テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
92
248
12
主は事あるごとに違和感を感じていた。
例えば、平日の昼間に屋敷で何をしていたのか思い出せなかったり、食べたことのないはずの料理を食べたくなったり、あまり知らないはずの東の大地の風土に馴染みがあったり・・・数えだすときりが無い。
また、自分の家族について思い出そうとすると屋敷と全く違う雰囲気の場所が思い浮かび、現実味が無いのがどちらか分からなくなるような感覚に陥ってしまう。
そんな主を見て、ルカスは主が記憶を取り戻そうとしているのではないかと勘付き、記憶をなくす薬を飲ませることにした。
薬を飲ませた主は意識を失い、眠ってしまった。
翌朝目を覚ますと、主は何の記憶も残っておらず人形のようになってしまっていた。
ルカスは、そんな主を献身的に世話して洗脳していった。
部屋の外は危険だから必ず執事の誰かと一緒に行動すること、お屋敷の外はとても危険だから絶対に出てはいけないこと、食事は執事に食べさせてもらうこと、入浴は必ず執事と一緒に行うこと・・・
主はルカスの言うことを忠実に守り、無垢な笑顔を執事達に向けるのだった。
執事たちは彼らが愛した主を永遠に失ったことを嘆き、愛すべき人形が手に入ったことに歓喜した。
主は執事達の望むままに振る舞い、可愛がられ、愛される存在になった。
執事たちは苦い思いを抑え込み、愛らしい人形に愛を注ぐのだった。
コメント
1件
ああ、これは…読んでいてじわじわと寒気が来るタイプの話でしたね。MAKOさん、3話お疲れさまです。主が記憶を失って「人形」になる過程が、儀式的な丁寧さで描かれていて、その異様さが逆に怖い。執事たちが「苦い思いを抑え込み」ながら愛を注ぐところ、二律背反の感情が言葉にならないまま描写されていて、文学的で好きです。ルカスの「外は危険」という刷り込みも、支配構造として巧いなと。記憶を消すというより、上書きしてしまう残酷さが際立ってました。