはさらに踏み込んだ質問を投げかけた。「失礼ですが、大きい方ですか?」

ロイズは顔を赤らめながら返事をした。「え、ああ、う、うん、お腹が痛くて...」

フェリックスは冷静な表情で続けた。「隣の掃除用具入れの中にボウガンが隠されていました。

ゲンさんはそれがあなたが普段、演目で使うものだと言っています。」

ロイズは驚きの表情を浮かべ、「なんだって!ボウガンが!?」と声を上げた。

フェリックスは冷静に答えた。

「そして、あなたがトイレから急いで出てくるのをエマさんが見ています。

なぜ急いでいましたか?」

ロイズは声を荒げた。「仕方ないだろ、トイレに砂がなかったんだ!」

フェリックス「そうですか...」

フェリックスはロイズに向かって一歩踏み出し、静かにしかし鋭い口調で話し始めた。

「疑問なのは、なぜ1階のトイレが使用禁止になっていたのかです。

確認しましたが、特に故障している様子はありませんでした。

それはもしかしたら、あなたを2階に誘導するためだったかもしれません。

そして2階にはあなたのボウガンが隠されていた。私が犯猫なら、

ネコが来ない1階のトイレに隠すか、2階のトイレを使用中止にするでしょう。」

ロイズは一瞬戸惑いを見せ、眉をひそめた。「ということは、犯猫は僕に罪を着せようとした?」

フェリックスは頷き、その目は冷静さを保っていた。「その可能性は高いですね。」

ロイズは困惑した表情を浮かべ、視線を逸らした。「僕がどうして?」

フェリックスは少し間を置いてから、低い声で告げた。

「メス猫関係が派手だったようですが、誰かに恨まれていませんか?」

その言葉にロイズの顔色が変わり、動揺が見て取れた。「そ、それは...

