テラーノベル
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幸か不幸か、私はこの病院へ、父の最期の1カ月間は毎日通っていた。
面会時間は基本的に15時から19時。
17時以降は病院の正面玄関は閉まり、裏の緊急外来の横から出入りをする。
面会時間が終了した今、出るのは不審がられるという病院が多いだろう。
でも、この病院の3階の一部分は、父も利用した緩和ケア病棟になっている。
緩和ケア病棟には、9時から21時までいつでも訪問していい。
――この階のナースステーションだけ通り抜けられたら、裏口から出ることは簡単
朝の方がいいか、どうしようかと考えた結果、21時前がいいと判断した。
今はまだ、人に会う可能性が高い。
20時半、私はスニーカーの音を立てずに病室ドアまで進む。
ドアに耳を引っ付けて、廊下の気配を探る。
5分……8分……誰も通らないところで、少し速足の気配が右から左へと動いた。
ナースステーションから、病室へ向かってだ。
――見つかったら、もう一度朝に挑戦すればいい。
私はドアを静かにスライドさせて、エレベーターへと進む。
ナースステーションは、バッチリ無人だ。
裏口は必ずオジサンがいるから、走ったりせず、面会が終わりました、というゆったりとした歩みで通る。
――完璧
自動ドアが開いた瞬間、冷たい風が頬に触れた。
真っ暗だ。
そりゃ、お正月が過ぎて数日の真冬だから当然のこと。
私は駅に向かって走り始めてから、すぐに立ち止まると、一度だけ振り返った。
――大丈夫
コメント
1件
ふぅ… 通り抜けた…うんうん完璧👍 院内の防犯カメラは気になるけど… 菊ちゃんここからだよ。 どんな困難があろうとも負けるな!くじけるな!必ず守り抜ける! 応援してる✊🏻 ̖́-