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「ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ち致しております」
店長さんが丁寧にお辞儀をして、私達を見送ってくれた。
良い物が買えたって、柊君は満足気だった。その笑顔を見てるだけで、私まで幸せな気持ちになる。
その嬉しい気持ちのまま、私達は映画館に向かった。
観たのは、ちょっと怖い映画。
ホラー系は久しぶりで、恥ずかしいけど、大きな音が鳴る度に叫んでしまった。
柊君はそんな私を見て、ちょっと笑って、優しく手を握ってくれた。
「大丈夫だよ、怖くないよ。隣に僕がいるからね」って、言ってくれてるように感じた。
こういうの、すごく好き。
私は1人、この上ない幸せを噛み締めた。
映画が終わり、少しホッとしたら、ちょうどお腹が空いてきた。
「何が食べたい?」
「柊君が食べたいものでいいよ」
「じゃあ、お互いせいので言おうか」
結局、和食のお店に入り、お蕎麦を食べた。
食事をしてる時も、仕事の話しは一切せず、2人のこれからの未来のことを話した。
「ごめんね、新婚旅行すぐに行けなくて。仕事が落ち着いたら絶対に行こう。なるべく早いうちに」
「うん。でも、気にしないで。これからいつでも行けるんだから。大丈夫だよ、私は」
「そういうわけにはいかないよ。新婚旅行は特別だから」
毎日忙しく頑張ってる柊君と、2人だけで新婚旅行に行けるなんて……本当に夢みたい。
「僕さ、新婚旅行はアメリカに行きたいんだ。樹が暮らしてた辺り、すごく景色も良くて綺麗なんだ。柚葉に見せてあげたくて」
「本当? 素敵だね。アメリカって行ったことないし、柊君と一緒に行きたい」
「決まりだね。必ず連れていくよ」
私は、微笑みながら深くうなづいた。
子どもは何人欲しいとか、名前を何にするとか……
いっぱい話してるうちに、ずいぶん時間が経ってしまった。
気づけば夕方になり、日が少しずつ落ち始めていた。
秋の夕暮れは、やっぱり少し肌寒い。
「夜景楽しみ」
「そうだね。楽しもう」
私達は、手を繋いで車まで歩いていた。
その時、突然、柊君を呼ぶ声が聞こえた。
「柊!!」
その甲高い声につられ、2人同時に振り返った。
「やっぱり柊だ!」
手を大きく振りながら、こっちに駆け寄ってくる女性。
「こんなとこで何してるの?」
かなり派手めの女性が、息を切らしながら言った。
「……そっちは? ここで何を?」
淡々と、柊君が尋ねる。
「私は今から友達と食事に……って、この女、誰?」
この女!?
この人こそ、急に近づいてきて一体誰なの?
「また今度、連絡するから。今日はここで」
柊君はそう言って、さっさとこの場から立ち去ろうとした。
「ちょっと待ってよ、柊! 逃げないでよ!」
その派手な女性は、柊君の腕を掴んだ。
「まさか、この女と付き合ってるんじゃないでしょうね!? 私という彼女がありながら、まさか浮気? そんなことないよね?」