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胸が張り裂けそうな。

初めて告げられた言葉。

思いもしなかった言葉……当然、すぐには理解できなかった。


「俺、准さんが好きです。でも好きになる資格がないんです。全部話したら、どんだけ最低最悪な人間か……バレちゃうから」


涼の辛そうな顔が目に焼き付く。一体、何にそんな苦しんでいるのか。教えてくれたらきっと何でもするのに、彼の口から聞き出せないでいる。

涼は手首をもう片方の手で押さえた。その袖の下で、いつか見た傷跡が目に入る。

彼の手は震えていた。

なにかを思い出してるのか……下を向いてわずかに冷や汗をかいていた。


「やっぱり、分からないな。お前が抱えてる事情も……何を怖がってるのかも、分からないけど」


もし“それ”に少しでも俺が関わっているのなら。


「俺はお前を独りにしない。ずっとそばにいるよ。ずっと、お前の味方でいると誓う」

「……っ」


ゆっくり上げた涼の顔は、とても具合が良いようには見えなかったけど……少し落ち着いたように見えた。

それに、誰かの面影が重なった気がした。

「お前は、手を離したら離れていきそうだな。ヤンチャな子どもみたい」

「准さんは、近付いたら逃げてきそうです。警戒してる猫みたいに」

「まー間違ってはいないな?」

笑って、涼の手を引いて起こした。

闇に包まれたこの時間は好きにはなれないけど、ずっと遠くの空で一等星が輝いていた。

いつまでも眺めていたいと思う。彼と一緒なら朝が来なくたって、怖くない。

純粋に見蕩れてしまった。……そんな夜を、俺は誰かと過ごしたことがあるのに。

また見に行こう、って。

そう言って笑い掛けたあの夜を。


やっぱり、思い出せないんだ。




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