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 衝突音。 まつりの視界が、一瞬、揺れた。トラックが、校門のフェンスに軽くぶつかって止まった。 けど、フブキは無事や。 すいちゃんが、フブキを引っ張って避けたんや。  
「フブちゃん!すいちゃん!大丈夫ぺこか!?」  


 ぺこらが、慌てて駆け寄る。 スバルも、教室から飛び出してきて、  


「え、なに!?めっちゃヤバい音したやん!フブちゃん、まつり、無事か!?」って関西弁で叫ぶ。  


 フブキが、青ざめた顔で頷いた。  


「うん…大丈夫、すいちゃんが…ありがとう…」

  

 すいせいが、ちょっと得意げに笑って、 

 

「ほら、フブキちゃんはホロ学園の宝だから!私が守るよ!」ってウィンクした。  


 まつりは、その場に立ち尽くした。 胸が、ギュッと締めつけられる。 フブキ、無事やった。 よかった。 ほんまに、よかった…はずやのに。  




 ――なんで、こんな気持ちなんや。  



 唇の端が、勝手に吊り上がった。 笑みが、こぼれる。 フブキが無事やのに、どこかでガッカリしとる自分がいる。 すいちゃんのキラキラした笑顔、フブキの柔らかい笑顔、ぺこらの慌てた声、スバルの心配そうな目。 …みんなくそくらえ、って思っとる自分が。  


 ―― こいつらさえ、いなけりゃ。  




 頭ん中で、シオンの声がハッキリ響いた。 

 


 ――まつりちゃん、ほんとにそれでいいの? 自分の心、ちゃんと見て?  




 まつりは、ぎゅっと拳を握った。 フブキが、ゆっくり近づいてきて、  


「まつり…ありがとう、走ってきてくれて…」って、優しく微笑んだ。  


 その笑顔が、胸に突き刺さる。 まつりは、なんとか笑顔を作って、  


「よ、よかった…フブキが、無事で…」って呟いた。けど、声が震えとった。  


 スバルが、まつりの肩をポンと叩いた。 

 

「お前、めっちゃ焦っとったやん!ええやつやな、まつり!」  


 ぺこらも、ニヤニヤしながら、  


「まつりぃ、めっちゃヒーローやったやん!でも、顔、めっちゃ青いぺこよ!」って笑った。  


 まつりは、笑顔を貼り付けたまま、内心で叫んだ。   

 ―― ちゃう。 ちゃうんや。 私、フブキを守りたかったんちゃう。  


 夕陽が、校庭を赤く染める。 フブキの笑顔、すいせいの輝き、ぺこらの声、スバルの気遣い。 全部、眩しすぎる。 まつりは、ただの影や。  







 ―― まつりってほんと必要だったんかいな 。

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