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山桜高校の広いグラウンドに、横山高校の生徒たちが続々と入ってきた。
あちらこちらで「久しぶり!」「受験勉強どう?」なんて声が聞こえる中、僕は一人、落ち着かない気持ちで足元を見つめていた。
本当に、来るんだ。先輩が……
その時、スピーカーから「キーン」という高い音がして、グラウンドが静まり返った。
『⋯えー、テスト、テスト。山桜高校、そして桃山高校の皆さん、おはようございます!』
心臓がドクンと跳ねた。
間違いない。ずっと聴きたかった、大好きな、あの人の声だ。
『本日の司会を務めます、桃山高校三年の、佐々希です。……あ、ちょっと松葉杖が邪魔ですね笑』
先輩のちょっと照れたような笑い声が混じった放送に、グラウンドのあちこちからクスクスと笑いが起きた。
でも、僕は笑えなかった。
先輩……本当に、骨折してるのに来たんだ……
僕はたまらず、放送席の方へ視線を走らせた。
そこには、松葉杖を横に立てかけて、風のせいなのかな?少し顔が赤いけれど、マイクを両手でしっかりと握っている先輩の姿があった。
『今日は受験勉強を忘れて、みんなでリフレッシュしましょう! 最高の一日にする準備は、できてますかー!』
先輩が精一杯声を張り上げる。
その瞬間、パァアン!と開始のピストルが鳴り響いた。
僕たちの、一番熱くて、一番切ない「季節外れの体育祭」が、今始まったんだ。
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