テラーノベル
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校舎と校舎の間の廊下を走り抜け、階段を駆け上がる。着いた。
急いで会議室に行こうと、走り出そうとする。
でもわたしの脚はそこで止まった。
「…あっ」
見えた。いた。
夕日に赤く照らされる先輩。
きれいだ。美しい。
わたしはその光景に目を奪われ、動けなくなっていた。
バイオリンを構えて、少し哀しげな瞳は行く場所もなく、地面に向いている。
見惚れていると、先輩がふと口を開いた。
「雛西…なんで来ないの…」
先輩の美しい緑色の瞳が少し潤む。
「約束、したのに…」
…まさか。
まさか寂しがっていてくれているのか。
わたしはたまらなくなって、その光景から目を逸らせなくなる。
それと同時に、わたしの中である一つの感情が芽生えた。
かわいい。
初対面はツンツン気味(出会いがアレだったのもあるけど)だった先輩が、今のように寂しがっているところを見ると、可愛くてたまらない。
可哀想だけど、行く気にはなれない。
ここで言ったらもったいない。
あと少しだけでいいから、今の先輩を感じていたい。
わたしは足が固定されているみたいに動かない。視点も全くブレることもなく、ただ先輩の顔を一点に見つめている。
わたしはつくづく先輩の虜になっているなと思う。
うっとりして考えることすら忘れていると、ふと先輩の顔がこちらに向いた。
「…!」
びっくりして硬直してしまう。
「雛西…」
やば、バレた。なんとか今来たことにしてごまかさないと。
「先輩すみません!遅れちゃって…」
「あ、あぁ…いい…けど」
「演奏、聴かせてください!」
「あ、うん…」
さっきのことが聞かれていないかと、先輩は少し気にしている様子。
大丈夫。ちゃんと全部見てましたよ。可愛かったです。
とわたしは心の中で先輩に言う。
ふと頭の中に、さっきの会話がよぎる。
「大事な人にはちゃんと自分の気持ちを素直に伝えるんだよーっ!」
そうだ。自分の気持ち。伝えなければ。
自分の気持ちを、素直に、先輩に、まっすぐに。
わたしは先輩のことでいっぱいな頭の中をかき分けながら、先輩への素直な気持ちを探ることにした。
わたしへの先輩の思い。
どんどん記憶の中を進む。道が開いてくる。
心臓が高鳴る。うるさいくらいの鼓動が響く。先輩に聞こえていないか心配になる。
少し疑問符を含んだ先輩の顔色を見ながら、わたしは思う。
わたしが先輩に抱いている気持ち。
好き。平たく言ったらどうやっても最初に辿り着くのは「好き」だ。
でもわたしの先輩への気持ちはそんなものだけじゃ表しきれない。
ここで言うのも違うような気がする。
あーだめだ。こんなところで言ったら倒れる。ぜったい倒れる。
わたしは少し冷静になって考える。
そもそもここで言う必要があるか?
もっと時間がある、二人きりの時に…
その時間が今だ。なのに言い出せない。
あーもう、そもそも好きすぎて言葉で表すのすら失礼かもしれない!
どうにかしないと。わたしは頭をフル稼働させる。
もっといい場所があるだろう、言うのならば。
落ち着いてゆったりできて…二人で行ける場所…
わたしは数秒考える。
そういや来週、駅前に新しいカフェがオープンするんだっけ。
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それだ、と私は心の中で全力でガッツポーズする。
そうと決めたら誘おう。そこで話そう。
持ち前の軌道修正の早さがここで活きた。わたしは口を開く。
「ね、せんぱい」
「なに?」
「来週、駅前に新しいカフェがオープンするらしいですよ」
若干早口になり、噛みそうになりながら、わたしは頑張って話す。
「あー聞くねそれ…雛西、行きたいの?」
「はっ、はい!先輩と行きたくて!」
さっすが先輩、察しがいい。
「…いいよ。来週の土曜日なら空いてる」
土曜、先輩まじ?わたしも空いてます!
「土曜!?わたしも空いてます!!」
「じゃあ、その日でいいね」
「はい!!」
元気マックスで返事をする。思ったよりあっさり決まった。
「あ、待ち合わせ場所はどうするんですか?」
「駅の前に銅像あるでしょ、あの前でいいかな」
「おっけーです!」
決まったあ!先輩とデートだ!!
なんだか嬉しくて、舞い上がった気分で先輩の横腹に抱きついてしまう。
「やったー!先輩とデート!」
「!っちょっと暑苦しい!離れて!」
「はぁい」
わたしは先輩にそう言われて、仕方なく離れる。
顔が赤い。やっぱり暑いんだろうな。最近6月でも暑いし。
「デートって…そんな大袈裟なもんじゃないでしょ」
「いやいやいや、休日に二人きりでカフェは誰がどう言おうとデートです!」
デートだよ。先輩とデートだよ。
わたしはもうそのことで頭がいっぱいだ。
相変わらず美しい先輩の横顔を眺めながら思う。
ああ、こんな時間がずっと続けばいいのにな…
だけど時間というものは残酷で、何をせずとも針が動き、陽を落とし、やがて辺りを薄暗いベールをかける。
「…もうこんな時間だ」
先輩がふと言う。
「ごめん、演奏はちょっと今日おあずけ。また来週、カフェで」
しまった、もうそんな時間か。
「はいっ!土曜日また!」
わたしは少し哀しげな顔をしている先輩を見つめる。
フローラルの香り。いい匂い。
先輩の緑色の瞳はガラスのように透き通っていて、心でも透視されているんじゃないか、と言うほど透明感があった。
「とりあえず、帰ろ」
言ってからすぐいなくなる先輩。えー、はやっ。
「ちょっと、先輩はやーい!」
足早に階段を降りる先輩を、わたしはぶつぶつ言いながらも追って走り出した。
☆プチあとがき☆
さあまさかのデート!!
二人はどうなってしまうのでしょうか!?
絶対ハッピーエンドにするのでこれからも応援よろしくお願いします!!!!
☆追記☆
「わたしのせんぱい」総いいね数200ありがとうございます!!!!!
色んな方に見ていただき光栄です😭😭😭😭😭
このまま二人のハッピーエンドまで駆け抜けていきます!!!!
コメント
1件
うわあ…今回のエピソード、すごく良かったです。先輩の「なんで来ないの…」のシーン、あれはグッときましたね。普段ツンツンしてる人が突然見せる寂しさって、ギャップ萌えが凄い。主人公の「かわいい」っていう心の声、もう完全に共感しました。それにデートが決まったときの主人公の小躍りっぷり、めちゃくちゃ可愛い。先輩の顔が赤くなったのを「暑いんだろうな」ってスルーしてるのも、主人公らしくて微笑ましかったです。次は絶対カフェでの二人が見たい…!