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もう第7話、めっちゃ面白かった!!😭💕 美奈さんとの渡り廊下バトル、『雪崩みたいなものなの‼』で思わず声出して笑ったんだけどww しかも二宮くん、弟とのこと気にしてヤキモチ?っぽい感じ出しててキュンが止まらなかったよ…!!「きゅるきゅる」お腹の音でシリアスぶち壊しになるのも冴木ちゃんらしくて好き〜。続き早く読みたい!🔥
【ダメで元々】という言葉は、失敗に終わる確率の方が高いけれど、成功するかもしれないという希望がある人が使う言葉なのだと思う。
友達にさえなってもらえない私が、二宮くんに告白など出来るわけがない。
【ダメで元々】ではないから。【絶対的にダメ】なのだから。
二宮くんへの恋心を押し殺しながら沈静化を待ち、好転も悪化もしない日々をただひたすらに過ごす毎日。————-だったのに。
〔川田、二宮に続き、二宮の弟にまで手を出す冴木〕
〔猛獣冴木〕
〔野獣じゃん??〕
〔エロ魔人、冴木〕
〔見境ないよね。気持ち悪ー〕
スマホの画面に次々と並ぶポストに固まる。
薄れかけていた悪評は、虚偽を作り上げ、瞬時に拡散した。
————二宮弟とまで噂になるの? 席に座り、スマホを握り締めながら青ざめていると、
「冴木、大丈夫か? なんか顔色悪いぞ」
いつもの様に、二宮くんが隣の席に座った。
いつも通りの二宮くん二宮くんはまだあのポストを見ていないのだろうか。
「……これ」
そっとポストの画面を表示した自分のスマホを二宮くんの机に置くと、
「あぁ。見た見た。お前、性の猛獣化してんのな」 二宮くんが暢気に笑った。
「それは前からだから今更どうでもいい。じゃなくて、二宮くんの弟。大丈夫? 変な中傷受けてない?」
「俺が同じ噂を立てられた時はそんな心配しなかったくせに、アイツのことは心配なんだ?」
二宮弟を気に掛ける私の態度が気に入らなかったのか、二宮くんが途端に不機嫌な顔をした。
「だって、二宮くんは同じクラスだから、何事もなく過ごしてるの確認済みだもん。でも、二宮くんの弟の状態は分からないじゃん」
二宮弟はクラスどころか、学年が違う。分かり様がない。
「ふーん。まぁ、アイツは平気。くだらん噂話に落ち込む程、アホでも繊細でもない。そんなに気になるんだ? アイツのこと」
何なんだ。二宮くんの、この完全に在らぬ誤解をしていそうな言い方は。
「そんなにとは? ごくごく普通に心配しているだけですが?」
なのでまず、誤解をしているのかしていないのかを探る。
「ふーん。なんか、俺ん家に来た時も何だかんだ仲良くなってたから、てっきり狙われているんだと」
「どっちが、どっちに?」
「弟が冴木に」
二宮くん、やっぱり勘違いを起こしていた。しかも、勘違いの仕方が酷い。
「どっちもないし‼ そうだとしても逆だったとしても、だったらあの時ヤってるわ‼」
報われないとは分かっていても、私の好きな人は二宮くんなワケで。 全力で否定すると、
「黙れ、冴木‼ 変なことを大きな声で言ってんじゃねぇよ‼ またおかしなポストされるだろうが‼」
そんな私の口を、二宮くんが押さえつけた。二宮くんが迷惑がってした行為でさえ、嬉しくなってしまうのだから困ってしまう。
唇を口の中に吸い込み、上下の歯で押さえながら、綻んでしまいそうなのを堪えていると、
「……つーか、ごめんな。俺、あのポストの発端が誰なのか、心当たりがなくはない」
私の口を押さえていた手を離し、その手で自分の頭を「あー」と言いながら掻き出す二宮くん。
「誰?」
二宮くんの顔を覗き込むと、
「……多分、元カノ」
二宮くんが「証拠はないんだけどね」と溜息混じりに項垂れた。
「何でそう思ったの?」
「元カノから俺と弟にLINEが来た。弟には『冴木さんって知ってる?』みたいな。俺の方には『冴木さん、あんまり良い噂聞かないよ。あんまり関わらない方が良いんじゃない?』的な」
