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「無駄死になんて言わないで 他の誰かになら何て言われてもいい」
「でも兄さんだけはそんなふうに言わないでよ」
他でもない兄さんだけには・・
両肩をずしりと掴まれ、とっさに顔をあげる。
「ごめん・・・」
強ばった、でもどこか酷く優しい声色。
「わかってるよ だけど俺は」
「無一郎に死なないで欲しかったんだ・・・・・・」
「無一郎だけは・・・・・」
どちらともなく腕を広げ、どちらともなく抱き合った。
久し振りに感じた兄さんの体温は涙を加速させた。
無言の時間が霞のように二人を包む。
「兄さん」
返事はない。ハラリハラリと落ちるイチョウが耳に入るだけ。
「母さん、もしかしたら死んじゃうって分かってたのかも」
「、、どういう」
「死ぬって分かってたから無理したんだよ」
「、、ちが、そんなわけ」
「少しでも僕達の役に立てるように最後まで頑張ってくれたんだよ、兄さん」
「母さん、休んで体調良くなるって判断できてたら寝てたと思う」
「、、じゃ、じゃあ父さんは」
「父さんは、、」
「、、今の兄さんなら分かるでしょ?」
兄さんは黙って俺の手を握った。
それを合図に僕達はイチョウの中を駆けた。