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騒がしい夜の街のあるビル。その地下にひっそりと構える小さなBAR。いや、正しくは小さなガールズバー。もっと正しくは……うさぎの
唯一の場所が正しいだろう
俺、「梣崎 春恵今年で23歳だ。そして、会社はほぼブラックに等しい。まあ有名なブラック企業に比べればそこまでじゃないにしても、決してホワイト企業とは言えない会社だ。年収400万程度。日本の平均年収が、五百…何万だったかな。だから俺は低い方。こんな生活がいつまで続くのやらと思っていた矢先。昨日見つけたこのお店。名前を「Venus・Rabbits」純粋な兎の女神達とでも言うのだろうか。ガールズバーの女神達が純粋である確率は限りなく0に近しいだろうがな。おっと、偏見は良くないか。ま、純粋じゃないにしても、女神である事は限りなく真実に近しい事実な訳で。昨日初めて入ったばっかなのに、2日連続で来るってちょっとキモイかな…。俺は少しもたついた様子で店の扉をゆっくり開けた。
「いらっしゃ〜い」
店内には客が1人も居ない。出迎えてくれたのは桃髪 の女神だ。名前は「未兎」と言うらしい。未兎ちゃんと昨日はもう2人いたのだが、青髪の女神と金髪の女神がいる。名前はまだ知らない。昨日は他のお客さんがいたからな。今日は休みかな。
「昨日も来てくれた人だよね?」
未兎ちゃんは明るく、でも少し落ち着いた声色で話しかけてくれた。
「は、はい。そうですね」
「やっぱ君は敬語だねぇ〜」
この元気だけど落ち着いた、この絶妙な声のバランスが俺の癒しになる。
「何飲む〜?」
俺はまだカクテルについてよく知らないので、適当に目に入ったものを頼むことにしている。昨日はジン・トニックというカクテル。結構飲みやすかったし、その要領で次も頼んでみようと思う。
「それじゃあ…ギムレット…で」
「え、いいの?」
未兎ちゃんは目を見開いて驚いている様子だった。このカクテルはまずかったか。でも、一度決めたことだ。男として揺るぐ必要はない。
「はい。お願いします」
「わ、分かった。ちょっと待っててね」
未兎ちゃんはカクテルを作り始めた。まだ慣れてはいなそうだが、練習を何度も繰り返したというのが伝わる手さばきだ。数分後、カクテルが出来上がった。
「はい、どうぞギムレットです。」
「ありがとうございます」
俺はさっきの未兎ちゃんの言葉を思い出し、少しだけ覚悟した。
「えっと…ゆっくり飲んでね…?」
「…頂きます」
俺は言われた通りに、ゆっくり飲んだ。
「……っ」
一口目…少量の薄く白い透明感のある液体を口に運んだ。その瞬間…
「…っ!辛ッ!!」
驚く程の辛さ、鋭さに俺は驚愕した。舌と喉を錐で突き刺されたような鋭い痛みだ。
「あっははは!!」
未兎ちゃんは大笑いしながら水の入ったグラスをカウンターに置いた。
「流石にギムレットには早すぎるよ!」
「……っこんなの誰が飲めるのさ」
「この世には飲める人もいるのだよ」
この世界は実に狂っている。このカクテルを飲める人は、舌と喉が頑丈で溶けない鋼鉄なんかでできてるんじゃないだろうか。
「どうする?そのカクテル」
未兎ちゃんが心配そうに質問してきた。だが、もう答えは決まっている。俺の答えはもちろん
「いや、飲みますよ。未兎ちゃんが作ってくれ たんですし。」
流石に、この子が作ってくれたカクテルを捨てるのは勿体ない。美少女に作ってもらったんなら飲まなきゃ損だろ。会社で自慢してやる! まあ、会社に自慢できるような人いないけど。
「えっ!良いの?」
「この量くらいなら大丈夫ですよ」
「じゃ、じゃあどうぞ…」
数分後
「っ〜〜!!」
俺は悶絶していた。グラスの上の部分が広いあのすっくない量のギムレットがまだ半分くらいしか減っていない。何分経った?クソっ…勿体ない事はあまりしたくない。するとその時未兎ちゃんが話しかけてくる。
「…もう大丈夫だよ〜、無理しないで」
甘い声で心配してきた。
「でも、捨てるわけには……」
俺が小さく呟くと、未兎ちゃんは俺が右手の中指と薬指を添えていたグラスをそっと手に取り180度回転させてから、
「ちょ、まだ…」
「んっ……」
桃色の可愛らしい唇をグラスにつけ、ゴクゴクと飲んでいる。
「え…?」
「はぁ〜、やっぱちょっと辛いな〜」
「飲めたの…?」
「うん、飲めた〜」
未兎ちゃんは小悪魔的な笑顔を向けて、言っている。最初から捨てる気はなく、俺の苦しむ様を見て楽しんでいたのだ。この子小悪魔だ。
「最初から言ってくださいよ…」
「えへへ〜春恵君の頑張ってるの可愛いかった からさぁ〜」
「っ…!?」
俺は動揺してしまった。ここはガールズバーでこの子は店員さん。これは仕事の一献であって俺に惚れてるわけじゃない。俺はお客さんだからこう言う対応を取ってるだけだ。他の人にもやっている。ガールズバーの店員に恋なんて…したくもない。
「あ、12時回りそうだけど終電大丈夫?」
「…っあ、すみません。ありがとうございます 教えていただいて」
「いや、全然!」
「それじゃあ俺帰ります。」
俺はお会計を済ませ、店の扉に向かう。
「じゃあね。また来てよ〜?」
「はい、また来ます。」
そして、扉を空け、外の世界へ戻る。外はまだ騒がしい。関西のこういう所は大体ずっとうるさいと俺は思っている。歩く人を避け、駅へ向かう。スマホを少し見ると、Twitterの通知を確認、今はXか。そう思うと今の時代ってXって言うだけでアニメやYouTubeだと著作権に入るんかな。Twitter(X)では
「pure・Rabbitsmuse」
の情報を主に見ていることが最近は多い。というか、今までTwitter(X)は入れてるだけで使ってこなかったからな。唯一の場所に出会ってから使っている。電車に乗り家に向かう。家に帰れば、出迎えてくれる人はいないし、風呂に入り、1人寂しく飯を食い、そして寝て次の日を待つだけ。その日の繰り返し。そこに憩いの場が増えた事はいい事だがな
翌日、朝5:12目が覚める。窓からは薄い水色の景色が見える窓を開けて外を見る。相変わらずって感じの変わらない街だ。朝食を食い、会社に向かう。ま、朝食つってもカロリーメイト1個だけな。時間ないんで。会社には6:00までには着く必要がある。でないと怒られてしまう。上司に呼ばれた。なんの用だろうか、ちょっとめんどくさい。
「梣崎君。来週から新人が入るからその子の 担当お願いするよ」
「…はい、分かりました」
面倒い業務を頼まれてしまった。その新人が、千年に一度の美少女だったら話は別だが、そんな子がこの会社で働くわけないだろう。多分、眼鏡かけてるヒョロい男だろうと予想した。
10:43やっと仕事が終わった。てか定時2、3時間オーバーしてるし、残業代無し。明日はなんか台風で休みになるらしい。ってことは行かない訳が無い。ま、あっちがやってるかわからんけど。
ー翌日ー
今日も行くか〜唯一の場所
そして俺はその扉を開けた。