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「こんなとこで、どうしたの」
生暖かい風が頬を掠める真っ暗な夜。
時間潰し程度にヘリを飛ばして街を巡っていると、見覚えのある男が海辺でぽつりと立っていた
あまりにも真剣に海を見つめているもので、気になって空架の元へと歩き寄ったのだ
「……貴方でしたか」
相変わらず海を見つめていてこちらに目をやらない。月の光が海に反射して空架の顔を明るくうつす。
その姿はまるで今から海に帰るかの様な、どこか遠くへ行ってしまいそうな様子に胸騒ぎがした。
日本人の同僚からある昔話を聞いたことを思い出した。かぐや姫、アレと似たようなものだ。月の使者が迎えにきて、親たちはかぐや姫を守るもそれは無念にも失敗し、彼女は月へと帰ってしまう。
話を聞いた当時は子供の好きな様にしてやればいいのに、なんて腑抜けたことを思っていたが、今なら親の気持ちがわかる気がする。
しかしそんな作り話の様な事が起こるわけがない、と真っ向から否定できる自信は持ち合わせていなかった。彼は一度決めたら自分の意思を曲げない、頑固な男だ。俺たちがどんなに必死に囲っても、彼はいつかうさぎの様にするりとかわし、逃げて行ってしまうかもしれない。
そう考えるなんだか酷く胸騒ぎがして、焦った。
こいつもいつか連れていかれる、俺たちとは離れ離れになる。いても立ってもいられなくなって、思わずぐち逸の腕を強く掴む
「…っ、ぐち逸」
あまりにも強く掴んでしまったのか、びくりと肩を跳ねさせて一瞬顔を歪ませた。
「、ぃっ…、離してくださいっ、急になんなんですか」
「…、あ、あぁ、ごめん、……」
しかし力を緩めるだけで腕を離す事はできず、思わず自分の方に寄せて優しくそっと抱きしめた
「…、っあの、本当になんですか?体調でも悪いんですか?」
「……ぐち逸」
「?、…はい」
「あのさ、…俺おまえになんかあったら話聞くからね」
「……はあ」
肩に顔を埋めれば、薬と消毒液の匂いと、彼の優しい香りが鼻をくすぐる。
「俺、放さないからね」
「?、いや、離してください、暑いです。夜と言っても夏ですよ、まだ」
「……違うってぇ」
ザザー…と海水が砂を襲う音が恐ろしく感じる。
何か彼を懐かせられる様な、確信的な言葉を探すもそれは無念にも見つからない。
何か言いたかったけれど、言葉が上手く出てこなかった。
“こんなお話いかがですか”メーカー様より、
『こんなところで、どうしたの』
という台詞で始まり、
『何か言いたかったけれど、言葉が上手く出なかった』
で終わるでした
お久しぶりです!色々忙しかった事もあり、久しぶりの投稿が短編+メーカーに頼る羽目になってしまって申し訳ありません…🙇♀️でもこのメーカー、本当に有能なので皆様も是非使ってみてください、私もこれからたくさん利用するつもりです(最低)
実は今かなりのスランプに入っていて、こちらの作品はリハビリ程度の小話と思っていただけたら幸いです
📡🧪に冷めた訳ではありませんのでご安心を🖐🏻 これからも自分のペースでゆっくり活動していきますので、今後とも応援よろしくお願いします😽