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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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扉を開けると、そこに広がる落ち着いた景色。俺は2週間ほど前からこの唯一の場所ガールズバーに通っている。店の名前を

「Venus・Rabbits」

という。純粋な兎の女神達だ。店員は3人。

桃色の髪の未兎ちゃんと、青髪の子と金髪の子の名前はまだ分からない。実は今日、大きめの台風が来るって事で、休みになったんだが、そんな酷い台風じゃなかったから来てしまった。 店に入店したら、その時間は楽しんだもん勝ちだ。

「いらっしゃ〜い」

甘く、元気だが落ち着きのある声色。この子が未兎ちゃん。

「こんばんは。」

「何飲む〜?」

俺はカクテルを決める時、ほとんど名前で決めている。まだ全然詳しくないから飲んで確かめようって事だ。それじゃあ聞いたことがある名前の「ラム・コーク」なんかにしてみよう。コークって多分コーラの事だろ?

「ラム・コークでお願いします」

「は〜い、今日は挑まないんだね?」

そう、俺は昨日カクテル選びをミスったのだ。完全に上級者向けのカクテルに手を出してしまった。そんなことがないように真剣に選んだこの「ラム・コーク」だ。楽しませてくれ。

「ってとこはこれは安全なんですね!」

「調べなよ〜」

「いやー、このスリルが良いんですよ」

「ふ〜ん、怖いもの知らずだね?」

「さあ、どうでしょうね」

俺は曖昧な回答を口にした。カウンターにグラスが置かれる。そして、一口目、口をつける。

「あ、美味しい」

少しコーラの風味がする。やっぱり予想は当たっていたようだな。未兎ちゃんは可愛い笑顔を浮かべながら俺に言ってきた。

「ふふっ、良かった」

めっちゃ可愛い。ただただ可愛い。もしこんな子が会社にいたらな〜なんて思うけど、うちの会社に来る女性と言えば30後半のおば様ばっかだしな。来るわけない。その時、未兎ちゃんが何気なく聞いてきた。

「ねね、私何歳か知ってる?」

「え、急ですね。」

未兎ちゃんの年齢か、ガールズバーで働いてるくらいだし、未成年な訳ないよな…。見た目で言うと…

「ちょ、あんまじっと見ないでよぉ!」

「あ、すみません。」

照れている。可愛い。大体20歳くらいか?

「あの、20歳…とか?」

「惜しい!来週で20歳なの」

「てことは19歳?」

「うん!」

19か、やっぱ若いな〜。ま、この見た目だしな。ってか就職とかすんのかな。だとしたら俺が頑張ってる意味が無くなってしまうじゃないのか…?ガールズバーは続けてほしいけど、未兎ちゃんも就職したいだろうし…。

「んでね、来週から就職もするんだ〜」

「へ、へぇ〜。それは」

案の定。就職は決まっているみたいだ。どうしようか、俺の希望が無くなってしまった。

「ガールズバーは続けるんですか…?」

咄嗟に聞いてしまったのだが、やっぱり聞かない方が良かったかな。結局悲しくなるのは自分じゃないか。

「……」

未兎ちゃんは黙りだった。やっぱり…

「…それは、来週の月曜来たら分かるよ!」

ん?これはつまり、月曜日に行ったら会えるってことでいいのか?単純に考えて月曜来たら分かるとか言っておいて来ないなんてことない筈だし。俺は月曜日行く約束をしてそのまま家に帰ることにした。それと、未兎ちゃんからもうひとつ、約束をした。それが、来週の月曜日まで唯一の場所ガールズバーに来ないこと。という最悪の約束。もし来ちゃっても対応しないからねって言われた。どういう意味があるのか。俺には分からない。

朝の5:04。こじんまりした小さなアパートの 1部屋。ある物は俺が好きなバンドのCDとちょっとした観葉植物程度、あとはテレビと…って感じ。今日は仕事もないし、朝から風呂入って寝る事にする。それにしても、本当に未兎ちゃんが唯一の場所ガールズバーを辞めてしまったらどうしようか。俺の今の人生にとってあそこが唯一の場所であり、唯一の癒しだったのに。

それから月曜日までは本当に何も無いただただ面白みに欠ける日々続きだった。通勤ラッシュに巻き込まれ、会社に着き、パソコンをいじり1人で昼食を食い、上司に怒られてる同期を横目で眺め、定時をすぎても仕事を続け、定時の2時間オーバーで会社を出て、唯一の場所ガールズバーの前を通り過ぎ。と似た日々を繰り返していた。そして1週間後の月曜日。ついに今日。未兎ちゃんがいるかいないかがわかる日。緊張しすぎていつもの1時間早くに起きた。とりあえず余裕あるし、今日は朝食をヨーグルトとかにしようかな。時間になったんで仕事へ向かう。今日は新人が来る日だということを忘れていた 。新人は、眼鏡をかけた23歳くらいの細めの男性だった。ただ、俺の担当の新人じゃないみたいだ。今日は定時に仕事を終わらした。颯爽と会社を抜け、唯一の場所ガールズバー足を運ぶ。緊張した手つきで扉を開けた。すると

