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#クロスオーバー
유키에
52
「……で?」
静かな声だった。
だが、その場にいた全員が反射で振り返る。
玉座の間。
崩れた魔法陣。
まだ残る神聖魔法の残滓。
その中心で。
一人の少女が震えていた。
――及川の顔を見ても、堕ちなかった魔法少女。
「っ……」
少女は息を荒げる。
怖い。
なのに目が逸らせない。
魔王。
化け物。
理解不能。
それでも。
“まだ”、堕ちてはいない。
「珍しいね」
声。
いつの間にか。
そこにもう一人立っていた。
誰も気配を感じ取れなかった。
「……孤爪」
影山が呟く。
金色の瞳。
猫みたいな目。
ふわふわした髪。
黒いローブの上から、淡い光が揺れている。
精霊 孤爪研磨
魔王補佐
「え、いたの?」
日向が素で聞いた。
「いたけど」
「全然気づかなかった」
「でしょ」
研磨は面倒臭そうに目を細める。
及川が嬉しそうに手を振った。
「研磨〜! 聞いて! この子俺見ても堕ちなかった!」
「見てた」
「え、じゃあもっと早く来てよ!」
「だるい」
「ひどっ」
通常運転だった。
だが。
魔法少女だけは違う。
「っ……」
本能が警鐘を鳴らしていた。
目の前の魔王より。
この男の方が危険だと。
「……その顔」
研磨が少女を見下ろす。
「まだ希望あると思ってる?」
「――!」
びくりと肩が跳ねる。
「仲間が助けてくれる、とか?」
「ち、違……」
「でも誰も来ないよ」
淡々とした声。
感情が薄い。
だからこそ怖い。
「だって君、生き残っちゃったし」
少女の呼吸が止まる。
「仲間だけ封印されて、自分だけ残された」
研磨はしゃがみ込む。
視線を合わせる。
「……辛いね」
優しい声だった。
壊れそうなくらい。
優しく。
柔らかい。
「でも大丈夫」
にこ、と笑う。
「俺達がいるから」
ぞわり。
少女の背筋が震えた。
日向が小声で呟く。
「うわ始まった」
「堕としモードっすね」
五色が引いている。
菅原は苦笑した。
「相変わらずじわじわやるなぁ」
及川は頬杖をつく。
「俺みたいに一発じゃないんだよねぇ」
「及川さんは脳焼くだけじゃん」
「酷くない!?」
研磨は無視した。
少女だけを見る。
「ねぇ」
そっと。
手を伸ばす。
少女が反射で震える。
「怖い?」
「……っ」
「怖いよね」
否定しない。
寄り添う。
理解する。
だから厄介だった。
「生き物ってさ、怖いものから目逸らすじゃん」
金色の瞳が細くなる。
「でも俺は、ちゃんと見るよ」
逃がさないように。
優しく。
ゆっくり。
「君が辛いのも、苦しいのも、全部分かってあげる」
魔法少女の瞳が揺れる。
研磨は笑った。
穏やかに。
静かに。
まるで恋人に囁くみたいに。
「君が死んだらさ」
ぞくり。
「俺も辛すぎて死んじゃう」
空気が止まる。
「……だから」
研磨は少女の手を取った。
冷たい指。
でも逃がさない力。
「君も俺のこと、殺さないでくれるよね?」
少女の呼吸が乱れる。
逃げたい。
怖い。
なのに。
この人を拒絶したら駄目だと、本能が訴える。
壊れそうなほど優しい声で。
逃げ道だけ丁寧に潰してくる。
「……ぅ……」
涙が零れた。
研磨はそれを見て、少しだけ満足そうに目を細める。
「うん。いい子」
「うわぁ」
日向がドン引きした。
「えぐ」
「やっぱ研磨怖ぇ」
五色も耳を伏せる。
菅原はため息をついた。
「魔王軍、メンタル攻撃特化多すぎない?」
「爽やかくんも大概だけどね?」
及川が笑う。
すると研磨が面倒そうに振り返った。
「……及川さん」
「ん?」
「また魔法少女増やしすぎ」
「え〜?」
「ペンダントの中もうパンパンじゃん」
「だって可愛いんだもん!」
「管理する俺の身にもなって」
その時だった。
少女が小さく呟く。
「……なん、で」
研磨が視線を戻した。
「ん?」
「なんで……そんなに優しいの……」
沈黙。
数秒。
それから。
研磨は、ふっと笑った。
「優しくしてるんじゃないよ」
その笑顔は。
どこまでも穏やかで。
なのに。
底なしに重かった。
「逃がしたくないだけ」
孤爪研磨 役職 魔王補佐
魔王補佐の精霊。及川の顔面で堕とせなかった魔法少女を持ち前の観察眼と推察力と話術と変装力で時間をかけてじっくりじわじわ堕としていくのが仕事。因みに魔王補佐はもう1人いる。及川と孤爪のせいで闇堕ちする魔法少女が後を絶たない。重度のヤンデレ。
「君が死んだらさ、俺も辛すぎて死んじゃう。…だから、君も俺の事、殺さないでくれるよね?」
コメント
3件
しょぴぃさん、第5話読ませていただきました……! 研磨の“優しく閉じ込める”感じ、すごく鮮やかでしたね。及川さんの一発堕としと対照的で、「逃がしたくないだけ」って言葉にゾクッとしました。あの口調で「死んじゃう」って言われたら、逃げたくても逃げられなくなる……怖いのに、目の離せない魅力がありました。日向くんたちの反応も絶妙なアクセントで、世界観に引き込まれました!続きが気になります🌷