二宮くんの話から察するに、二宮くんの元カノはこの高校にいるのだろう。
「それで、元カノさんがしたってことにはならなくない?」
「だから、『証拠はない』って言ったじゃん。ただ、弟がさ『冴木のこと知ってるよ。兄ちゃん、家に連れて来たことあるし』的な返事したらしくてさ。そしたらあのポストが出回った。だから、むしろ弟の方が『冴木に悪いことしちゃった』って言ってたくらいなんだけど」
二宮くんの話に、胸騒ぎがした。 二宮くんの元カノは、もしかして……。
「……元カノさんに、『よりを戻したい』って言われた?」
「……うん。まぁ……」
予想通りの二宮くんの返事。予感は的中した。
私は二宮くんの彼女にはなれない。分かっているのに、胸がズキズキ痛む。
『付き合うことは出来なくても、せめて誰のものにもならないで』 アイドルファンの気持ちが、今なら分かる。
「……より……戻すの?」
二択の質問を二宮くんに投げかける。
聞きたい答えは1つだけ。もし、逆側の返事だったら……。でも、聞かずにはいられなかった。好きな人の好きな人を気にせずにいられるほど、私はお気楽な人間じゃない。
「弟になんで別れたのか聞いたんだろ? 戻すわけないじゃん」
二宮くんの言葉に、胸の痛みがスっと消えた。
良かった。まだ誰にも二宮くんを取られなくて済む。胸を撫で下ろしていると、
「なんでそんなこと聞くんだよ」
二宮くんに、とても正直には答えられない様な質問をされた。
『好きだから、気になるんだよ』と、素直に言えたらどんなに良いだろう。そんなことを言えるはずもないから、
「……だって、彼女持ちの男子から毎日教科書見せてもらうって、やっぱ良くないでしょ」
かろうじて嘘ではない言葉を搾り出す。
「教科書の心配かよ」
若干イラついた二宮くんは、そう言いながら次の授業の教科書を広げた。
違う。だけど、否定が出来ない。だから、
「いつもありがとう。二宮くん」
『好きだ』と言えない代わりに、精一杯の感謝の言葉を。
「はいはい。じゃあ、今日もしっかり勉強しなさいな」
二宮くんがちょっとだけ笑って、私の頭を撫でた。これで充分。今度こそ、これ以上は望まない。
————–昼休み、今日もお弁当を片手に準備室へ向かう。ボーと何も考えずに歩いていると、
「冴木さん」
知らない女子から話しかけられた。
顔は見たことがあるから、多分同学年。でも、名前が分からない。
「私に何か用ですか?」
「ちょっと話がしたくって。場所変えよ?」
その女子が私の手首を掴んで、どこかに連れて行こうとした。……怖い。場所を移動したら、何人かの女子が待ち構えていて、集団で暴行的な何かをされるんじゃ……。
「コ、ココでしようよ‼ 何でココじゃ出来ないの?」
連れて行かれないように、足に力を入れて踏ん張り、立ち止まる。
「渉のことで……」
渉……。二宮くんだ。このコは多分……イヤ、絶対に二宮くんの元カノだ。
集団リンチの疑いがないのであれば、場所を移動するのは別に良い。
「……分かった」
彼女の希望通り、場所を移動する為、彼女の後ろをついて歩いた。
暫く歩いて、着いた場所は3階渡り廊下。お昼休みに渡る生徒は殆どいない。
手摺りに寄りかかり、下の階を眺めていると、仲間と楽しそうに喋りながら廊下を歩く二宮弟を発見。
私の視線に気付いたのかどうかは分からないが、奇跡的にあっちも私に気がついた。
眉間に皺を寄せて、こっちを見ている二宮弟。そんな二宮弟に手でも振ろうとした時、
「冴木さんって、渉と付き合ってるの?」
二宮くんの元カノが話し出した。なので、二宮弟に手を振ることはせずに、彼女の方に身体を向けた。
「付き合ってないよ」
本当は『付き合ってもらえないよ』が正しいだろう。
「渉のこと、好き?」
小柄な彼女は、上目遣いで私の顔を覗いた。
