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「トラウマは簡単には消えない。それは俺も、瑛太にも言えることだよ。敦だって、それは分かるじゃん」
俺が頷くと、ハルは続ける
「だったら、敦の本音を伝えて、何度でも伝えて、宏樹くんが怖くなくなるまで伝え続ければいいんだよ」
「何度でも…か」
「愛情も言葉も、一回伝えたら終わりじゃないし」
「…ハルにしてはまともなこと言ってる気がする」
「昔っから一言余計だね?」
兄のツッコミに、俺は久々に素で笑った気がした。
すると、ハルはニヤつきながら付け足すように言った。
「まあ、もうひとつ恋愛の大先輩から助言であげよっか?」
「大先輩って…元ホストの助言って普通のものがある気しないんだけど」
少し呆れながら返すと、ハルは急に真剣な顔付きになった。
「宏樹くんが何を怖がってるのか全部分からなくてもいいけどさ、敦がどう思ってるのか、それだけは素直に伝えればいいんじゃない?ってこと」
「…まあ、そうしたら、ひろも不安になったりしないかも」
「そゆこと。お互い本音をぶつけあって、何回も何十回も喧嘩や話し合いして、何があっても絶対に別れるって選択肢は出さない。そういう関係値の方がいいじゃん?」
ハルの真剣な表情と言葉に、俺は納得するしかなかった。
「それに、これからも一緒にいるなら尚更話すべきでしょ。宏樹くんの気持ちも、敦の本音も」
ハルが涼しい顔で、俺の背中を叩く。
「分かったら、兄貴に泣きついてないで宏樹くんのところに一刻も早く帰ってあげな」
ドラマで見るようなかっこつけのセリフが、やけにカッコよく聞こえた。
◆◇◆◇
帰宅途中
俺はハルに言われた言葉を思い出していた。
『愛情も言葉も、一回伝えたら終わりじゃない』
『敦がどう思ってるのか、それだけは素直に伝えればいいんじゃない?』
ハルに言われて気付かされたが、俺は「ひろを安心させなきゃ」ということばかりに固執していた。
だけどそれよりも、俺自身の気持ちを伝えることが大切だった。
そんな当たり前のことに、今更気付いた。
きっと、何度でも愛情を与えて
優しい言葉をひろに投げかけ続けて、ひろが怖くなくなるまで俺の愛を伝えるしかない。
言葉を経験を積み重ねること自体が、ひろにとって「安心できる関係」の記憶になっていくんだと、そう思った。
きっと、ひろに届くと信じて───。
◆◇◆◇
帰宅後…
玄関で靴を脱ぎ、リビングに向かう。
手元のスマホで時刻を確認すると、既に深夜1時を回っていた。
「ただいま……って、もう寝てるか」
手洗い、歯磨きを終えて寝巻きに着替える。
寝室に行くと、案の定
ダブルベッドの右側のスペースで、布団を肩までかけて眠っているひろの姿があった。
とりあえず、今日はもう無理だ。
(明日の朝、仕事に行く前にでも、話がしたいってことを話そうかな)
そう思い、俺はひろを起こさないように静かにベッドに入った。
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莉乃ちゃん
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