テラーノベル
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苦しい。
冷たい。
また、海の中。
私の体は深く、落ちていく。
目の前は暗くて何も見えない。
目を開けたらもっと怖くなるから閉じたままでいよう。
手を伸ばしても誰にも掴んで貰えないのだからそのままじっとしていよう。
抵抗などせずにそのまま、深く、落ちていこう。
目を覚ますと何故か泣いていた。
私の視界はぼやけていて瞳の中に涙が溜まっている事を確認する。
初めてのことで何がなんだか分からない。
私は、死ぬことへ恐怖を抱いた。
なんのやる気もでてこなくて私はその日学校を休んだ。
母が仕事へ出掛けるのを見送ると私は部屋に戻りメイクを始めた。
久々に可愛らしいワンピースを着てオシャレなバックを持つ。
家を出ると生ぬるい空気が私の頬を撫でた。
昨日、何があったのだろうか。
溺れたこと以外覚えていない。
けれど時刻はきっと黄昏時。
またあの時間帯。
沢山のことを考えていて私の頭の中はぐるぐると回っている。
不意に足を止めると私は海の前まで来ていた。
水が当たる寸前で止まっていた。
無意識に体が海へ向かっている事が多い。
そして事故で死んでいる。
きっと、事故なはず。
私は急に怖くなり後ろを振り返りそのまま駅の改札へと足を運んだ。
着いたのは大型ショッピングモール。
私は欲しかったものを数個買い可愛らしい喫茶店へと入った。
中には女子大生が沢山いてパンケーキやパフェなどを頬張っている。
私は席につきオムライスを頼んだ。
特に食べたかった訳では無いが前、奏汰と一緒に来た時オムライスが美味しいと言っていたから。
無意識に頭の中には奏汰が居る。
そんなのもう、奏汰が好きだと認めているようなものでは無いか。
いや、。
私は、奏汰が好き。
あぁ、認めてしまった。
だめなのに。
好きだなんて本人には知られないようにしなければならない。
私が、辛くなるだけだから。
家へ着くと家の前には奏汰がいた。
「陽菜、元気だった?」
見れば分かる。
外で遊んできただなんてただのサボりだと思われる。
「どう見たって元気でしょ。」
素っ気ない返事をしながら鞄から家の鍵を取り出した。
何も言わずに鍵を開け彼の方へ振り向く。
「用が済んだんなら帰って。」
嫌いだから冷たくしてるわけじゃない。
本当は嬉しいのに、素直になれない。
彼は悲しそうな声で私に「分かった」とだけ返事をした。
家に入る前にもう一度振り向くとそこに彼の姿は無かった。
ただ残っていたのは海の匂いと涼しさだけ。
彼の居なくなった私の近くは寂しそうに暗くなっていく。
心が締め付けられるように痛くなり私はまた前を向き家へと足を踏み入れた。
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