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走って待ち合わせ場所である駅前についた明空拝(みくば)。
運動なんて当分していなかったので息が切れている。
「はあ…はあ…」
駅員さんに声をかけて駅構内のトイレを使わせてもらうことにした。
トイレの洗面所の鏡でメイクが崩れていないかを確認する。
「まあ…平気か…」
幸いトイレには人がいなかったのでゆっくり確認できた。ほんの少し崩れたアイラインとリップを引き直す。
すると後ろからスーツのおじさんが入ってくるのが鏡越しに確認できた。
おじさんは入って一度トイレから出ていった。そしてもう一度入ってくると
「すいません」
と明空拝に声をかけた。
「はい?」
「ここ男子トイレですよ」
と訝しげな表情で言われた。
「あぁ、男です、僕」
と言うとおじさんはハッっとした表情になり
「あぁ、そっか。今の男の子はメイクする子もいるんだもんね。あぁ、すいませんすいません」
と申し訳なさげに言いながら小便器の方へと言った。
「こちらこそ紛らわしくて申し訳ないです」
と言ってトイレを出た。駅員さんにお礼を行って外に出ると
ちょうど希誦(きしょう)が駅前に歩いてくるところが目に入った。
希誦も明空拝と目が合い「お」という顔をする。明空拝が早歩きで希誦を迎えにいく。
「女子かと思った」
と言う希誦になんて言っていいかわからずペコッっと軽く頭を下げる明空拝。
「中入ってたんですね」
「あ、はい」
「あ、お待たせしていまって」
「あ、いえいえ!自分が勝手に早く来ただけなので」
「…あ、逆か」
思いついたように、でもローテンションで言う。
「逆?」
「いや、最初に「お待たせしました」だと思って」
「あぁ。なるほど」
「じゃ、行きましょうか」
「は、はい」
行く場所を伝えられていない明空拝は希誦についていく。改札を通り電車を待つ。
「あのぉ〜…、どこ行くんですか?」
「あぁ。とりあえず大吉祥寺に行こうかなって」
「大吉祥寺。なるほど」
間繋ぎ会話がすぐに途切れる。
大吉祥寺か…。なにしにいくんだろ…
聞くか聞かまいか迷った。「どこ行くんですか?」「なにしに行くんですか?」
質問攻めはあまり印象が良くない。相手を信用していないようにも取れる。
そんなことを考えているうちに電車が到着した。2人で電車に乗り込む。シートが空いていなかったので
ドアのサイド、シートの端の壁のような部分に希誦が寄りかかり、明空拝が近くに立つ。
「何時くらいまで大丈夫ですか?」
希誦が明空拝に聞く。
「あ、いや、全然。一人暮らしなんで何時でも」
「あ、そっか。北海道出身で今一人暮らしなのか」
「ですです」
「じゃ気兼ねなく」
とどこか少し楽しそうな希誦。大吉祥寺について電車を降りる。
改札を通り、エスカレーターに乗り下に下りる。ワク・デイジーのある通りのほうに出て歩いていく。
希誦について歩いていく明空拝。不安と期待が織り混じる。
それにしても…
希誦の斜め後ろ姿を見ながら
カッコいいな…
と思う。自分の服装を見る。
比べると…大丈夫か?オレの服
ダサくないか?とかそんなことを思う。平日ではあるが、さすがは大吉祥寺。人で賑わっていた。
なので付かず離れずの具合で希誦の後について商店街を歩いていく。
家電量販店などが入っているビルに入り、着いた先。それは
「服屋さん?」
服屋だった。「24/7 magic」という店。ファッションにはあまり詳しくない明空拝でも知っているお店。
ファストファッションと呼ばれるような、低価格帯でおしゃれな服が揃っているアパレルショップ。
メンズからレディース、ユニセックスな服まで揃っている。
カジュアルな服が多く、若い世代に人気が高いお店である。
ちなみに「24/7 magic」という店名は「24/7」というのは英語で「24時間、365日」という意味。
そして「magic」「魔法」。ここの服を着ていれば、いつでも魔法にかかったように
特別な、スペシャルな気分になるという意味が込められている。
「よし」
どこかウキウキしているような希誦。お店に入っていく。戸惑いながらも後とついて行く明空拝。
服を買いにきたのか、な?…でもそれでオレが呼び出される意味ってなんだ?