「あ、いらっしゃいませ」

「未兎が言ってたのこの人かな?」

「そうだねえ、対応お願い」

「は〜い」

聞こえてきた声は、甲高い声と落ち着いたお姉さんタイプの声。いつもの元気で落ち着いた声は聞こえない。前のセリフはどういう意味だったんだろうか。

「…み、未兎さんいないんですか?」

「え、えっとー…」

「すみません、今日はこれで…」

その時、俺が後ろに下がったのと同時に誰かと半身がぶつかる気がした。

「あっ、すみませ……」

「私こそ…」

その時聞こえた声は、聞き慣れた元気で落ち着いた声色。桃色の綺麗な髪、小柄な女性だ。歳は…19歳くらい。

「梣崎君!」

「…未兎ちゃん」

地下の廊下でばったりぶつかってしまったのは他でもない、未兎ちゃんだった。

「えっと、梣崎君ちょっとまってて!」

「あ、は、はい」

少し時間が経った。

「お待たせ〜」

そこにいるのは見覚えのある姿。いつもの未兎ちゃんだった。

「梣崎君?だっけ、良かったね」

お姉さんみの人が言う

「未兎がいないって思った瞬間帰りそうだった よね?」

甲高い声で話している。

「え、えぇぇっ!?梣崎君…ホント?」

「ま、まあ」

「わ、私の事好きすぎ〜」

可愛いらしい声で、少し照れながら言っていると、自分で言うのもなんだが俺は照れることがない方なので、カウンターを入れてやろう。

「はい。俺、未兎ちゃん好きですよ」

「っ///……」

「フューフュー梣崎君言うねぇ〜」

とても照れる未兎ちゃんはこの何も無かった日を浄化するように可愛い。すると、未兎ちゃんは話を逸らすように話題をふった。

「そ、それより!2人の名前まだ知らないでし ょ!」

「あ、確かにそうでした」

「じゃ、私から〜!」

甲高い声の女神が言う。

「私『沙奈さな』って言いまーす!」

「沙奈ちゃんか、よろしくお願いします」

「よろしくぅ〜」

元気そうで話しやすいタイプは嫌いじゃない。

「それじゃ私だね」

お姉さんタイプの人が話す。

「私は『愛美まなみ』って言います」

「あ、よろしくお願いします」

一通り名前を言い終わってからすぐ未兎ちゃんが俺に言ってきた。

「やっぱ梣崎君って固いよねぇー」

「そ、そうですか?」

「そうだよぉ!もっと気軽にぃ!」

「愛美みたいな敬語と、梣崎君の敬語って同じ 敬語なのに全然ちがうよね」

なんか哲学的そうで確かな事を未兎ちゃんが言った。まあ、俺の敬語と言えば会社で使うような業務の敬語であって可愛らしく大人びた敬語はしていない。

「敬語っていったら上司なんかにしか使いませ んからね」

「私らまだ19歳ですから、」

「え、全員!?」

この店は全員19歳か…。

「愛美ちゃんとか大人びてたし…」

「ふふっ、ありがとうございます」

そんな感じで時間を過ごしているうちに終電が近づいてしまった。

「それじゃ、僕はこれで…」

「梣崎君送ってくよ!」

未兎ちゃんが帰ろうとした俺を引き止め、送ってくと言っているが、悪いので断ろう。

「いや、大丈夫ですよ」

「……」

これでいいよな。多分、その時

「待って、私が送っていきたいんだよ」

「え、えっと……」

未兎ちゃんは少し震えた声で俺のスーツの袖を小さく摘み、弱い力で引っ張っている。

「行ってきなよぉ〜」

「片付けは私達がやります」

「…分かりました。着いてきたいならどうぞ」

仕方なく承諾した。薄らと未兎ちゃんは微笑んだような気がした。

人が少ない一直線の道、薄暗らい道には街灯が点々とある。それ以外の灯りは家の窓くらい。案の定、沈黙が続く。そう思っていると未兎ちゃんが、

「梣崎君、今日私が店に行ってなかったら…、 どうしてた?」

「……帰ってました。」

「ホントに私なんかの事が好きなんだね」

「はい、僕にとって未兎ちゃんは…」

「女神…ですので」

「女神って、店の名前通りで嬉しい」

未兎ちゃんは柔らかく笑う。とても可愛い女神だ。俺にとっての未兎ちゃんは芸能人とかの届かない存在に近しい。

「私そんなにすごい人じゃないけどなぁ〜」

「いや、未兎ちゃんは僕みたいな一般人と比べ 物にならない程…」

「梣崎君、」

未兎ちゃんが名前を呼ぶ。そして次に出たのは

「そうは言っても……一般人だよ?私」

そうは言っても、いっぱんじん

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