テラーノベル
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彼女、ズィナミ・ヴァーズは大きな声で叫んだのである。
「良ぉしぃっ! レイブぅっ! 褒美だっ! アタシと闘えぇっ!」
「は? 何を言ってるんですか? え? えええっ? 褒美? ってぇ、うわぁっ!」
ドズンっ!
訳が判らないままのレイブの目の前に、客席から飛び降りたズィナミが体の周囲にオーラを滲み出させながら立つが、その額には鋭い角がはっきりと生えているのが見えた、既に八枚以上の身体強化を掛けているらしい、大人気無いな、困った物である。
「ちょっとちょっと学院長! 少し落ち着きましょうよっ、うああぁっ」
「問答無用っ! そらそらそらそら! あははっ! 本気でやらなきゃ死んじゃうよっレイブぅ!」
「ちょちょちょちょ、うわぁ~、何なんですかぁ~?」
レイブの戦いぶりはそれはそれは見事な物であったそうだ。
あるロシアンデスマンは言う。
『いやぁ、あの戦いぶりには驚いたねぇ~、ズィナミの踏み込みなんて普通は反応出来ないんだよ? だけどもさ、レイブは見事に見切っていたからねぇ~、それだけでも感心だよ~、『当たらなければどうと言う事は無い』、それを地で行っていたって事だからねぇ~、いや、もう、物凄い回避能力だったねぇ~』
なるほどね。
同じくこの戦いを間近で見守っていたある緑色の竜は後に問われて答えた。
『ああ、あの戦いの事であるかぁ~、いや戦いではなく闘い、だなぁ~、単純な力と速度、そんなレイブとそれだけじゃあ無い駆け引きや技術を有したズィナミの闘いだったなぁ、アレはぁ…… うんっ、見応えがある闘いだったぞ! 我も随分楽しめた物だぁ、クハハハ、クハハァッ!』
顛末を見守り続けていた大き目の雌獅子は表情を消して話した。
『結果はね、結果はレイブの負けだったのよ…… でもズィナミは身体強化を自分の限界を越えて十四枚掛けて何とかあの子を、レイブをね、組み伏せたのよ? その後、反動で数十日寝込んだのはズィナミの方だったんだからぁ! 対してあの子、レイブは次の日にはいつも通り、ギレスラのおちびちゃんとペトラちゃんと一緒にいつも通り働いていたんですからね! どちらが勝ったか? そりゃズィナミでしょ? でも、でもねぇ、見ていた人達にどう映ったかはアタシが言う訳にはいかないでしょう? ねぇ~え?』
らしい。
因みにこの大人気ないズィナミがごり押した闘いで、あろう事か、追い詰められた彼女は丸腰だったレイブに対して『それ専用』の剣を抜いて躍り掛かっていたのである。
本当になんなんだよ…… 鬼王様よぉ……
「殺(と)ったっ!」
そう小さく叫んだ彼女の右手に掴まれた刃は、レイブの首筋、頚動脈を切り裂くべく迫ったのである。
いや、叫ぶなよ、ってか殺してどうするんだよ? って話しではあるが、兎に角、彼女は殺せる事を嬉しく感じるくらい馬鹿だった様である。
んだがしかし、
ガギッ!
「むっ?」
レイブの頚動脈を切り裂くはずだった刃は鈍い音と共に弾かれてしまい、のみならずその刃筋はぼろぼろと崩壊して崩れ落ちて行ってしまったのである。
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