なんて可愛い人なんだろう。もし、私が友達の彼氏に手なんか出さず、全うに生きていたとしても、二宮くんが私を選ぶことはなかっただろうな。それくらい、可愛い二宮くんの元カノ。
「……それは、答えなきゃいけないかな?」
好きだよ。二宮くんのこと、大好きだよ。でも、言葉にしたくなかった。気持ちが育ってしまいそうで。このまま葬り去りたいの。そっとしておいて欲しいの。 彼女の質問には答えず、質問を返す。
「答えなくていいよ。あのさ、付き合ってないなら、渉の傍にずっといるのは、渉に迷惑だと思わない? 冴木さん、自分が何て噂されてるか知ってるよね? 冴木さんといたら、渉だって変な噂流されかねない。ていうか、流れてるし」
彼女の言っていることは尤もだ。 でも、ちょっと卑怯だ。渉、渉って、【二宮くんの為】みたいに話して。二宮くんを想う親切な人ぶって、汚い本心を隠してる。
「……なんでアナタが浮気した時は、変な噂流れなかったんだろうね。二宮兄弟、優しいね」
相手が言ってこないから、自分から嫌味混じりに汚い感情を吐き出した。
「冴木だけはダメ。冴木みたいに平気で友達の彼氏寝取るようなビッチ、絶対にダメ。そんなヤツに渉は渡せない」
私に釣られて、彼女も本心を吐露し始めた。
「……イヤイヤイヤイヤ。アナタにだけは言われたくないわ。彼氏の弟と……ナイわ。考えられない」
静かに悪意を言い返す。二宮くんに今彼女がいなくて嬉しいのに、二宮くんを裏切った目の前にいる元カノが赦せない。
矛盾した気持ちのまま、でもこのコに言い負けることはしたくないと思った。
「……流されたんだよ。人って、1回その波に乗っちゃったら、降りられないんだよ」
二宮くんの元カノの言葉に、ポカンと開いてしまった口を慌てて閉める。何コイツ。ポエムかよ。詩人かよ。
「……えっとー。そもそも波に乗らなきゃ流されることもなかったんじゃ……。百歩譲って、波に乗っちゃったとしてもだよ、普通に降りれるよね?」
「雪崩みたいなものなの‼」
サーファーじゃないのかよ‼ ポエット兼サーファーじゃなかったのかよ‼ ボーダーだったのかよ‼ だから、じゃあ雪山に行くなよ‼ 心の中で盛大に突っ込む。
どうしてこの人は言い訳ばかりするのだろう。
「奏くんがあんな風に迫って来なかったら、こんなことにならなかったのに……」
挙句、人のせいだ。二宮元カノの言う【奏くん】とは、きっと二宮弟のことだろう。
「誘った二宮弟も悪い。自分のお兄さんの彼女に手を付けるとか、頭がおかしいとしか思えない。だけど、アンタが1番気持ち悪い。普通、断るよ。二宮弟、綺麗な顔してるもんね。あんな顔で迫られたら、気持ちが揺れるのも分からなくはないよ。1回くらいならいいと思ったんじゃないの? 良くないんだよ。1回だってダメなんだよ。大事な人は1回も裏切っちゃダメなんだよ」
「ビッチが何を言ってんの」
裏切り者って、説得力ないんだな。
私の言葉は二宮元カノには届かない。だから、人を裏切るなんてしてはいけないんだ。だからきっと、二宮元カノの気持ちも、二宮くんに刺さることはないのだろう。
改めて、自分のしてしまったことを後悔していると、
「冴木‼」
私を呼ぶ声がした。声の方に目を向けると、心配そうな顔で走ってくる二宮弟が見えた。私たちの所へ駆け寄ると、
「2人で何の話?」
険悪な空気を悟ってか、二宮弟が私たちの間に割って入った。
「奏くん、ヒドイよ‼ なんで私ばっかり……。何で冴木は襲わないの? 何で冴木の邪魔はしないの? 冴木とはヤりたくなかったから?」
二宮弟が来た途端、恨み辛みをぶつけ始めた二宮くんの元カノ。なんか、内容が凄く失礼だし。そりゃあ、アナタに比べたら、私の顔は不細工ですよ。だからって、そんな言い方しなくてもいいのに。
無意識に口を尖らせてイライラしていると、そんな私に気付いた二宮弟が「口、突き出しすぎ」と小声で笑って、
「冴木のこと、襲ったよ。でも『嫌だ』って泣いて拒否された。冴木はね、友達の彼氏とヤっちゃう様なヤツだけど、好きな男としか寝ないんだよ」
