テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「無駄死になんて言わないで 他の誰かになら何て言われてもいい」
「でも兄さんだけはそんなふうに言わないでよ」
他でもない兄さんだけには・・
両肩をずしりと掴まれ、とっさに顔をあげる。
「ごめん・・・」
強ばった、でもどこか酷く優しい声色。
「わかってるよ だけど俺は」
「無一郎に死なないで欲しかったんだ・・・・・・」
「無一郎だけは・・・・・」
どちらともなく腕を広げ、どちらともなく抱き合った。
久し振りに感じた兄さんの体温は涙を加速させた。
無言の時間が霞のように二人を包む。
「兄さん」
返事はない。ハラリハラリと落ちるイチョウが耳に入るだけ。
「母さん、もしかしたら死んじゃうって分かってたのかも」
「、、どういう」
「死ぬって分かってたから無理したんだよ」
「、、ちが、そんなわけ」
「少しでも僕達の役に立てるように最後まで頑張ってくれたんだよ、兄さん」
「母さん、休んで体調良くなるって判断できてたら寝てたと思う」
「、、じゃ、じゃあ父さんは」
「父さんは、、」
「、、今の兄さんなら分かるでしょ?」
兄さんは黙って俺の手を握った。
それを合図に僕達はイチョウの中を駆けた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!