テラーノベル
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決めた。ダンテにしよう。
「……彼はちょっと、骨が折れそうだなぁ」
床に寝転がっているアプリコットを横目に見て、とりあえず部屋から出る。どこに居るのかなんて分からないし、そもそもこの施設の構造なんて全く分からない。
ボスから何の説明も受けていないし、どうしたものか。
「……あ、居るじゃん」
出て早々にいた。部屋から出た意味が無いくらい近くに居た。あの人は何がしたいんだ?と、思ったが──……どうやら、鏡を見ているらしい。
「何してるんですか?」
「うわっ!! ちょ、生ゴ──……じゃなかった、エコーくん、こんにちは」
「生ゴミって言おうとしましたよね」
「そんなことないよ。……こほん、それで、何の用かな?」
「あなたに付きまとわせてもらいます」
「は?」
ダンテは硬直していた。そりゃそうだ、ほぼ初対面の人間にそんなことを言われても、そりゃそういう反応に──……。
「それはつまり、僕の事が可愛くて仕方ないからファンをやりたい、そういうことだね!?」
「えっ」
「いやぁ、僕が可愛すぎるあまりに!」
「……そうです!」
そういう事にしておいた。僕は今からこの人の顔面のファン。そういう事にしておかないと、多分気持ち悪がられる。
「そういう事なら! 僕についておいで、僕の部屋を案内してあげる」
「あ、ありがとうございます……」
彼に腕を掴まれて、走らされた。どうやら結構強引な人間らしい。ボスみたいだな、とは思ったが口には出さなかった。こんな所でボロを出すわけにはいかない。
「じゃじゃーん、ここが僕の部屋だよ」
彼が自信満々に言ったこの部屋は、どう見ても──……。
「倉庫ですね」
「僕の城だよ、悪く言わないでくれ」
「あ、はい……」
ダンテは適当な木箱に腰かけて、僕もどこかに座るようにと促した。だから僕は、とりあえず地面に座っておいた。
ダンテはそれを見て心底嬉しそうにしたが、すぐに元々の余裕のある顔に戻した。
「して、生ゴミくん」
「もう取り繕うのやめたんですか」
「僕の信者なのだから別に良いだろう。それでだ、生ゴミくん」
「──君は、僕のどこが好きかな?」
その質問が来たか。顔と答えればいいのは分かるが、それだけじゃ恋愛には発展しないだろう。あくまで、自分を褒めたたえてくれるファン──もとい信者が完成するだけだ。それは困る。
となると、僕はどこを褒めればいいのだろうか。とりあえず、一旦適当に答えておこう。今回でどのくらいまでなら言ってもいいのか、把握しておく必要はある。
「……お顔も勿論いいんですけど」
「うむ、それは当然だね」
「……と、とっても優しい人なんだな、と!」
「優しさ、かね」
彼が一瞬戸惑ったような気がした。出会ってすぐなのにそんなことを言われたら、確かにちょっと困るのも分かる。僕だってそう。
「お顔がとってもお優しそうですから……!!!」
だから、そう付け加えておいた。彼はそれを聞いて、納得したように頷いていた。どうやら上手く行ったらしい。
とはいえ、結局顔につなげてしまった気もする。
「まぁ、それは……悪くない言葉だね! ふふん」
そう言って、彼は少しも躊躇わずに、僕の頭に手を伸ばして、わっしゃわしゃと撫でまわし始めた。何だこの人、ファンの可愛がり方が気持ち悪い。
とはいえ、一旦好印象を残せたのかもしれない。たぶん。
「いやぁ、君はいい子だね。僕の優しさを顔から見抜くとは! 素晴らしい信者だ、本当に、ゲームマスターは良い参加者を送ってきてくれたね!」
「あはは……」
ところでこれ、いつまで撫でられてればいいんだろう……。
数十分してから、ようやく手が離れていった。助かった。
「フフ、君みたいな信者は素晴らしいね! もうちょっとこの部屋に居てもいいんだぞ」
「あぁ、ありがとうございます……」
とりあえず、この部屋にある危なそうなものを探しておこう。この人の恋愛感情を利用して殺し合いを起こすと決定したのだから、何かないか……。
あたりを見渡していると、ダンテは飽きたのか、木箱の上に丸まって無防備にも寝始めた。普通のデスゲームだったらあり得ないだろうが、ここはまだ殺し合いのこの字もないくらい平和な場所だから、そうなるのもまぁ分かる。
「……あ、縄」
部屋の中を物色していたら、縄を見つけた。逆に言うと、それだけ。縄で何ができるんだろうか。というか、ここにはキッチンとかあるんだろうか。
もしキッチンがあるなら、縄で縛って包丁で──というのもありだ。
「まぁ、しまっておこう……」
僕は小さくため息をついてから、一旦寝転がっているダンテの近くにある木箱に腰を下ろした。この人が起きるまで待機するか、もしくは外に出るか。
まぁ、今回くらいはここに居ても良いだろう。むしろ、ずっといたってことで、信仰度合いを誤認してくれるかもしれない。たぶん。
「……まぁ、顔は良いんですけどね、この人」
顔が可愛い、というのだけは本当の事だったから、多分他の3人も何も言えないんだろう。これで顔が人並みか、それ以下だったら否定出来たんだろうに。
まぁ、僕も一旦休憩しようかな。
晴空 めると 🌙
コメント
1件
読み終わりました〜!第2話、面白かったです! エコーくん、あんなふうに「ファンです」って付きまとう宣言しちゃうの大胆だなと思ったけど、すぐに「顔が可愛いから」ってごまかす感じがなんとも危なっかしくて可愛いですね笑 ダンテさんも「生ゴミくん」呼び即復活してて、実は結構仲良くなれてる空気がいいなあ。縄見つけたときのエコーくんの冷静な計算、これからどう使うのか気になります!続き楽しみです〜!