そう思う明空拝の側で
「んん〜…」
と呻きながら柄シャツを手に取る希誦。
この柄シャツの前を少し留めてパンツにインして、インした部分を少し膨らませて
ハイウエストがいいか?柄シャツだから下は派手すぎないパンツ…ワイドカッコいいからワイドなやつ…
と思いながら服をどんどん手に取っていく。柄シャツ、中に着るプリントが胸の部分に少しあるTシャツ
裾にいくにつれて広がっていく濃いグレーのジーンズを
「はい」
と明空拝に渡す希誦。
「…。…はい?」
目をパチクリさせる明空拝。
「試着してきてください」
「…試着?」
頷く希誦。
「あ、すいません。試着室お借りします」
と希誦が店員さんに一言かける。
「あ、どうぞー」
と許可を得たので、明空拝に対して頷く希誦。
「これを、着たらいいんです、か?」
頷く希誦。明空拝は戸惑いながらも渡された服を持って靴を脱いで試着室に入る。
希誦はその間に違う服を見て回る。
オレ普段試着とかしないタイプなんだけどなぁ〜…なんならここ最近、服すら買ってないし
バイト代で家賃プラス光熱費プラス食費をやりくりする明空拝にとっては
洋服なんて二の次の二の次である。着てきた服を脱いで畳んで置き、希誦に渡された服を着る。
「うわぁ〜。派手ぇ〜…」
着ながら思う。というか口に出ていた。一度鏡で見てみる。
「…」
は、派手というか都会というか…
なんかそんな風に思った。カーテンをシャーっと開く。
「こんな感z」
言いかけたが外に希誦は待っていなかった。
「…ん?」
靴は履かず、靴の上に乗り、背伸びして店内を見る。
希誦は茶髪、今日の服装はおしゃれだが、ハンガーラックなどで見えない。
店内には茶髪の人は多くわからなかった。
「お。着れた?」
と声をかけられる。灯台下暗し。視界右下のハンガーラックの右側から姿を現した。
「あぁ、はい」
「あぁ…」
希誦は遠目から見て
「シャツもTシャツもインしてもらって」
と手直しを明空拝に言う。
「イン」
明空拝は言われた通り柄シャツとTシャツをインする。
「で、ちょっとハイウエストにしてもらって」
「ハイウエスト」
「ここら辺くらいにパンツ上げてもらって」
と自分の腰、へその少し下ら辺のラインを、掌を上に向けた状態の両手で示す。
明空拝は言われた通り、腰、へその少し下ら辺まで上げる。
…このウエストは…ダサいだろ
と思う明空拝。
「…ちょっと失礼しますね」
希誦が明空拝に近づく。明空拝は謎に緊張する。希誦は明空拝がインした柄シャツを少しだけ外からに出す。
するとウエストバンドと呼ばれる腰回りのベルトをする部分に
柄シャツが撓(たわ)んで隠れるようになる。
そしてボタンを下から留めていき、上から第四ボタンまでを開け
中のTシャツの胸のプリントが見えるようにする。希誦は明空拝から遠ざかる。
「…うんうん。いい感じ」
と言う希誦に振り返って試着室内の鏡を見る明空拝。
「おぉ…おしゃれになった」
濃いグレーの、裾にいくにつれて広がっているジーンズに
カラフルで派手な柄シャツ、そして胸部分に少しプリントが施されているTシャツ。
Tシャツのプリントも白黒写真のようなプリントなのでグレーのジーンズと色味が合う。
さらにジーンズとTシャツがグレースケールなので、カラフルで派手な柄シャツがより一層目立つ。
すげぇ
一工夫でおしゃれになるということに感動した明空拝。
「よし。次これ」
と希誦がまたパンツから上までを明空拝に渡す。
「また着ればいいんですか?」
と言う明空拝に頷く希誦。言われた通り服を着替える。カーテンを開く。