私を落としつつも、なんだかんだフォローしてくれた。
「私のことは無理矢理襲ったくせに」
二宮弟の言い分に、二宮元カノが睨みを利かせた。……嘘だ。二宮弟はヤリチンだけど、無理矢理ヤることは絶対ない。だって、カッコイイもん。ヤらせてくれる女なんか、多分いくらでもいる。
「ほう。そういうことにしとく? 今度はそういうポスト流す? 何でそんな俺とLINEID交換したんだろうね? 普通、怖くて連絡なんか取り合いたくもないと思うけど。あれから結構やり取りしたよね? 昨日だって『冴木のこと知ってる?』って変な探りのLINEしてきたよね? その嘘、無理ありすぎ」
二宮弟が可哀想な人を見るかの様な目で、二宮元カノに苦笑いを浮かべた。
馬鹿にした様な表情の二宮弟を、言い返すことの出来ない二宮元カノは睨みつけたままで。
話は途切れてしまったのに、『じゃあ、解散‼』とは行きにくいこの状況。何、コレ。
「アナタはまだ、二宮くんのことが好きなんだよね? 二宮くんに聞いた。『よりを戻したい』って言われたって」
とりあえず、二宮くんの話に戻してみることに。
「…………」
二宮元カノが無言で私を見た。
「アナタは二宮くんに近づく女が現れる度に、こんな感じで呼び出すつもりなの?」
「……はぁ」
二宮元カノが、小さな溜息を吐いた。
「私だから許せないんじゃないでしょ。二宮くんの傍に誰がいても嫌なんでしょ。分かってると思うけどさ、二宮くん、カッコイイしモテると思う。二宮くんのことを好きなコは他にもいると思う。そのコたちひとりひとりの粗を探して、ポストして、呼び出すって……陰湿な上にカッコ悪い。それに、二宮くんは凄く真っ直ぐな人じゃん。普通に正攻法で行くべきだと思う。こんなやり方、二宮くんは絶対に嫌うよ。一生懸命謝って、一生懸命告白すれば、何かしら響くよ。二宮くん、優しい人だもん」
二宮くんと二宮元カノが元サヤになったら嫌なくせに、私は何を言っているのだろう。
二宮元カノを応援したいわけではない。ただ、二宮元カノの行動で二宮くんが嫌な想いをするのが、嫌だったから。
「簡単に言わないでよね」
ポツリと零して二宮元カノがその場を立ち去ろうとした時、
「ごめんね、美奈さん。俺、兄ちゃんのこと普通に好きだからさ、『兄ちゃんの彼女、奪ってやろう』とか、そんな泥沼に足を突っ込む気なかったんだけどさ、美奈さん、すげぇ可愛くて魅力的だからさ、『ちょっとだけ、1回だけなら』って軽い気持ちで近づいた。俺が悪いんだけど、乗ってきちゃダメじゃん、美奈さん」
二宮弟が元カノの背中に向かって話しかけた。
聞き忘れていた……というか、聞くタイミングを逃してした【美奈】という名前の二宮元カノが振り向いた。
「……だって、奏くん、凄くかわいくてカッコイイんだもん」
美奈さんが、やるせなさそうな苦笑いをすると、二宮弟も同じ表情を作った。
————-なんて、浅はかなのだろう。 美奈さんも、二宮弟も、私も。
————-ぐぅぅうううう。きゅるきゅるきゅる。
……最悪。突然、タイミング悪く私のお腹が豪快に鳴った。
イヤ、でも仕方ないんだよ。だってまだお昼ゴハン食べてないんだもん。しょっぱい顔をしながらお腹を擦る私に、
「冴木ー。お弁当まだなんだ?」
自分の腹を抱えながら、二宮弟が笑った。
「私もまだだけど、美奈さんもまだだよね? 食べる時間なくなっちゃうから、この話はこの辺にしようよ」
「……そうだね」
私の提案に乗ってくれた美奈さんは、今度こそ私たちの前から立ち去った。 美奈さんの姿が見えなくなると、
「美奈さんのお腹は鳴らなかったのにね」
二宮弟が隣でまたクツクツと笑った。
「言うなよ。黙っとけよ」
そんな二宮弟の横腹を肘でど突く。
「痛い痛い。冴木の肘、割と鋭利。つかさぁ、美奈さんに取られるなよ。何を暢気に美奈さんの応援なんかしちゃってるワケ? 冴木、兄ちゃんのこと好きなくせに」
