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7月8日(水)
翌朝の教室は、静かだった。
静かすぎて、逆に何かがあるのが分かる。
こさめはいつも通り席に座っていた。
けれど、昨日までの“いつも通り”とは違う。
腕が少し痛む。
でも、それを気にしたくなかった。
捺は遅れて教室に入る。
いつも通りの顔。
けれど、その表情には昨日の続きが落ちている。
自分の手を見ないようにしている。
いるまはすでに席にいる。
何もなかったような顔で。
でも、何もなかったわけではないことを一番知っている顔でもある。
誰もあの話をしない。
誰も昨日を確認しない。
確認してしまえば“戻れない”と分かってしまうから。
こさめは小さく笑おうとする。
こさめ「おはよう」
その声は、少しだけ震えていた。
捺は一瞬だけ見る。
そしてすぐ逸らす。
それだけ。
いるまは何も言わない。
ただ、その間にいる。
◇◇◇
休み時間。
誰かが小さく言う。
「昨日さ……やばかったよな」
その言葉は誰にも向けられていない。
でも全員が聞いている。
「でも、もう終わったでしょw」
別の声が重なる。
終わった。
その言葉だけが、事実として扱われていく。
こさめは気づいていた。
昨日と同じ場所にいるのに、誰とも同じ場所にいない。
いるまは分かっている。
戻れないことだけ。
◇◇◇
昼休み前。
捺が小さく言う。
捺「……昨日のこと」
そこで止まる。
続きが出ない。
いるまは少しだけ間を置いてから言う。
いるま「話すな」
それは命令ではなく、確認だった。
捺はそれ以上何も言わない。
こさめは廊下を歩いている。
誰かが後ろで笑っている。
その笑い声が、自分のことではないはずなのに刺さる。
(普通に戻ったはずなのに)
白玉くん
67
66
ことみ
74
(なんで、まだ変なの?)
答えは出ない。
教室の隅で、こさめは一人で座る。
誰も近づかない。
誰も遠ざけない。
ただ、距離がある。
その距離は、昨日まで存在しなかったもの。
捺は机に肘をつく。
いるまが横にいる。
捺「やりすぎたか?」
捺が小さく言う。
いるまはすぐに答えない。
少し間を置く。
いるま「……もう戻れない」
その言葉は冷たくも優しくもない。
ただ事実だけだった。
捺は目を閉じる。
いるまは分かっている。
止めるべきだったことも。
止めきれなかったことも。
でも今はもう“止める”では遅い。
守るなら、どこかを切り捨てるしかない。
その思考に気づいた瞬間、自分が一番壊れていることにも気づく。
◇◇◇
放課後
こさめは一人で帰る。
誰も一緒にいない。
後ろから声がしないことに、少しだけ安心してしまう自分がいる。
そのことにまた傷つく。
ドアを開ける。
こさめ「ただいま」
返事はない。
それでも今日は、昨日より静かだった。
その静かさが一番怖い。
こさめは部屋に入る。
ランドセルを置く。
そして小さくつぶやく。
こさめ「……なんで、こうなるの?」
こさめ「もうわかんないよ…」
next→♥250
コメント
2件
♡250にしといたよー! もうそこまで行ったら、戻るに戻れないからなぁ,,, 誰が悪いんでもない。ただ、どこかですれ違って、交わらないまま進んだだけ。 辛いよねえ。どっちも、心の奥ではきっと元に戻ることを望んでる。自分が動かないとこの状況が変わらないこともきっと分かってる。 それでも、どうするべきか分からない。動けない。 ほぼ手遅れだよね、ここまで来ると。
ああ、すごくわかる……「昨日」ってたった一日前なのに、こんなに遠くて戻れないものなんだね。 三人の間にある“言えない空気”がひしひし伝わってきた。誰も触れたくないのに、誰も忘れられなくて、ただ距離だけが静かに増えていくの。こさめの「なんでこうなるの?」がめっちゃ刺さった……もう戻れないって分かってるからこそ、その言葉が重いよ。 大好きな作品だから、続きが気になりすぎるよ🤍🥀