「おぉ。うんうん」
と頷く希誦。明空拝も鏡を見て
あぁ。また別角度のおしゃれだ
と思った。
「あ、さっきの服たち」
と言われたのでハンガーにかけた服や折り畳んだジーンズを希誦に渡す。
希誦は元あった位置に戻し、ついでに新しいコーディネートを持ってくる。
それを明空拝に渡して明空拝が着て、先程着ていたコーディネートを元あった位置に返し
また新しいコーディネートを持って明空拝の元へ行きというのを何度も繰り返した。
「よし。帰ろう」
と言う希誦。
「え。帰、えるんですか?」
「帰る」
「おぉ…。はい」
元の服に着替える明空拝。元の服を試着室内の鏡で見る明空拝。
…ダサくは…ないよな?…ま、おしゃれではないけど
と思い試着室を出る明空拝。希誦は明空拝の手からコーディネート一式を受け取って
元あった位置に戻し、そのままお店を出た。明空拝も希誦についてお店を出る。
「ファミレスでいいですか?」
歩きながら唐突に言う希誦。
「はい?」
「夜ご飯。行きたいお店とかあります?あ、それとも帰ります?」
「あぁ!あぁ。全然全然!逆に白風出(しらかで)さんが行きたいお店とかあれば全然お付き合いしますよ」
「行きたいお店。…特にないなぁ〜…」
「じゃあファミレスでどうですか?ゆっくりできますし」
ということで2人でファミレスで夜ご飯を食べることにした。注文を終えて
「いるので、先飲み物行ってきてください」
と言う明空拝に
「あ、じゃあ」
と席を立ち、ドリンクバーへ向かう希誦。スマホをいじりながら
服屋行って何着も試着して、どれもおしゃれで。でも買わずに帰る…太い客だよな…ある意味“太客”
「なんつって」
一人でこっそり笑った。
でもどういうことだろ…。着たい服を?いやでもそれなら自分で着ればいい話だし…。
「あ」
思いついたことがあった。
もしかして彼氏さんの誕生日プレゼントとか?だから実際に男のオレに着せて、客観的にどう見えるか見てた。
なるほど…。ま、オレでよければ付き合いますよっと
1人で結論に辿り着いて、1人で頷いた。
「あ、お待たせしました」
希誦がドリンク片手に戻ってきた。
「あ、いえ」
希誦はドリンクの入ったグラスをテーブルに置きながら座り
もう片手に持っていたビニールに入ったおしぼりを明空拝の前に置いた。
「あ、すいません。ありがとうございます」
「あ、いえいえ」
そうか。おしぼりとか持ってくる手間を考えると、オレが先に行くべきだった?
いや、でもレディーファーストって言葉があるし…。いやでも、それはジェンダー差別とかになるの、か?
と頭の中でぐるぐる考える。希誦がキョトンとする。その顔を見て我に返り
「あ、自分も行ってきます」
と行って席を立った。
「…行ってらっしゃい?」
明空拝が完全にいなくなってから呟く希誦。
明空拝がドリンクバーから戻ってくると、ちょうど料理が届き、一緒に夜ご飯を食べた。
夜も遅いということで明空拝は希誦の家近くまで送って行った。
「すいません送っていただいて」
「あ、いえいえ。楽しかったです」
と笑顔で言う明空拝に
「そ、う、ですか。じゃあ、また付き合ってくれますか?」
と言う希誦。明空拝はプレゼント選び、手伝えるなら手伝いたいと考えていたため
「もちろん!自分でよければ!」
と笑顔で言う。という感じで希誦は自宅へ、明空拝は帰路についた。明空拝は家に帰る道を歩きながら
…あれ?彼氏さんがいる女性の自宅まで着いていくってまずかったか?あれ?ヤバいか?キモいか?
