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過去の…事…
「う…あぁっ…」
目眩がすごい、また倒れ込んでしまいそうだな
何でこんなに冷静でいられるかわからない、慣れているようだ
「おやすみ、優奈」
ここは…見慣れた街の風景、名前がわからない、前の世界の場所じゃない
親子が向こうから歩いてくる、話しているのが聞こえた
「おかあさん!どこにおでかけするの?」
自分の声だ、少し声が高いけど自分の声によく似ている
「…後でわかるわ」
少し暗い声でそのお母さんは話す
「じゃあゆうなたのしみにしとく!」
無邪気な声が街に響く
「この体は人には見えなくなっているよ」
誰かの声が聞こえる、その瞬間別の場所にいた、さっきの親子だ
「きょうはやまのぼりするの?」
「そうだよ」
山の麓だ
突然思い出した
「行っちゃダメ!」
走っても手を掴むことはできない、どれだけ叫んでも届かない
この上には崖がある、よく覚えている、あの時の景色も声も、全て
親子は黙って進む
「おかあさん…なんでしゃべらないの?ゆうな…わるいことしちゃった…?」
私が問う
数秒後、お母さんが膝から崩れ泣き出した
私は心配してどうにかしようとする私と泣き続けるお母さんを見ることしかできなかった。
もうこんなところにいたくない、だけど動けない
数十分も経つとお母さんは立ち直りまた頂上へ向かった
「みて!あのもみじのはっぱほしい!」
お母さんの気を引こうとする私を見ようとせず山を登る、目に涙が浮かんでいる
頂上はとてもいい景色だ、大きな広い山が見渡せる
「優奈…景色、綺麗だよね」
「そうだね!」
ずっと向こうを見て立ち尽くしている
「ごめんね…優奈……何にもしてあげられなくて…辛くって、辛くって、優奈も同じだったのになんにもしてあげられなくて、私だけだって…」
泣いている、私ももう泣いてしまいそうになっている
「なんで…ないてるの…?」
「優奈に…ずっと悪いことしちゃってたよね…」
「そんなこと…ない…!ないもん!」
「優奈…ちょっと後ろ向いていてくれる?」
「…わかった」
もう見たくない、ずっと忘れていたい、ことごとく理不尽だ
お母さんが崖から飛び降りた
山道を誰か登ってきた
「優奈ちゃん?!そこで何してるの!」
知っている人だ、よく遊んでいたお母さんの友人
「あれ?おじさんなにしてるのって…」
「ここに一人で何してるのって…お母さんは…?」
「おかあさんならうしろにいる……あれ…」
「…いや、悪い考えはやめよう、かくれんぼとかしてなかった?」
「してないよ、後ろ向いててって言われたの」
「……そっか…辛かったんだね…君のお母さん…」
「どういうこと?」
「大丈夫、気にしないでよ……」
おじさん…岡本さんはうつむいている
「お母さん、優奈ちゃん置いてどっか行っちゃったのかも……」
「え…ぜったいそんなことないもん!おかあさんそんなことしない…の…」
「……」
真剣な顔を見て気づいたんだろう
「おかあさん…どこかにいっちゃったの…」
泣いている、子供だから無理もないだろう、泣かない方が不自然だ
「……僕がお父さんになってあげるよ、いやだったら別にいいよ」
「おじさんが…?」
「いいかな…?」
「おとう…さん…うん!おじさんがおとうさんになってくれるならいいよ!」
「うん…!じゃあ行こうか」
「わかった!」
帰って行く2人を見てることしかできなかった
…今のは…夢…?
「おはよう、昼だけどね」
「百花…今の…」
「優奈の記憶の破片、私が持っていたの」
「破片?」
「この世界に来たら記憶は書き換えられる、この世界の住人になる、でもその記憶は破片になって私にくる、世界も私が変えることができる、今建物も魔物も全部石化してるでしょ?優奈のためにやったんだけど…」
「優奈…って誰…?」
「さっきのでわからなかった?あなたの名前」
「私の名前…カノンって出てた気がする」
「あれもこの世界の住人になった時にできる名前」
「何で百花が知ってるの?」
「私がこの世界のいわば1人目だから」
第十一話終了