でも恨まれるような事は何もしていないよ!」


フェリックスは静かに、壁に掛けられた団員たちの写真を見て

「あなたは亡くなったセリアさんの恋猫でしたね?」フェリックスは静かに尋ねた。

ロイズは短く答えた。「ああ、そうだ。」

フェリックスは続けた。「マリーナさんが言っていた、束縛に困っていたというのは本当ですか?」

ロイズの顔には一瞬の動揺が走った。「そ、それは本当だ。でも、僕がセリアを殺すなんてあり得ないよ。

確かに別れ話はしたけど、まさかこんなことになるとは思わなかった…」

フェリックスは部屋に飾られた団員の写真に目を移しながら、さらに問いかけた。

「どうして別れを言ったのですか?誰か他に好きな猫ができたとか?」

ロイズはにやりと笑いながら答えた。「フェリックス、僕は1匹のメスに縛られるつもりはないよ。

だって他にもたくさんのメスが僕にアプローチしてくるんだから。」

フェリックスは冷静に言葉を続けた。

「なるほど、そうやって多くのメスに手を出すことで、セリアさんが嫉妬してしまったわけですね。」

ロイズは肩をすくめ、

「僕は自由になりたいんだ、束縛されるなんてごめんだね」と言い放った。

フェリックスは写真を元の位置に戻し、静かに言った。

「そうですか、あなたとセリアさんの関係は分かりました。」

そう言うと、フェリックスは部屋を出ていった。その背中に向かって、

ロイズは叫んだ。「僕はハメられたんだ!必ず犯猫を捕まえてくれ!」

フェリックスはその言葉を背に、静かにドアを閉めた。廊下を歩きながら、

彼の心には新たな疑問と確信が交錯していた。セリアの死の真相はまだ闇の中だが、

少しずつその輪郭が見えてきた気がした。





ワトリーは、静かな劇場の舞台裏にあるゲン仕事場に来ていた。そこには

舞台の幕や道具が所狭しと並んでおり、忙しそうに動き回るゲンの姿があった。

「ゲンさんは舞台に立たないのか?」と、ワトリーは興味津々に尋ねた。

ゲンは笑みを浮かべながら答えた。「ああ、おれは裏方の仕事だからな。」

ゲンはふと何かを思い出したように顔を上げ、「ワトリー、いいもの見せてあげよう。」

ゲンは手のひらに何もないことを見せ、手を握った。そして、

「ワトリー、よく見てて」と言いながら手を離した瞬間、ボンっ!と小さな火が出た。

ワトリーは驚きの声を上げた。「わー、すごいのだ!」

ゲンは微笑みながら、「おれも昔はマジシャンを目指していたんだ。

センスがなくて諦めたけどね」と言った。そして、

小道具の箱から竹トンボを取り出し、ワトリーに手渡した。

「これをあげよう。」

ワトリーは興味津々で竹トンボを手に取り、「どうやって使うのだ?」と尋ねた。

ゲンはニヤリと笑い、

「こうだよ」と言って、その竹トンボを空中に飛ばした。

竹トンボは空中でくるくると美しく回転しながら飛んでいった。

「わぁ~、すごいのだ!」と、ワトリーは目を輝かせていた。

ゲンはそんなワトリーの姿を見て、かつての自分を思い出しながら、

静かに微笑んだ。

ワトリーは竹トンボを取ってゲンに向かって

「でも残念なのだ、ボクもサーカスを楽しみにしていたのだ。」

ゲンは深いため息をつきながら

「そうだな、こんな小さなサーカス団でもみんな子供たちは楽しみにしてくれた。」

ワトリーは静かにゲンに問いかけた。「亡くなったセリアさんはどういう猫だったのだ?」

ゲンはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「ああ、セリアはすごい猫だったよ。技術も美貌も兼ね備えた、

誰もが一目置く存在だった。ただ、性格に少し難があったがね。」

ワトリーは興味深そうに頷いた。「性格に難があった?」

ゲンは苦笑いを浮かべ「セリアとマリーナはよく喧嘩してたんだ。些細なことで言い争いが絶えなかった。」

ワトリーが訪ねる、「二匹は仲が悪かったのか?」

ゲンは肩をすくめ「まあ、そうだね。でも、お互いの技術は認めていたんじゃないかな?

そこに新たに入団してきたのがカオリだ。」

ゲンは昔のサーカス団の話をし始めた。

「今はこんなギスギスしているが、昔はみんな仲が良かった」

技術を磨き、観客を喜ばせることが団員たちの生きがいでもあった。

しかし、突然団長がもう1匹連れてきた。それがあの鉄仮面の猫、カオリだ。それが全ての始まりだった。

その瞬間から、団長の態度が一変した。これまで公正で仲間思いだった団長が、

カオリを舞台に立たせることで莫大な利益を追求するようになった

団長は、カオリを「怖いもの見たさ」と「珍しい生き物」としてVIP客にだけ提供するようになり、

その全貌を一般には一切明かさなかった。

カオリに何をさせているのか、団長以外には一切分からない。

団長の変貌により、かつての仲間意識は薄れ、儲けのために何でもする冷酷な存在へと変わってしまったのだ。


ゲンの目には遠い昔の光景が浮かんでいるようだった。

「そのころから、ロイズはいろんなメス猫に手を出し、

セリアの人気にマリーナが押されると、途端に、険悪なムードになってね。

そしてついには、仲間が死んだというのに、犯猫のなすり合いが始まった。情けない話だよ。」


ゲンは悲しそうに語り続けた。「俺たちはかつて、一つの目標に向かって一丸となっていた。でも今は

仲間同士が憎しみ合うようになってしまった。あの頃の俺たちに戻れるなら、どんなにいいことか。」

ワトリーはゲンの話を黙って聞いていた。彼の胸に広がるのは、失われた夢と希望の残骸だった。

サーカス団の仲間たちがかつてのように心を一つにして、再び舞台に立つ日は来るのだろうか。

ワトリーはその答えを求めるように、ゲンの顔を見つめた。

ゲンはふと我に返り、ワトリーに微笑んだ。「でも、諦めるわけにはいかない。

俺たちはまだここにいる。いつかきっと、また皆で笑い合える日が来るさ。」

ワトリーも小さく頷いた。「うん、ボクもそう信じているのだ。」

ゲンは作業に戻り、ワトリーは竹とんぼで遊び始めた。サーカスの劇場の外では

風が静かに吹き抜け、過ぎ去った日々の思い出を運んでいた。

ネコ探偵フェリックスとサーカス団猫殺事件の謎

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