と道行く人が不審に思うほど、その場をぐるぐるした。
そしてその日からちょくちょく大学終わりや休日に2人でアパレルショップを巡った。
基本的にはカジュアルな、価格設定の低いお店に行って、試着祭りを開催していた。
ある日は「Junk Junkie Junkest」というお店で試着祭りを行ったり
ある日は「3 o’clock snacks」というお店で試着祭りを行ったり。
そして普通の、一般人向けのアパレルショップだけでなく
変わったコンセプトのアパレルショップにも行った。
ある日は「OWN WORLD WALKING」というお店で試着祭りを行ったり
ある日は「Rey&Punk」というお店で試着祭りを行ったり。
そしてミドルプライスのお店にも行った。
ある日は「Forever Lucky」というお店で、低価格帯のお店とは違って試着祭りというほどはできず
コーディネート2つくらいを試着してお店を出た。なので1日に3店舗くらいを巡った。
「Piece(Peace)of life」というお店や「Classic owl」というお店や
「SINCE 1337/220」というお店にも行った。
さらにデザインとしてはカジュアル寄りだが、ハイブランドというお店にも足を運んだ。
「2 fash1onable」というお店。初日に訪れた「24/7 magic」にもありそうな柄シャツだが
お値段は「24/7 magic」の約10倍の値段で、明空拝は倒れそうになった。
さすがに値段が値段ということもあり、試着はできなかった。
正確には試着できるのだが、ビビって試着できなかった。
「2 fash1onable」に似たデザインとしてはカジュアル寄りだが、ハイブランドのお店
「X&O」「Life in frames」にも足を運んだが
やはり値段が値段というだけあって見るだけで試着はせずにお店を出た。
そしてある日はTheハイブランドのお店にも足を運んだ。「Bad thing thief」というお店。
そこは桁違い。たかだかTシャツが目が飛び出るほどのお値段。
明空拝は倒れそうになるどころか、呼吸がしづらくなるほどになった。
早々にお店を出た。希誦は夜ご飯を食べるときに、その日行ったお店について説明してくれた。
「Junk Junkie Junkestってお店はアメリカ発祥のカジュアルブランドで
アメリカのジャンクフード文化をファッションに落とし込んだような
ジャンクフードのようの気軽に買えて、気軽に食べられるような低価格帯で
病みつきになるようなブランドになるようにって意味が込められてるんです」
とか
「3 o’clock snacksは3時のおやつのように、どこか特別で、でも気軽に
そしてケーキからクッキー、羊羹、お饅頭といった
バリエーション豊かなブランドにって意味があるお店なんです」
とか
「OWN WORLD WALKINGは元々、低価格帯のカジュアルな服を売っているお店だったんですけど
アウトドアにピッタリの、なおかつおしゃれな服が売ってるってことで
キャンパーや登山家さんに話題になったことをきっかけに、アウトドア用の服を売る方向にシフトしたんです。
だからお店に寝袋とかランタン?とかアウトドアグッズもあったでしょ?」
とか
「Rey&Punkはお店を始めた店主さんがアメリカンプロレスが大好きで
海外でしか買えないアメリカンプロレスのTシャツやグッズを仕入れて販売してて
なおかつオリジナルデザインの服も販売してるお店なんです」
とか
「Forever LuckyはMyPiperの人が始めた店で
でも他のMyPiperの人みたいに片手間ビジネスじゃなくて、MyPipeで有名になる前から始めてたお店で
MyPipeもそのお店の名前の力を借りることなく有名になった努力家の方で
最近は猫のデザインに特化した「Forever Lucky Cats」ってお店もあって」
とか
「Piece(Peace)of lifeってお店は「Piece」と「Peace」をかけてて
このお店の服を着て「人生が平和に進みますように」っていう願いと
このブランドがその人の「人生の一部」になるくらい
いいものを提供しようって想いが込められているお店で」
とか
「Classic owlはオールドスクールというか、名前の通りクラシックな服が多いんです。
基本的にどこかしらにフクロウのデザインが施してあって」
とか
「SINCE 1337/220ってお店は1337年2月20日に開業されたみたいに思うかもですけど
「1337」って英語のスラングで「Elite(エリート)」って意味で
「220」もスラングで「誰にも引けを取らない」って意味で
ここの服を着れば誰にも負けないっていう意味なんです」
とか
「2 fash1onableは「too fashionable」「おしゃれすぎる」って意味があって
数字の「2」と「1」は「このブランドと2つで1つ」ってほど気に入ってほしいって意味があるらしい」
とか
「X&Oはアメリカでは「Hug(ハグ)&Kisses(キス)」って意味で