二宮弟が、私にど突かれたあばらを撫でながら私を見た。
「……何ソレ」 その
辺の話は、誰にも踏み入って欲しくない為、白を切ろうと試みる。
「え? 『二宮くんはいいけどアンタは触っちゃダメ‼』って分かり易くキレといて『何ソレ』って逆に何ソレなんですけど」
……確かに。二宮弟に返す言葉もない。
「俺は冴木派。断然冴木押し。美奈さんみたいに流されたりしない冴木が、兄ちゃんには似合ってると思う。まじで頑張れよ、冴木」
二宮弟が、私の背中をパシンと叩いた。
「何で応援してくれるの?」
「だって俺、冴木作戦遂行したいから 兄ちゃんに彼女が出来ないと、謝れないじゃん」
「ゴメン。キミの応援には答えられそうもないよ。私、友達になることさえ拒否られてるから。違う誰かで作戦を決行したまえ」
今度は私が二宮弟の背中をポンポンと叩くと、
「イヤ、俺、イケる気がするわ。兄ちゃん、めっちゃ冴木のこと気にしてるじゃん。普通、友達になりたくないヤツにそんなこと言う? ただただ関わらなきゃいいだけの話じゃん。アレだな。そうやって線を引かないと好きになりそうなパターンなんだろうな」
二宮弟がニヤリと口角を上げた。
「キミ、凄まじくポジティブだね。もしくは少女マンガ読みすぎ」
「冴木がネガティブすぎんの。はたまた少女マンガ読まなすぎ」
二宮弟の言うことが本当なら、どんなに嬉しいだろう。ただ、私は少女マンガを死ぬほど読んでいる。現実はそうじゃないことを知っている。
ちょっと雑談をしてから二宮弟と別れ、準備室に急ぐ。お腹が限界に空いている上、お昼休みの残り時間がかなり少ない。
小走りで準備室に着くと、中で昼寝をしているだろう二宮くんを起こさぬ様、そーっと扉を開けた。
案の定、二宮くんは机にうつ伏せになって寝ていた。
足音を立てない様に二宮くんの前を通り過ぎ、適当な席に座る。
早速お弁当を広げ、時計を見ながらおかずを口に運ぶ。
食べ終われるかな。一心不乱に黙々とお弁当を食べていると、
「渡り廊下で弟と何を話してたの?」
寝ていたはずの二宮くんが、突然喋り出した。
「……起きてたんだ」
二宮くんの質問の答えになっていないことを言うと、大きめのご飯の塊を口に入れた。
重要な内容じゃないし、ゆっくり食べている時間も残っていなかったから。
「起きてるから喋ってるんだろうが。で? 何を話してたの?」
心なしか二宮くんの口調がイラついている様な気がする。
「寝言かなと思って。……ていうか、なんで二宮弟と私が渡り廊下にいたことを知ってるの?」
何故か不機嫌な二宮くんの前で、モリモリお弁当を食べ続けるのも何か違うと思い、とりあえず手を止めてみた。
「何で俺の質問はぐらかしてんの?」
あからさまに二宮くんは眉間に皺を寄せ始めているけれど、はぐらかしているつもりはない。だって、たいした話じゃないと思ったから。
「別に隠さなきゃいけない様な話はしてないよ。ただ、話す程のことでもないっていうか……」
「ふーん。わざわざ渡り廊下で落ち合って、世間話をするんだ。冴木と弟は」
私の返事に面白くなさ気な態度の二宮くん。
何なんだ、二宮くん。何か、面倒くさい感じになってるな。しかも、私と二宮弟は『わざわざ落ち合って』などいない。 ……ん? これは、もしや……。
「美奈さんから聞いたの?」
「LINEが来た」
二宮くんは、ポケットからスマホを取り出すと、親指でス画面をスクロールさせた。
「……何て送られてきたの?」
「『奏くんと冴木さんって、イイ感じなんだね。渡り廊下でヤバイくらいラブラブだった』」
白けた表情で美奈さんから送られてきたLINEメッセージを読み上げる二宮くん。
……何だソレ。あの女。正攻法で行けって言っただろうが‼
「アレ? おかしいな。確か、2人きりじゃなかったはずなのに。美奈さんもその場にいたんだけどなぁ」
白々しい口調で言うと、お弁当再開。二宮元カノのせいで5時間目までも空腹状態とか、有り得ない。