テラーノベル
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[ハルの部屋・深夜23:50]ハルの部屋のドアを、何かが激しく引っ掻いている。
ガリガリ、ガリガリと、爪が削れるような不快な音が響く。
ハル
「いや……嫌だ、開けない……ッ!」
ハルはスマホを握りしめたまま、ベッドの隅にうずくまり、ガタガタと震える。
画面の中のレンは、相変わらず「何か」に抱かれたまま、愛おしそうにハルを見つめている。
レン
『開けてあげてよ、ハル。せっかく俺が、ハルのために用意した特別な恋人(ともだち)なのに』
ハル
「レン、お願いだから目を覚ましてよ!それ、人間じゃない!レンだって、もう普通じゃないよ……!」
ハルが泣きながら叫ぶと、レンの笑顔がふっと消えた。
冷徹で、底の知れない瞳が画面越しにハルを射抜く。
レン
『普通?……そんなつまらないもの、ハルと俺の間に必要ある?』
レン
『俺はハルを愛してるよ。だから、俺と同じ景色を見てほしいんだ。……ハルも俺のことが好きなら、できるよね?』
ハル
「それは……好き、だけど……っ」
ハルの思考が恐怖で麻痺していく。
レンの言うことは狂っている。なのに、そのまっすぐな瞳に見つめられると、胸が苦しくなるほど彼への愛しさが溢れてしまう。
その時。
激しかったドアの引っ掻き音が、ピタリと止んだ。
ハル
「……止まった……?」
静寂が戻った部屋。
ハルが恐る恐る顔を上げた、その瞬間。
ピピピピ、ピピピピ。
ハルの部屋の電子錠が、自動で解除される音がした。
カチャ。
ゆっくりと、玄関のドアが開く。
廊下の暗闇から、ずるり、ずるりと、何かが這いつくばって部屋に侵入してくる気配がする。
ハル
「あ……あ、あ……」
恐怖で声が出ない。
スマホの画面の向こうで、レンがまた、満面の笑みを浮かべた。
レン
『あはは、入れたみたいだね。……ハル、スマホを自分の顔の前に持ってきて?』
ハル
「レン……たすけ、て……」
レン
『助けるよ。ずっと一緒だよ。だから、画面から目を逸らしちゃダメだ。俺だけを見て』
ハルは吸い寄せられるように、スマホの画面を凝視した。
レンの顔、レンの瞳、レンの唇。
背後から近づく「何か」の気配から逃げるように、レンだけを見つめ続ける。
レン
『そう、お利口さん。……ほら、もうすぐ後ろにいるよ。ハルの大好きな、俺の形をした「何か」が』
ハル
「え……?」
ハルが息を呑んだ瞬間。
スマホの画面に映る、自分の部屋の背景。
ベッドのすぐ後ろから、首が異常な角度に折れ曲がった「レンの姿をした化け物」が、ハルの肩に白い手を伸ばすのが見えた。
化け物は、レンと全く同じ声で、ハルの耳元で囁いた。
ハルの後ろの「何か」
「みーつけた」
ハル
「――――ッ!!」
カシャッ。
ハルのスマホが床に落ちる。
画面はまだ、繋がったまま。
通話相手のレンは、画面の向こうで、ハルを捕まえた化け物と全く同じポーズで、愛おしそうに微笑んでいた。
レン
『これで、ずっと終わらないね』
ビデオ通話の画面には、
お揃いの歪んだ笑顔を浮かべる2組の影が、暗闇の中でいつまでも映り続けていた――。
【END】
#王様ゲーム
コメント
1件
うわ、これ2話で既にキマってる……!レンが「普通なんてつまらない」って言い切った瞬間、背筋が凍ったわ。ハルの「好きだけど怖い」って感情の葛藤がリアルで、読んでるこっちまで混乱してくる。最後の「みーつけた」からの構図、画面の中と後ろの化け物がシンクロしてるの、映像として完璧すぎる。次の話でどうなるんだろう、マジで続きが気になる……!