アメリカではハグもキスも家族とか親戚、恋人とか親友とか大切な人にするもので
だから特別だけど身近なものって意味があるらしい」
とか
「Life in framesは直訳すると「額縁の中の人生」って感じで
なんか囚われた人生って感じがしてイメージ良くないかもしれないし
世間でも一部ではそんな誤解されてますけど、全然違くて「額縁に飾られるほど素晴らしい人生」って意味で
全ての服のデザインが額縁と一緒のデザインってなってて」
とか
「Bad thing thiefは「悪いもの泥棒」って意味で、「悪いもの」の「もの」は人を意味する「者」じゃなくて
物質的な「物」とか概念とか物ではない「もの」を意味してて
ここのブランドの服を着れば嫌なことを忘れられるって意味で」
とか。そしてある日大学にて、明空拝がトイレから講義室へ帰ろうとしたとき
「ちょっ」
っと腕を引っ張られ、汝実(なみ)に拉致られた。
講義室近くの自動販売機付近の小休憩や勉強ができるスペースに連れて行かれる。
「待ってて」
と汝実に言われて
「あ、え、はい」
とちょこんと座って待つ。汝実は自動販売機で飲み物を2本買い
「はい。どっち」
と選択を迫られて
「じゃあ、こっちで」
と選ぶ。
「すいません、財布鞄なんで、後ででいいですか?お金」
と言う明空拝に
「賄賂だから気にしないでください」
と笑顔で言う汝実。
「わ、賄賂?」
汝実は飲み物を一口飲んでテーブルに起き
「聞きたいことがあるんですけど」
と話し始める。
「聞きたいこと。はい」
「あの、しょうちゃんと付き合ってるんですか?」
「しょうちゃん?あぁ、白風出(しらかで)さん。いえ、付き合ってないですよ」
とサラッと言うと汝実がグイッっと少し近づき
「ほんとぉ〜ですか?」
と少し威圧的に言う。
「あ、え。はい。でもそれは白風出さんに直接聞いたほうがいいんじゃ」
「いや、聞いたんですよ」
「ねえねえしょうちゃん」
「ん?」
「聞いてい?」
「答えられることなら」
「真実田(まみた)くんと付き合ってるの?」
「…なんで?」
「いや、たまたま!ほんとたまたまなんだけど、大吉祥寺行ったときに2人で歩いてるの見かけて」
「付き合ってはない」
「ほんとぉ〜にぃ〜?」
「ほんとーにー」
「ほんとのほんとにぃ〜?」
「ほんとのほんとにー」
「ほんとのほんとのh」
「しつこい」
「って言われちゃって」
「あ、そうなんですね」
「恥ずかしいから隠してるのかなーって。だとしたら真実田くんに聞けば教えてくれるかなって」
「なるほど」
「でも、だとしたらなんで大学の後2人で会ってるんです?」
と聞かれて
「んん〜…」
少し困る明空拝。なぜなら明空拝本人も勝手に
彼氏さんへのプレゼント選びを手伝っている
という風に思っているだけで、希誦本人からその目的を聞いたわけではない。
「自分も知らないんですけど、たぶん彼氏さんとかにプレゼントをするために
自分のことをマネキンとして使ってくれてるのかなぁ〜って」
「え!?しょうちゃんそもそも彼氏いたってこと!?」
「え、いや、わかんないですけど」
という明空拝の言葉を聞かず
「ってことはしょうちゃんは彼氏がいる状態で真実田くんに服選びを手伝ってもらってて
いつかその現場をしょうちゃんの彼氏に見つかって
「おい。どーゆーことだよ」「あ、違うの。プレゼント選びを手伝ってもらってて」
「誤解です!本当に」「ふんっ」「殴ったね?父さんにも」「大丈夫?真実田くん。
だから誤解だって」「もういい。別れよ」「え」「彼氏に黙って男に会うって誤解されて当然だろ。
そんなことをへーきでやるやつだとは思わなかった」「そ、そんなぁ〜」…的な展開になるのでは?」
と妄想を暴走させ、口に出す。
「え!?オレ殴られるんですか!?」
驚く明空拝。
「か、可能性はある、かも」
「…自分で役立てるならと思ってたけど、よく考えたら怪しい関係にも思われますよね。
自分の恋人がもし同じことしてたら、たしかに疑っちゃいます」
「やっぱりそうなんですね」
「ま、恋愛経験なんてほぼないですけど…」
「そ、そうなんですね?意外」
「そういう色恋のことなら汐旗(しおはた)さんのほうが詳しいんじゃないですか?」
「えっ?あぁ、いや、まあ…そうね?」
と焦りながら言った後
「全然経験ないけど…」
と呟く汝実。
「でもそうか…彼氏さんいるなら、自分が2人きりで会うのはよくないですよね。
次で最後というか、一旦本人に言ってみます」
「あ、うん。それがいいかもしれないですね」
「…それが聞きたかったことですか?」
「あ、はい!そうなんです」
「その賄賂」
と言ってペットボトルを持つ明空拝。
「その通りで」
「本当に貰っちゃっていいんですか?」
「どうぞ、お持ちください」
「じゃあ、ありがたく」
と言って立ち上がる。
「じゃ、なんかありがとうございました。発見がありました」
「あ、それは、よかった?」
と言って講義室に戻っていく明空拝。1人になった汝実。
飲み物を飲み、大きく息を吐いてテーブルに突っ伏す。
「あぁ〜…男の子と2人で話すの緊張したぁ〜…」