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推しの子 リクエスト集

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推しの子 リクエスト集

11 - 死ぬ間際に 続き(最終話)

♥

22

2025年02月08日

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「…随分と機嫌が良いのね」


もう魂しかないくせに、いつもニコニコと気味の悪い笑みを浮かべながら、フワフワとずっと後ろをついてくる。もはや背後霊だ。神である私に、背後霊……。


「ぶっ飛ばす」


『物騒なこと言わないで欲しいよ』


相変わらず笑みを絶やさない。生前より死後の方が自然的になっているのが癪にさわる。


『それより、最近のアクア見た?僕、あのアクア嫌いなんだけど……』


声色が少し変わった。口元は上がっているが、瞳はちっとも笑っていない。それほどまでに、今のアクアが不満のようだ。


「役者をやめて、外科医として働いている星野アクア君の、どこが不満なの?」


カミキに負けじとクスクスと笑う。


『言わなきゃ分からない?』


分かるよ。全部不満なんだよね。あの時から6年。当日18歳だったアクアも、今は24歳。ボロボロだった心は、双子の妹のルビーが、育ての母が、周りがたくさん支えて立ち直らせた。今は芸能界から離れ、宮崎のとある病院で普通に働いている。


「なんか、前世に戻ったみたい」


まぁ、今は産婦人科医じゃないから、多少の違いはあるけど。


『雨宮吾郎のこと?』


「…貴方、どこまで知ってるの?」


まさか前世のことまで知っているとは思わず、少しキツく問いかける。


『死んでからあれこれ自由に動けるようになってね。1人で日本旅行してたんだけど──』


「……」


──何してんだコイツ。


声は出さなかったのを褒めてほしい。生前はこんなアクティブな性格じゃなかったでしょ。死んでから変な方向で吹っ切れてる。

『──って事で、雨宮くんのことを知っていって、アクアとの共通点がありすぎたから、そういうことなんだなって結論が出たんだ』

「…過去に戻ったら、何としてでも殺させないようにしようかな」

『タラレバの話をしても意味無いよ。それとも……それってプロポーズ?』

「そんな訳ないでしょ」

この調子だと、ルビーの前世が天童寺さりなってことも知る時が遠くないのかもしれない。

「…いや、もう知っているかもしれないね」

『じゃあ、僕はもう行くよ』

「どこに行くの?」

『なーいしょ』


「お疲れ様でした」

「お疲れ〜」

時刻は深夜2時。平均より遅めの帰宅。

「あー、目がしょぼしょぼする……」

人通りが少ない夜道を歩きながら、どうせ誰もいないと思い、独り言を呟く。前世の勤務先とは土地が全然違うけど、こっちはこっちで空気が違くて落ち着く。

「…アイ」

今でも忘れない。忘れられないあの記憶。目の前で一番星が天に堕ちていくのを、ただ見ることしか出来なかった。

──アクア

「っ……!」

視界が、グラリと揺れる。今の、今のはどっちだ。アイなのか、アイツなのか分からない。

──アクア

ぎゅっと、抱きしめられる感覚がした。なんだろう、暖かい。

『大丈夫。ずーっと、一緒だからね』


何を勘違いしたのか、安心したように眠ったアクアから、そっと離れる。

『ふーん……。笑顔なんてつまらないと思ってたけど、悪くないね』

頭を、それから頬を撫でていく。控えめに笑うアクアが、とても可哀想に思えてくる。

『僕とアイを間違えたなんて知ったら、アクアはどんな顔をするのかな』

──ヒカル

冷たい風が強く吹いた。

『怒ってるの?ふふ、まだアイのところには行かないよ』

「ぅ、ん……」

寒かったのか、アクアがこっちに擦り寄って来る。僕に暖かみを感じたのかな。

『僕が暖かいんじゃなくて、アクアが冷たいんだよ』

心も身体も、冷えきって身動きが取れない状態のまま、普通の仮面を被って日々を過ごしている。ルビー達の陽だまりの温もりじゃ、アクアの心は溶かされなかった。

『良かった。まだ僕の腕の中にいる』

6年経っても、アクアと僕は繋がっている。

『早くこっちに来て。僕はずーっと、待っているよ』


ー終ー



リクエストして下さった                                     此乃美りるさん

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コメント

1

ユーザー

ほんとに助かる…!!

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